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肝線維化にかかわる活性化肝星細胞に強発現するNa・Ca交換トランスポータ
著者: 中村敏夫1 有井滋樹2 岡田泰伸3
所属機関: 1高知市民病院 2京都大学医学部腫瘍外科学教室 3岡崎国立共同研究機構生理学研究所
ページ範囲:P.90 - P.94
文献購入ページに移動肝線維化の過程には活性化した星細胞(伊東細胞とも呼ばれる)が重要な役割を果たしている.その活性化の分子機序はいまだ十分には明らかにされておらず,これらの解明は肝線維化の早期診断,肝硬変への進展阻止など予防的,治療的見地からも重要である.
肝星細胞は肝実質細胞と類洞内皮細胞の間(Disse腔)に存在する間葉系由来の細胞で,正常状態では細胞内にビタミンAを含む脂肪滴を多数有している(図1).星細胞は肝障害により活性化され筋線維芽細胞様に形質転換して種々のサイトカインや細胞外マトリクッスを産生する(図2)1~3).それらの過程には細胞内Ca2+がシグナルとして関与する反応が多数あるが,その細胞内Ca2+濃度を調節する膜輸送蛋白(チャネルやトランスポータ)に関してはこれまでほとんど知られていない.筆者らは,Na・Ca交換トランスポータ(NCX)が培養星細胞の活性化に伴って強発現すること,さらに星細胞活性化が深く関与する肝硬変(肝線維化)モデルにおいて実際に肝臓の星細胞に遺伝子発現がみられることも明らかにした4).これらの結果と意義につき概説したいと思う.
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