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シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編
Helicobacter pylori
著者: 川口竜二1 川俣治2
所属機関: 1株式会社エスアールエル遺伝子・染色体解析センター研究開発課 2株式会社エスアールエル遺伝子・染色体解析センター肝炎ウイルス課
ページ範囲:P.460 - P.465
文献購入ページに移動Helicobacter pyloriは1983年に発見された微好気性・グラム陰性の螺旋状短桿菌である.しかし薬剤などの外的刺激で,しばしば球状化(coccid form)する1,2).球状化により,ゲノムDNA量も減少し,菌の増殖やウレアーゼ産生に抑制がかかる3).この一見死滅したかにみえる菌が,沈静化したまま生息し,再びチャンスを得て,螺旋化し活性化する可能性もないわけではない.この菌は現在,大腸菌(Escherichiacoli)やHaemophilus influenzaeと共通祖先を有するProteobacteriaに分類される.1997年にH.pyloriの1つの株の全ゲノム配列が明らかにされた.その全塩基配列数は1,667,867bpから成り,1,590個の遺伝子を有すると推定されている4).
H.pyloriの大きな特徴はウレアーゼ遺伝子を発現して,菌自体がその酵素の強い活性を有することにある.そのために胃液の厳しい酸性下でも生育し,胃壁にコロニーをつくる.H.pyloriと胃癌,胃潰瘍,胃炎および十二指腸潰瘍などとの関連も報告されてきた5,6).
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