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文献概要
今月の主題 TDMの臨床応用 話題
遺伝子解析と薬物体内動態
著者: 喜多知子1 奥村勝彦2
所属機関: 1神戸大学医学部附属病院薬剤部・製剤室 2神戸大学医学部附属病院薬剤部
ページ範囲:P.55 - P.59
文献購入ページに移動近年,ヒトに関する遺伝子構造解析が進展した結果,病因となる遺伝子上の変異や感染した病原体の遺伝子を検出して病気を診断する"遺伝子診断"が飛躍的に増加してきた.また,技術面においても,polymerase chain reaction-restrictionfragment length polymorphism (PCR-RFLP)法やsingle strand conformational polymorphism(SSCP)法などさまざまな遺伝子解析(genotyp-ing)法の開発により,簡便に遺伝子変異の有無が検出できるようになった.
一方,古くから抗結核薬イソニアジド,抗てんかん薬S-メフェニトインなど一部の薬物服用患者において,同一服用量であるにもかかわらず,薬物血中濃度ならびに薬効・副作用に個体差が認められた1,2).これは,主に肝代謝能の差異に帰因すると考えられ,代謝酵素が,遺伝,年齢,性別,病態,食事,併用薬,喫煙などによって影響を受け,活性などに違いが生じたためである.なかでも,遺伝的多型性は,酵素欠損によって代謝能が皆無になる場合もあり,また一卵性および二卵性双生児の検討で,遺伝形質は環境因子より強い影響を及ぼしているという報告3)から,重要であると考えられる.現在,遺伝子解析法の進展に伴い,こういった代謝酵素欠損ならびに活性低下または上昇の原因となる遺伝子変異が国内外で解明されつつある.
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