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文献詳細

雑誌文献

臨床検査43巻13号

1999年12月発行

文献概要

今月の表紙 血液・リンパ系疾患の細胞形態シリーズ・24

血球貪食症候群

著者: 前田隆浩1 栗山一孝1 朝長万左男2

所属機関: 1長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設分子医療部門分子治療研究分野 2長崎大学医学部附属原爆後障害医療研究施設

ページ範囲:P.1562 - P.1563

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 血球貧食症候群(hemophagocytic syndrome; HPS)とは発熱,肝脾腫などに加えて血球減少,高フェリチン血症,高トリグリセリド血症などの検査所見を呈し,骨髄をはじめとするリンパ網内系でのマクロファージによる血球貪食を特徴とした症候群である.家族性HPSを代表としたpri-mary HPSと各種感染症,悪性リンパ腫,自己免疫疾患,薬剤などに関連したsecondary HPS(ウイルス感染症に伴うvirus-associated HPS;VAHS,悪性リンパ腫に伴うlymphoma-as-sociated HPS:LAHSなど)に大別されているが前者はまれである.HPSは種々の原因によって刺激・活性化されたリンパ球あるいはリンパ腫細胞から産生されたサイトカインによって,連鎖的に活性化されたマクロファージが貪食作用を呈するとともに,過剰のサイトカインによる全身症状をきたす症候群と理解されている.経過は軽症で予後良好なHPSから急速に進行し致死的な経過をとる症例まで多様性に富んでいる.
 1例目に第2子出産後,持続する発熱と肝障害が出現し当院へ入院となった26歳女性例を示す.入院時,肝脾腫と中等度の汎血球減少,高度の肝機能異常が認められDICを伴っていた.骨髄中には明瞭な血球食食像が観察され(図1,2),HPSと診断された.ステロイド療法やガンマグロブリン大量療法の効果は一過性であったが,シクロスポリンが著効を示し救命に成功した.HPSの治療法は確立していないがステロイド,VP-16,シクロスポリンなどが有効であり,症例によっては多剤併用化学療法が奏功したり造血幹細胞移植を必要とした症例の報告もみられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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