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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査44巻1号

2000年01月発行

雑誌目次

今月の主題 質量分析―新しい臨床検査への展開

巻頭言

質量分析―新しい臨床検査への展開

片山 善章

pp.7-8

 私は2つのことから質量分析法(装置)のことを具体的に知った.

 その1つは,20年ほど前にNIST(当時はNBS)の標準血清(Serum Refer-ence Materials;SRM909)の各成分の表示値の測定法はID-MS (同位体希釈質量分析法)と記載されることで知ったように思う.そのときのID-MSの印象は,かなり難かしい方法であり,「何処でも,誰でも,何時でも,簡単に測定できる分析技術ではない」ということであった.いわゆる分子量が測定できることから(臨床)分析化学においては基準分析法(difinitive method)に位置づけられており,日本においては数か所のみしか実施できなかったと記憶している.ID-MSのことについては,本文「標準化におけるMS」で述べられている.

総論・LC (GC,MS)-MSの基礎

質量分析装置・その原理と構造

辻 哲 , 片山 善章

pp.9-16

 質量分析装置(MS)の構造と原理について,二重収束磁場型,四重極型および飛行時間型の三種類の装置を取り上げて解説した.それぞれの型にはさまざまなイオン化法との組み合わせが存在するが,二重収束磁場型では代表的なソフトイオン化法の1つである高速粒子衝突イオン化法を例示した.飛行時間型では,現在この型に最適な方法と考えられているマトリックス支援レーザー脱離イオン化法を紹介した.クロマトグラフィーとMSの結合では,インターフェイスの構造とそれに組み合わされるイオン化法について紹介した.ガスクロマトグラフィー/MSでは古い歴史を持つ電子イオン化法を,高速液体クロマトグラフィー/MSでは特にこの目的のために開発された方法の1つであるエレクトロスプレーイオン化法を取り上げた.最後に,四重極型質量分離部を直列に二基つないだ装置を例にしてMS/MSの手法を簡単に紹介した.

臨床化学におけるLC-MS

池川 繁男 , 後藤 順一

pp.17-26

 今日,バイオメディカル領域において質量分析法(MS)の果たす役割は極めて大きなものがあり,卓越した分離能を持つガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー(LC)とMSを組み合わせたハイファネーテッドMSが広く利用されている.とりわけ,LC/MSは,エレクトロスプレーイオン化,大気圧化学イオン化,ブリット―FAB,サーモスプレーイオン化およびパーティクルビームなど各種インターフェースの開発によってその応用範囲が飛躍的に拡大し,難揮発性,水溶性極性化合物の測定に威力を発揮しており,蛋白質,核酸などの高分子のみならず低分子のステロイドホルモン,薬物などの構造解析,定性,定量に幅広く適用されている.本稿では,低分子生理活性物質として胆汁酸サルフェートおよびグルクロニドを取り上げ,本研究室のこれまでの成果を中心にそれらの高感度分析について紹介する.

MSの臨床への応用

松本 勇 , 張 春花

pp.27-35

 血液より多くの生体成分を含み生体情報が豊富な尿のGC/MS分析の障害となる尿素をウレアーゼ処理して除き,アミノ酸,有機酸,糖,糖アルコール,核酸塩基,ヌクレオシドを一斉分析して100以上の疾患を化学診断する検査法と糖,糖アルコールの一斉分析で糖尿病,耐糖能異常,妊娠糖尿病の早期,精密検査する方法を紹介した.その他腎疾患,老化,パーキンソン氏病や痴呆症の早期検診についての研究が進められており,GC/MSの臨床応用が関連の研究者の努力によりますます拡大している.

各論・LC (GC,MS)-MSの応用

質量分析によるトランスサイレチンアミロイドーシスの病態解明

岸川 匡彦 , 清水 章

pp.37-45

 トランスサイレチンは血清蛋白であり,これまでに多種類の遺伝的変異が見いだされており,その多くはアミロイドーシスの原因となる.正常のアミノ酸配列のトランスサイレチンも老人性アミロイドーシスを起こすことが知られている.われわれは質量分析によって,変異トランスサイレチンを検出・同定し,また,さまざまな修飾構造を同定した.さらに,構造の変化とアミロイド形成の関連について取り組み,重要な知見を得つつある.

マススペクトロメトリーによる薬物動態解析―臨床薬理への応用

橋本 豊

pp.47-56

 薬物動態研究におけるマススペクトロメトリーの役割は,これなくしては語れないほど大きな位置を占めている.薬理活性物質のように微量投与で薬効を発現するものの血中動態解析には今や必須の分析手段である.ここではマススペクトロメトリーによる微量分析の確立方法と,これを駆使して血中濃度と薬効との相関をみる,いわゆる臨床薬理の例を幾つか述べる.また,代謝研究におけるMS/MS法の利用の仕方や,新しいイオン化方法のMSを使った薬物と蛋白質との複合体の解析についても述べる.

有機酸の代謝異常

久原 とみ子

pp.57-67

 有機酸代謝異常症はDNAの異常が原因で,代謝を司る酵素の構造変化や酵素産生量の低下,あるいは補酵素の供給に支障をきたし,酵素反応が著しく障害される結果起こる疾患である.患者尿に顕著に増加する有機酸,アミノ酸,糖アルコールなどの障害された反応の基質や基質の副産物を安定同位体希釈法・簡易ウレアーゼ法・キャピラリーGC/MS法により分析し,障害された反応,したがって,酵素を,次いで,その構造遺伝子の異常を予測し,病名を化学診断できる.プロピオン酸血症,メチルマロン酸血症,フェニルケトン尿症,メープルシロップ尿症など早期に診断し早期に治療開始することが心身障害発症予防に必須である.尿の簡易ウレアーゼ法による新生児スクリーニング試験研究も行われている.

話題

ダイオキシン分析

野嶋 一哲

pp.69-73

1.はじめに

 ダイオキシン類の中で2,3,7,8―テトラクロロジベンゾ―ρ―ジオキシン(2,3,7,8―TCDD)は人類が作り出した化学物質の中で最強の毒性を持った化合物で,マウスにおける急性毒性LD 50(μg/kg)は283.71)である.一般的にダイオキシンと呼ばれているものはポリクロロジベンゾ―ρ―ジオキシン(PCDDs)とポリクロロジベンゾフラン(PCDFs)を含めた化合物を総称して用いられ,これらをダイオキシン類と称している.ポリクロロジベンゾ―ρ―ジオキシン(PCDDs)は75種類,ポリクロロジベンゾフラン(PCDFs)は135種類の異性体を有している.これら化合物の構造式を図1に示した.この中で分析対象となっているものは,4塩素体から8塩素体の136異性体に対して行われる.また最近では,ダイオキシン類に加えて共平面構造を有するコプラナーポリクロロビフェニール(Co-PCBs)でオルト位に塩素が配位していないもの,1つあるいは2つ配位している化合物のうち,14種の分析も同時に求められている.

 ダイオキシン類は当初農薬の副産物として生成され問題となった,これに加えごみの焼却に伴い生成され環境汚染が問題視されるに至り,ごみ焼却場を多く抱えるわが国においては急激に関心が高まるとともに,危険回避のための焼却場排ガスならびに焼却灰中のダイオキシン類分析の要求が急増してきている.こうした環境汚染がもととなり,食物連鎖の結末として人体にこれら有害物質が蓄積されることとなる.さる1999年7月12日には"ダイオキシンの排出削減を目指すダイオキシン類対策特別措置法"が衆議院本会議にて可決,成立した.

ESIMSによるHbA1c真値測定

中西 豊文

pp.75-78

1.はじめに

 糖化ヘモグロビン(HbA1c)は糖尿病診断,合併症の発現防止および中期血糖管理の指標物質として重要である.Diabetes Control & Complica-tions Trial (米国,1993年),厚生省糖尿病調査研究(1995年)の中で,HbA1cの具体的なコントロール目標値(7%)が掲げられ,その臨床的意義が高まるにつれて測定値の精度管理の重要性が増している.

 HbA1c測定は,高速液体クロマト法(HPLC)が大半を占めているが,測定法の正確性に問題があり,そのうえ,溶血性貧血,肝障害,腎障害,異常Hb症などを合併している症例では,測定値が血糖値を反映しない.また,ラテックス免疫凝集/凝集阻止法やアフィニティ法など測定原理の異なる測定法が,日常法に取り入れられ,さらに測定法の標準化,精度管理の難しさを増幅している.そこで現在,日本糖尿病学会,臨床化学会が中心になって標準的測定法の確立,HbA1c標品の作成など種々の精度管理が試みられている.国外では,1997年,Koboldら1) IFCCのHbA1c標準化委員会の作業グループは,正常β鎖N末端Valにグルコース1分子が結合した真のHbA1c成分(糖化ヘキサペプチド:Hex)を測定する方法として,Glu-C (グルタミン酸C末端切断)消化/エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESIMS)法を提唱し,この方法がdefinitivemethodとなるだろうと結論付けている.このように,限りなく真値に近い値を算出し得る標準的HbA1c測定法の確立に向けて世界的レベルでの作業が進められている.

標準化におけるMS―標準化しようとするときの利用法

梅本 雅夫

pp.79-82

1.質量分析法

 以下ではまず,標準化に関連づけられた質量分析法の原理を無機元素と有機成分に分けて説明する.

質量分析を用いた遺伝子診断の新しい展開

武田 直仁

pp.83-88

1.はじめに

 病因として遺伝子の変異が確認されている遺伝性疾患は急速に増えつつある.ここ数年のうちにはヒトを含む多くの生物でゲノムDNAの全塩基配列が決定されると予測されている.このゲノム解析から得られる遺伝情報をいかに臨床診断に取り込めるかは,重要な中心課題の1つである.最終的には約十万種類といわれるヒトの遺伝子の全塩基配列から,癌遺伝子や癌抑制遺伝子の同定や遺伝性疾患の原因遺伝子を同定するには,高感度かつ低コストでハイスピード・ハイスループットが可能な新しい手法の確立が要求されている.遺伝子診断の進展の鍵となる新技術としてジーンチップ(マイクロアレイ)と質量分析(MS)またはこれらを統合した手法が有望視されている1~5)

 本稿では遺伝子診断の進展に今後,MSがいかに利用できるかについてできるだけ最新の報告から紹介する.

今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・1

回虫

藤田 紘一郎

pp.4-5

 回虫Ascaris lumbricoidesは人類の有史以来知られ,中国では,黄帝の時代(3,700B.C.),ヨーロッパではヒポクラテスの時代(460B.C.)の記録が残っている.わが国でも昔から回虫のことを"はらのむし"などといい,人と回虫の間には深いかかわりがある.

 回虫はミミズ様の淡紅色の線虫である(図1).lumbricoidesはミミズ様のという意味である.英語では,roundwormと呼ばれている.成虫は雌約30cm,雄約20cmで体幅は4~5mmである.雄の尾端部は腹側に曲がり細長い交接刺を有しているので肉眼でも雌雄の鑑別はできる(図2).頭部には3個の口唇を有し,表面には感覚乳頭を持っている(図3).虫卵には受精卵と不受精卵があり(図4),雌の単独寄生の場合は不受精卵が検出される.

コーヒーブレイク

三枚の絵

屋形 稔

pp.35

 特に絵画や写真に通じているわけでもなく自分で創作するわけでもないが,居間やオフィスに掲げていると落ち着くし,時間の流れや未来の夢も感ずることが多い.

 その1枚は10号あまりの複製画であるが,もとは新潟市出身の洋画家安宅安五郎の「砂丘に立つ子供」というもので,大正9年の第2回帝展で特選を受賞した100号の大作である.原画は当時開校したばかりの旧制新潟高校に寄贈された.坂口安吾が「故郷は語ることなし」と愛した新潟砂丘をバックに,ねんねこにくるんだ赤銅色の赤子を背負った少女が一人垂れこめたにび色の雲の下に立っている.太平洋戦争下に高校時代を送った私達はもちろん,戦後大学移管まで長い間学生は講堂でこの絵に見入っていたものである.

シックハウス症候群

寺田 秀夫

pp.68

 ここ2~3年わが家の近くで,相次いで新築マンションや一戸建て住宅の建築が繰り返され,その騒音,工事関係車両の駐車による交通障害で,多少困惑しているこのごろである.道端の電柱には新築家屋の見学や売り出しの広告が,目に入らない日はない.そして昔と違って新建材を用いるためか,短期間のうちに完成し,新しい家族が何時の間にか住んでいる.こんなに沢山の新築住宅やマンションが本当に快適な住居なのであろうか?,いつも疑問に思っている.そのわけは,ここ1~2年わが国でも漸く室内空気汚染の一つとしての化学物質過敏症とも見なされるシックハウス症候群(sick house syndrome;SHS)がしばしばマスコミの話題となり,自分もそのような患者さんをときに経験しているからである.

 シックハウス症候群は1973~1974年のオイルショックによるエネルギー危機を契機として,北米,英国,北欧を中心として,特定の居住環境に限って,気道症状,皮膚・粘膜症状,中枢神経症状など,多彩な身体症状を訴える者が急増し,シックビルディングシンドローム(sick buildingsyndrome;SBS)とも呼ばれ注目を浴びるに至った.特に1977年以降,省エネルギーが建築設計上①室内気換気の削減と②空調,加湿システムの設置を定着させてきたため,換気の削減は室内気に含まれる汚染物質の増加をもたらし,また空調設備は汚染の拡大をもたらす結果となった.さらに相次いで登場する一般住宅での新建材による化学物質は個人により多彩な化学物質過敏症を引き起こしている.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 Technology編

特異的mRNAの検出法―デイファレンシャルデイスプレイ,SAGE

高野 徹 , 網野 信行

pp.89-94

はじめに―癌の遺伝子診断,治療法への最初のステップとしての癌特異的mRNAの検出

 癌の遺伝子診断,遺伝子治療が提唱されて長い年月が経過したが,少なくとも日常診療においては初期に考えられたような劇的な進歩は見られていない.そろそろこれらの研究に携わっている者たちは客観的に何が障害になっているか検討する時期にきている.従来の癌の病理学的な検討,あるいは化学療法などに欠けていたのは客観的な癌細胞選択性である.病理診断では経験を積んだ偉い先生が癌だと言えば癌になり,化学療法も増殖している細胞なら程度の差はあれ殺してしまう.このような曖昧さをなくし,癌細胞のみを検出するのを目標にしたのが癌の遺伝子診断であり,癌細胞のみを特異的に攻撃することを目標としたのが癌の遺伝子治療のはずであった.このような系を確立するのに最も必要な情報は"なにが癌でなにが癌でないか?"ということである.それがないといかに優秀な技術があろうと癌細胞を選択的に検出したり殺したりすることは不可能である.しかし,実際の癌細胞で癌かどうか客観的な判断基準があるものは少ない.

 癌と正常細胞,あるいは良性腫瘍細胞との間に生物学的に明らかな差があるとすると,当然細胞に発現している機能蛋白に恒常的な差があるはずである.しかし,蛋白質を解析するのは困難でありむしろその前駆体であるmRNAのほうが解析しやすい.このように考えると,[癌細胞に特異的なmRNAを検出する→それをターゲットにした遺伝子診断法,治療法を開発する],という図式が見えてくる.そのように目標を定めると,次に問題となるのは,"いかにして癌細胞に特異的に発現するmRNAを検出するか"ということである.PCRの開発で非常に少量の検体からmRNAの解析をすることが可能となり,特異的mRNAの検出法として,1992年にdifferential display(DD)1)が,1995年にserial analysis of gene expression(SAGE)2)が相次いで開発された.以下にこの2つの方法の概略を解説する.

シリーズ最新医学講座―遺伝子診断 用語解説編

用語解説・1

舩渡 忠男 , 阿部 美有樹

pp.95-101

組換えDNA技術

 組換えDNA技術は,DNAを扱う多くの手法が統合され,遺伝子を単離し,増幅させ,遺伝子産物の機能解析を可能とする遺伝子工学の強力な手段である.すなわち,この技術の基本は,細胞内染色体を切断して特定部位での末端を持つDNA分子にする技法と,得られたDNA断片を分離して塩基配列を決定する技法である(図1).前者においては,細菌由来の制限酵素によるDNA特定部位での切断により,種々の遺伝子の操作,特にDNA切断部位同士の結合が容易となった.後者では,任意のDNAの塩基配列を決定できるようになった(シークエンス法).さらに,組換えDNA技術は特定の塩基配列を核酸ハイブリッド形成反応により,細胞内,染色体,DNAである核酸プローブと相同性を持っDNA断片を迅速に検索しうる手法により展開した.したがって,遺伝子解析におけるこれら一連の技術はあらゆる生物現象の解明に有力な手段であり,今日遺伝子を扱うあらゆる研究室での基本的技術として用いられている.最近では,細胞の染色体に遺伝子の一部を組み込むことが受精卵や植物などで可能となり,トランスジェニックマウス,遺伝子組換え食品,医薬品(ワクチンなど)などに利用され応用範囲が広がっている.

トピックス

オートファジー

大隅 良典

pp.102-104

 従来の分子生物学の研究は,遺伝子の発現制御,蛋白質の生合成の研究に集中してきた.確かにわれわれの体の中では何千何万という種類の蛋白質が巧妙に制御されながら合成されている.しかし合成されただけ分解されていることは忘れられがちである.つまり生体は絶え間ない合成と分解とのバランスの上に成り立っている.最近にわかに蛋白質の分解の研究が注目されるようになった.蛋白質の分解は従来,消極的な意味しか持たないと思われていたが,実は生体の制御機構として積極的で重要な役割を担っていることが明らかにされつつある.不可逆的な発生や分化の制御機構として,分解はむしろ適しているのかも知れない.

 蛋白質はそれぞれに固有の寿命を持っている.合成されると数分で壊されるものから,数十日も機能する分子までさまざまである.蛋白質の寿命が何によって決まっているかについてはいまだ謎である.蛋白質の寿命もまた遺伝子の中に書き込まれているに違いない.N末端の1アミノ酸が蛋白質の寿命を左右するといういわゆるN末端則は魅力的な仮説として登場したが,これで説明される部分はわずかで,依然として全容は明らかではない.

質疑応答 資格・制度

遺伝相談の現状

小野 正恵 , N生

pp.105-106

 Q 遺伝子検査の進歩とともに遺伝相談を希望する患者・家族が増えています.遺伝相談をする専門家の資格・研修体制はどのようになっているのでしょうか.また,遺伝相談の大切なポイント・その必要性についてお教え下さい.

研究

新たに開発されたPregnancy Associated Plasma Protein-A Immunoradiometric Assay Kitの基礎的検討およびその臨床応用

鈴木 良知 , 井坂 恵一 , 高山 雅臣

pp.107-111

 Pregnancy associated plasma protein A(PAPP-A)は母体血漿中より分離抽出された妊娠関連糖蛋白質であるが,近年妊娠初期における21トリソミースクリーニングマーカーとして注目を集めるようになった.このPAPP-Aに対する新しいImmunoradiometric Assay KitがOrtho-Clinical Diagnostic社で開発,市販された.今回の研究でこの測定系の感度は非常に鋭敏で,特異性,再現性に優れていることが明らかとなった.また妊婦血清中PAPP-A濃度は妊娠週数とともに上昇し妊娠39週には831.5±386.2mg/1とピークに達した.今後血清中PAPP-A濃度測定が異常妊娠におけるスクリーニングとして臨床応用されることが期待された.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

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62巻12号(2018年12月発行)

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62巻5号(2018年5月発行)

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今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

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今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

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60巻12号(2016年11月発行)

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60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

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今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

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今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

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今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

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59巻13号(2015年12月発行)

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59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

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59巻9号(2015年9月発行)

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今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

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59巻7号(2015年7月発行)

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59巻6号(2015年6月発行)

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今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

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今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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