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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査43巻10号

1999年10月発行

雑誌目次

今月の主題 血管壁細胞

巻頭言

新しい疾患概念―血管病

池田 康夫

pp.1073-1074

 内皮細胞・平滑筋細胞・間質細胞から構成されている血管は,以前は血液を身体の隅々に運ぶ単なる導管として理解されていたが,近年の血管生物学研究の進歩は血管を構成するこれらの細胞が実に多岐にわたる機能を有しており,さらに互いが情報を交換し合い,血管という1つの臓器単位として機能している可能性を明らかにしつつある.

 血管内皮細胞は血管内面を被う一層の細胞として,血流の血管内皮下組織への接触を妨げる役割を果たしているが,実はそれ以上に重要な機能を有していることは衆知のことになってきた.内皮細胞は数多くの生理活性物質を産生しているが,それらは循環血液中に放出されて他臓器の機能を調節・修飾することのほか,他の血管壁構成細胞の機能にも重要な影響を及ぼし,循環動態・血圧の調節をはじめ,身体のホメオスターシスの維持に重要な役割を演じていると同時に,炎症性サイトカインをはじめ,血流の作り出すずり応力などの刺激に反応して,多くの病態形成の主役をなしていると言っても過言ではない.

総説

血管新生と病態―臨床医に必要な血管新生のメカニズム

佐藤 靖史

pp.1075-1083

 血管新生は,既存の血管から新しい血管ネットワークが形成される現象と定義されるが,胎児における血管形成のメカニズムが明らかになるに従って,血管新生をもう少し大きな概念として捕らえる必要性が生じている.血管新生は生理的な現象であるが,さまざまな病態と関連することから,血管新生の制御に関して実地臨床においての関心が高まっている.

血管のリモデリング

藤川 日出行 , 島田 和幸

pp.1084-1092

 血管リモデリングは生体の血圧や血流などの循環動態の変化や血管傷害に対する血管の構造的変化である.世界的な冠動脈インターベンション症例数の増加に伴い,再狭窄が治療上の最大の問題となり,IVUSや病理学的検討,および分子生物学的解析により,臨床と基礎両面からの血管リモデリングに対する研究が進み,その病態に対する理解と治療に対する戦略が進みつつある.

各論―測定と病態との関連

VEGF

丸山 征郎

pp.1093-1097

 VEGFは内皮細胞の増殖と遊走を介して,結果的には血管新生にかかわる重要な因子である.特に重要な点は,これが癌の増殖の際の血管新生や,転移にかかわることなどが判明してきたことで,臨床分野でも急速に注目されるようになってきた.現在血中のELISAによるVEGFの測定法が開発され,臨床病態との関連が多角的に検討されつつある.

エンドセリン

菅野 義彦 , 中元 秀友 , 鈴木 洋通

pp.1098-1104

 エンドセリンは生体内でさまざまな作用をしており,特に循環器系疾患で果たす役割は計り知れない.しかし,エンドセリンは主として血管内皮細胞で作られ,その部位で作用を及ぼすために血液濃度を正確に測定することは難しく,またその濃度をもってその働きを決定することもできない.最近エンドセリン受容体拮抗薬や生成酵素阻害薬が臨床にも応用されるようになり,これらの発達によりいっそう,その生体での役割が明確になると期待される.

一酸化窒素

太田 一樹 , 平田 結喜緒

pp.1105-1109

 一酸化窒素(NO)は血管壁において内皮細胞より産生され,血管平滑筋の弛緩作用や,血小板凝集抑制作用を有し,血圧調節因子,抗動脈硬化因子として働いている.高血圧,高脂血症,糖尿病などの病態ではいずれも内皮細胞からのNO産生が低下しており,血管障害の発症や進展の一因になっている.NOは反応性の高いラジカルであり体液(血液,尿など)のNOを直接測定することは難しいが,NOの代謝物であるNOx(NO2+NO3)をGriess法を用いて間接的に測定することができる.しかし食物中にもNOxが含まれており,その測定値の解釈には注意を要する.

CNP

伊藤 裕 , 中尾 一和

pp.1110-1116

 ナトリウム利尿ペプチドファミリーの1つであるCNPは,血管内皮細胞から分泌され,ペプチド性の内皮由来血管弛緩物質として作用し,"血管壁ナトリウム利尿ペプチドシステム"の存在が考えられる.CNPは,増殖性血管病変の主体をなす合成型血管平滑筋細胞に主に作用し,血管平滑筋細胞の遊走,増殖抑制,分化誘導を起こし,動脈硬化症の抑制系としての臨床応用が期待される.

ケモカイン

関谷 剛 , 稲寺 秀邦 , 松島 綱治

pp.1117-1124

 ケモカイン(chemokine)は白血球遊走・活性化作用を有する塩基性のヘパリン結合性蛋白の総称である.ケモカインは炎症,免疫,発生,感染制御などの機能にかかわっている.さまざまな疾患でケモカインが測定された結果,ケモカインがさまざまな臨床病態に関与することが明らかにされており,今後,臨床検査にも応用されていくと考えられる.血管壁にかかわる主なケモカインとしてIL-8,MCAF/MCP-1があり,これらを中心にケモカインと病態,臨床検査法とのかかわりについてまとめた.

von Willebrand因子切断メタロプロテアーゼ

藤村 𠮷博 , 八木 秀男 , 朴 永東

pp.1125-1132

 血漿von Willebrand因子(vWF)の多重体構造を調節していると考えられるvWF特異的メタロプロテアーゼ(推定分子量200~300kDa)が血漿中に存在することが最近示された.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)ではこの酵素の活性低下が示され,またこの酵素に対するIgG型の自己抗体も検出された.一方,TTPとは異なった病態とされている溶血性尿毒症症候群(HUS)では,この酵素活性がほぼ正常で,自己抗体も検出されなかった.さらに,生後間もなくから血小板減少症と血栓性微小血管病変(TMA)を反復し,定期的な少量の血漿輸注でこれら症状の劇的な改善が観察されるUpshaw-Shulman症候群は,ごく最近,本酵素活性の先天的欠損症であることが見いだされるようになり,この酵素活性の測定はさまざまな血栓症の診断と治療に極めて重要であるとの認識がなされつつある.

組織因子

川合 陽子 , 松本 豊 , 酒居 一雄

pp.1133-1138

 組織因子は凝固活性の開始を司る血栓形成の中心的役割を担う細胞膜を貫通する糖蛋白である.組織や細胞に主として存在し,リン脂質層上でその機能を強く発現する.培養血管内皮細胞でも種々のサイトカイン刺激で発現し,内皮細胞の抗血栓性を易血栓性に変貌させると思われる.その測定法は,抗原量をELISAで,膜上の発現をレーザーフローサイトメトリーで,凝固活性を合成基質法で,mRNAの動態をRT-PCR法で測定可能である.

アドレノメデュリン

下沢 達雄 , 藤田 敏郎

pp.1139-1144

 アドレノメデュリンは血管拡張以外にも多くの生理作用を有する全身から分泌されるペプチドである.最近IRMAで簡便に測定することが可能になり高血圧,心不全といった循環系の疾患をはじめとして糖尿病や甲状腺機能亢進症など内分泌系疾患を含む多くの疾患の病態を把握したり,診断に役だつことが期待される.

トロンボモジュリン

脇田 利明 , 林 辰弥 , 湯浅 浩行 , 田中 仁 , 鈴木 宏治

pp.1145-1151

 トロンボモジュリン(TM)は血管内皮細胞上の高親和性トロンビン結合蛋白質で,トロンビンによるプロテインCの活性化補助因子として機能する.その先天性異常症は血栓症をきたすことから,生理的に重要な抗血栓性因子である.血漿中や尿中には可溶性TMが存在し,血漿中の可溶性TMは,播種性血管内凝固症候群(DIC),血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),糖尿病性血管障害,全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病,成人呼吸促迫症候群(ARDS),肺血栓塞栓症等の内皮障害を伴う疾患で増加することから,血管内皮障害分子マーカーとして有用である.可溶性TM濃度は,TMに特異的な抗体を用いた酵素免疫学的測定法で定量することができる.

話題

Hemangioblast

高倉 伸幸

pp.1152-1157

1.はじめに

 血管内皮細胞と造血幹細胞はhemangioblastと呼ばれる共通祖先細胞から分化してくると考えられている.hemo-angioblastというスペリングから,日本語では血液血管前駆細胞と訳されることが多い.現在このhemangioblastに関しては明確な定義はまだない.それはhemangioblastが単一の細胞として同定されていないからである.しかしhemangioblastがどのような祖先細胞から分化し,どのような分化過程を経て血液細胞あるいは血管内皮細胞になるのかという問題に分子生物学的アプローチがなされてきている.

 なぜ最近hemangioblastが注目されるようになってきたのだろうか? hemangioblastから分化する造血幹細胞は,赤血球をはじめリンパ球,好中球,巨核球などに分化する,つまり多分化能を持ち,さらに自己複製能を持つ.この点から骨髄移植や遺伝子治療におけるターゲット細胞になっている.そこで臨床応用に向けて,造血幹細胞を生体外で増幅させることが望まれている.しかし現在のところ造血幹細胞を分化させずに増殖させられる成長因子はまだ見つかっていない.そういう因子が実際に存在するのか否かを証明するようなデータも現在のところ存在しない.その点において,hemangioblastを同定することにより,hemangioblastから分化した直後の造血幹細胞の細胞表面形質を詳細に検討することで,成体の骨髄内に存在する造血幹細胞と比較し,それらが真に自己複製をする幹細胞なのか,それとも既に分化段階に入っている造血前駆細胞なのかを比較検討できる.hemangioblastから分化した直後の造血幹細胞と同様な表現型を示す造血幹細胞が成体の骨髄に存在すれば,それらの細胞表面の受容体を新規のものを含め詳細に検討し,その受容体に対するリガンドを検索することによって,造血幹細胞の自己複製にかかわる因子を同定できる.これらは造血幹細胞の試験管内での増殖という方向性において大きな臨床的意義を持つ.

血管新生抑制物質とがん治療

𠮷田 輝彦

pp.1158-1165

1.血管新生とは

 血管新生はangiogenesisとvasculogenesisに分類される1).前者は既存の血管から新しい分枝が内皮細胞の分裂とsproutingにより派生してくる方式での血管新生を言い,後者はいまだその詳細が明かではない血管の幹細胞,angioblastまたは造血系の細胞と血管内皮細胞との共通の前駆細胞であるhemangioblastから新たに血管内皮細胞が分化して血管が作られる過程を言う.Vasculogenesisは従来胚の初期発生過程においてみられるとされていたが,最近,成体の末梢血などにもangioblastが存在し,虚血時などに動員され,血管新生にかかわるというたいへん興味深い知見が得られている2,3)

 血管新生は生理的状態では個体発生のほか,創傷治癒,卵巣および子宮内膜の性周期,胎盤形成などに限ってみられる.それ以外の成人の一般の血管内皮細胞で分裂しているのは10,000個に1個,0.01%であり,例えば腸管粘膜上皮細胞の14%が分裂期に入っていることを考えると4),血管新生がいかに正常成人組織では低く抑えられているかがわかる.血管新生は病理的にはがんのほか,慢性関節性リュウマチ,尋常性乾癬,加齢性黄斑変性,増殖性糖尿病性網膜症,未熟児網膜症などにおいて病因論的に重要な意味を持っている.従来,これらの病的血管新生過程にvas-culogenesisがどの程度貢献しているのかは明かではない.現在のところ,成体においてはan-giogenesis (以下,狭義の「血管新生」)を中心に考えられている.

血管内皮細胞の酸化LDL受容体

井上 和彦 , 沢村 達也

pp.1166-1170

1.はじめに

 血管はその内腔を覆う血管内皮細胞と血管平滑筋細胞や周細胞といった壁細胞によって構成されている.このうち,血液と諸臓器間のバリアーとしてのみ機能すると考えられてきた血管内皮細胞は,近年の研究成果によりそれだけにはとどまらない様相を呈してきた.血管内皮細胞が種々の刺激に応じてエンドセリンや一酸化窒素(nitricoxide;NO)といった血管作動物質をはじめ,各種細胞増殖因子や白血球接着分子などを発現することが明らかになった今,血管内皮細胞は細胞間,臓器間の間に立って,生体の情報を変換・伝達する機能を担う細胞として考えるのが妥当であろう.したがって,血管内皮細胞の機能的な変化は生体の恒常性に影響を及ぼし,さまざまな病態を引き起こす原因になると考えられる.このうち,動脈硬化で特に重要と考えられているのが酸化LDLである(図1).

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・22

リンパ増殖性疾患・多発性骨髄腫

前田 隆浩 , 栗山 一孝 , 朝長 万左男

pp.1068-1069

 多発性骨髄腫(MM)はBリンパ球の最終分化段階である形質細胞の腫瘍性疾患である.単クローン性の免疫グロブリンあるいは軽鎖(lightchain)を産生するが(M蛋白),まれに産生や分泌をしない症例が存在する.M蛋白の種類によってIgG型,IgA型,IgD型,IgE型,BenseJones型に分類される.病変の広がりによって,多発性,孤立性,髄外性,そして末梢血中に骨髄腫細胞が出現する形質細胞性白血病に分類される.しかし,孤立性でもしだいに多発性に移行することが多い.骨髄腫細胞は一般に偏在した核を有し,好塩基性の胞体と核周明庭が観察され形質細胞の特徴を残しているが,ときに核が偏在せず核網が繊細で核小体を有した芽球様を呈することがある.

 図1にBense Jones型多発性骨髄腫症例の骨髄像を示す.偏在した核と好塩基性の強い胞体の大型骨髄腫細胞を骨髄有核細胞中39%認めた.核網はやや繊細で核周明庭は明らかではないが,よく形質細胞の特徴を残している.一部の細胞に小さな空胞を認めた.

コーヒーブレイク

女性パワー

屋形 稔

pp.1165

 わが国も戦後男女同権になったなどといっているうちに,女性パワーがみるみる社会の中で男性を圧倒するようになってきた.スポーツをみてもかつてのバレーボールの世界制覇とか柔道の‘やわらちゃん’の出現など女性の活躍のほうが目覚ましい.プロゴルフも男はジャンボはじめ世界の舞台に出るとヘナチョコになるのに,女は岡本綾子,小林浩美など檜舞台で互角に戦っており何とも象徴的である.

 週1回ゴルフを心掛けているわが周辺にもこの現象が起こっている.最近おしどり夫婦としてゴルフに励んでいる50歳台の開業医T氏夫妻と同行する日が多くなった.旦那のほうは年期が入ったベテランであるが,数年前から夫の指導で始めた夫人のほうが進境目覚ましいのである.男性と同じ位置からティーショットするのだが女性特有の美しいフォームに加えパワフルで,歩いてみると常にわが輩の10ヤードくらい前にボールが見つかり何とも心中穏やかでない.

若者の死に思う

寺田 秀夫

pp.1187

 ここ数年の間に2人の若者が悪性腫瘍のために亡くなられ,医師としての無力さを痛感するとともに,この若い2人に対するご両親の深い愛情と彼らを囲む友人たちの暖かな友情に囲まれて青春を過ごしてきた若者の死が,治療に当たってきた自分にとって忘れ難い悲しい思い出となって今も心に残っている.

 若者の1人は21歳の大学生.卒業を目前に迎え,就職も内定していた秋,1か月近い東南アジアの一人旅を終えて帰国後,高熱,全身倦怠感と疼痛を訴えて来院した.検査結果では強い貧血と血小板減少,LDHの著増,骨髄穿刺で血球を貧食する多数の組織球と印環細胞を認め,FDPの増加,フィブリノゲン・AT-Ⅲの減少などから,血管内凝固症候を伴った血球貪食症候群と診断し,緊急入院.その後上腹部エコー,腹部CT,内視鏡的逆行性胆膵管造影法(endoscopic retro-grade cholangiopancreatography;ERCP)などより,若年者には極めてまれな膵頭部癌の全身骨髄転移を確定診断された.頻回の赤血球・血小板輸血をはじめ苛酷な治療と絶え難い全身の痛みに耐えながら,入院2か月余で死亡した青年.廻診のたびに必ずベッドの側に立っておられるご両親,そして苦痛をこらえながら自分に笑顔を見せてくれた彼に,ある日「君は幸せだね,こんなにもご両親から愛されて」と話したら,こっくりうなづいてくれた顔が忘れられない.彼の死亡後,命日のたびごとに多くの友人たちがご両親の家に集まり,亡き彼を偲びながらお二人を慰めている様子を,毎年今日までいただくお母様からの便りで拝見し,医者として幸せを感じている自分である.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

Denaturing Gradient Gel Electrophoresis

横崎 恭之 , 村上 功

pp.1171-1177

はじめに

 従来遺伝子の変化は疾患の直接の原因となる"変異"に興味が注がれてきたが,近年ゲノムには比較的高頻度に"多型"が存在することが明らかになってきており,注目を集めている.ポストゲノムプロジェクトを見据えて,ヒトの遺伝子のすべての多型を解析しようとする試みが製薬会社を含めたバイオ企業で既に開始されており,米国では一塩基多型(single nul-cleotide polymorphism;SNP)を集めたデータベースが構築,公開されている.遺伝子多型は,個人のいわゆる体質を規定しているものであり,例えば,アルデヒド脱水素酵素のGlu487Lys置換は日本人の半数近くにみられ,これを知ることにより急性アルコール中毒による死亡を回避することが可能である.一歩進めて臨床的にも,疾患の環境因子に対する感受性や疾患自体の個性,あるいは薬剤の副作用の出現などを事前に予測できる可能性がある.たばこの影響が比較的大きいと思われる健常者の集団,ある種の抗癌剤に感受性の高い癌組織などの予見が理論上期待でき,予防をも含めた効率よい医療の提供につながるため,これらの解析は政策医療上も重要な位置を占めてくるものと思われる.

 ここで紹介する変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(denaturing gradient gel electrophoresis;DGGE)は,変異/多型を簡便に検出できる方法である.基本的には変性剤(ホルムアミドと尿素)の濃度勾配を持ったポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法で,200~700塩基対程度の二本鎖DNA中の不定な位置に存在する点突然変異やSNP,また短い挿入や欠失などの小さな変異のスクリーニングに適している.従来このような変異の検出に汎用されてきた直接塩基配列決定法やPCR-SSCP法に較べても,使途によっては大きなアドバンテージがある方法である.本稿ではPCR-DGGE法の原理の概説,操作の実際について述べ,さらにわれわれの施設における臨床検体を用いた自験例について紹介する.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Application編

Pfeiffer症候群

有賀 裕道 , 氏家 二郎 , 鈴木 仁

pp.1178-1181

はじめに

 Pfeiffer症候群は,尖頭合指趾症V型とも呼ばれ,短く尖った頭蓋と幅広く短い母趾(指)を特徴とする常染色体優性遺伝疾患である.1994年に尖頭合指趾症や軟骨無形成症の成因として線維芽細胞増殖因子受容体遺伝子の異常が指摘されて以来,本症候群においても遺伝子異常の検索がなされるのと同時に,発生に関する分子生物学的研究が進められてきた.

 本稿では,これまでに明らかにされたPfeiffer症候群における遺伝子異常と病態との関連性,および遺伝子診断の方法について概説する.

トピックス

早産の予知と検査法

板倉 敦夫

pp.1182-1184

1.はじめに

 近年,周産期管理の向上により周産期死亡率は激減しているが,早産率はそれほど減少していない.また超低出生体重児の救命率の上昇とともに,後障害を有する早期産児は増えており,早産の予防は依然として産科管理の中で解決されるべき最重要課題である.最近の測定法の進歩により,早産に関与する頸管内分泌物の濃度測定や,経膣超音波断層法による頸管の長さなどによって,早産を予知・診断する方法が考案されている.

 早産ハイリスク妊娠には,さまざまな危険因子が挙げられているが,不妊治療や晩婚化によって,多胎や子宮筋腫といったハイリスク妊娠は,近年増加している.よたTocolysis index は,切迫早産の重症度を点数化したもので,2点以下は外来管理,3点以上は入院加療が必要とされている(表1).最近考案された早産マーカーの早産子知に対する有用性を検討した.

質疑応答 検査機器

血液ガス測定装置とパルスオキシメータの特徴

細坪 貴久美 , 0生

pp.1185-1187

 Q 検査室での血液ガス測定の値が,パルスオキシメーターでの測定値から予測していた数値とかけ離れていると指摘されました.血液ガス測定器とパルオキシメーターそれぞれの機器の特徴,長所,短所,測定値を読むときに注意すべき点,補正の必要性などお教えください.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

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64巻5号(2020年5月発行)

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増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

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今月の特集2 標準採血法アップデート

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今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

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63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
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63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

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今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

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今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

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今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

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今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

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62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

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62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

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今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
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60巻11号(2016年10月発行)

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60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
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60巻9号(2016年9月発行)

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今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

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増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

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今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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