臨床検査44巻11号

2000年10月発行

一口メモ

明細胞腺癌

著者： 山本雅博¹

所属機関： ¹川口市立医療センター臨床検査科

ページ範囲：P.1330 - P.1330

　明細胞は明るく淡明，あるいは微細顆粒状，泡沫状の広い細胞質を有する細胞を意味し，その印象的な特徴から一般病理学でのパターンを表現する言葉として使用されている．明細胞が出現する腫瘍を表に挙げた（表1）．明細胞腫瘍が分類上独立した地位を与えられている例もあるが，特徴的な細胞生物学的態度を発現する例はむしろ少なく，多くは通常型のバリエーションの域を出ない．卵巣，子宮体部，子宮頸部に発生する明細胞癌がいずれもミューラー管由来と考えられて腫瘍型として確立され，そのほか乳腺の富グリコーゲン細胞癌がまれな特殊型として分類されているに過ぎない．また明細胞は上皮性腫瘍に特徴的にみられるのではなく，軟部悪性黒色腫である明細胞腫瘍や脂肪肉腫，軟骨肉腫，平滑筋芽細胞腫など非上皮性腫瘍でも出現する．
　明細胞の明るさの本体は細胞質に過剰出現するグリコーゲンである場合が多いが，腫瘍細胞の炭水化物代謝異常が原因とされる^1）．その他，脂質，粘液のほか，拡張したミトコンドリア，粗面小胞体が関与している．