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特集 細胞診―21世紀への展望 第4章 判定の実際
8.呼吸器:高分化腺癌の鑑別
著者: 児玉哲郎1 松本武夫2
所属機関: 1国立がんセンター中央病院薬物療法部 2国立がんセンター東病院臨床検査部
ページ範囲:P.1303 - P.1305
文献購入ページに移動CT機器の進歩により肺末梢の小型結節性病変が多く発見されるようになり,切除されたものでは約半数は肺癌で,かつ高分化腺癌が大部分を占めている.1995年Noguchiら1)は,2cm以下の小型腺癌を進展様式から,置換型のA型(限局型細気管支肺胞癌(BAC)),B型(肺胞虚脱巣を有する限局型BAC),C型(線維芽細胞の増殖を示す限局型BAC)と,非置換型のD型(低分化腺癌),E型(腺管腺癌),F型(圧排性あるいは破壊性増殖を示す乳頭腺癌)の6型に分類した.限局型BACとは,孤立性で軽度に肥厚した既存の肺胞壁を裏打ちするように,肺胞上皮を置換しながら増殖する腺癌で,個々の腫瘍細胞はClara細胞,2型肺胞上皮あるいは杯細胞に似るとしている.NoguchiのA型の代表的thin-sliced CT像は,含気に富む淡いすりガラス状の陰影(groundglass attenua-tion)を示す.さらに2cm以下の小型腺癌236切除例を増殖様式別に予後をみたところ,A型,B型の5年生存率は100%,一方C型,D型では予後はしだいに悪くなっており,置換型では少なくともA型→B型→C型へと移行し得るとの考えを示した.その後腺癌の発生・進展の知識が集積され現在のところ,①多くの腺癌の初期像はBACの形をとり,その後腫瘍腺腔の虚脱や線維化が形成され,進行癌(乳頭腺癌など)へ移行する.②腺癌の前癌病変として異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia;AAH)が位置づけられている.
「WHO肺腫瘍の組織分類」(第2版,1981)2)や「日本肺癌学会組織分類」(「肺癌取扱い規約」改訂第5版,1999)3)では,腺癌は形態学的に腺管型,乳頭型,細気管支肺胞型に,さらに分化度を加味した比較的単純な分類が行われ,細胞学的分類もほぼ同様の基準で分類されてきた.1999年「WHO肺腫瘍組織分類」(第3版)4)が新たに改訂されたが,その要点は以下の4点である.①乳頭腺癌の定義がより明確にされた,②BACを細分類し非浸潤癌と定義した,③日常経験する腺癌の多くは亜型が混在し複雑であることから混合型腺癌を一亜型とした,④種々の特殊型が,列記された.すなわち,腺癌を増殖形態,細胞形態とともに進展度を加味して分類しようとするものである.
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