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文献詳細

雑誌文献

臨床検査44巻10号

2000年10月発行

文献概要

今月の主題 脂質代謝関連検査項目についての再検討 話題

抗酸化LDL抗体―エピトープによって異なる臨床的意義

著者: 河野弘明1

所属機関: 1協和メデックス株式会社富士研究所

ページ範囲:P.1121 - P.1124

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1.はじめに
 動脈硬化の成因として多くの学説が提唱され,多くの研究がなされてきた.1989年,Steinbergら1)が酸化LDLは動脈硬化の成因として重要な役割を果たしているという仮説を提唱して以来,動脈硬化の研究領域において,酸化LDLが注目されるようになってきた.酸化LDLは血中の単球に対し,遊走因子として働き,単球を内皮細胞下に誘導することが見いだされている2).単球は内皮下において,マクロファージとなり,スカベンジャー受容体を発現し,このスカベンジャー受容体を介して酸化LDLはマクロファージに取り込まれ,泡沫細胞へと変化すると考えられている3).また,酸化LDLは培養血管内皮細胞において,接着分子ICAM-1,VCAM-1の発現を誘導し,単球の内皮細胞への接着を増加させ,平滑筋細胞増殖因子である血小板由来成長因子(PDGF-A,PDGFB)やヘパリン結合性表皮成長因子様成長因子(HB-EGF)の発現を著明に誘導することが示されている4).さらに,マクロファージのアンジオテンシン変換酵素(ACE)の発現を増大させ,血管収縮物質であるアンジオテンシンの生成を亢進させる一方で,ブラジキニンの分解を促進させ,血管拡張物質である一酸化窒素(NO)の生成を抑制することも示されている5)
 このように酸化LDLは動脈硬化発症要因として注目されている一方で,酸化LDLの構造,生成,代謝についてはまだ部分的にしか明らかにされていない.酸化LDLの基となるLDLは分子量500kDaもあるアポ蛋白B-100と種々の脂質との混合粒子で複雑かつ多様性があり,加えて酸化LDLは,LDLを構成する種々の成分の酸化が連鎖的に進行し単一の物質ではないことなど酸化LDLの解析をさまざまな要因が困難にしてきた.このように分析が困難な物質,酸化LDLに対して,免疫学的方法が威力を発揮するとの期待のもと,抗酸化LDL抗体の作製がいろいろな方法で試みられてきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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