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文献詳細

雑誌文献

臨床検査44巻11号

2000年10月発行

文献概要

一口メモ

腹膜偽粘液腫

著者: 水口國雄1

所属機関: 1帝京大学医学部附属溝口病院臨床病理科

ページ範囲:P.1411 - P.1411

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 腹腔内にゼラチン様ムチンが貯溜する病態である.わが国ではこれまで500例以上の報告がある.病因論的に不明な点が少なくないが,卵巣や虫垂そのほかに発生するムチン産生性腫瘍由来の粘液物質が腹腔内に増加することによって発生する.卵巣に原因がある場合,前段階として卵巣の間質組織内に粘液が貯溜する卵巣偽粘液腫(pseudomyxoma ovarii)がある.卵巣偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei,peritonealpseudomyxoma)の約半数が腹膜偽粘液腫に進展する.また,虫垂が原疾患であるときは,虫垂粘液瘤(または粘液腺腫や粘液腺癌)から発生する.卵巣と虫垂以外の臓器では前立腺,大腸,胆嚢,臍腸管,膵臓などから発生したという報告がある.病理組織学的には良性例が多いが悪性の症例もある.ちなみに本邦例では,細胞診的または組織学的に悪性とされたものは17%という報告がある.臨床的には,腹水貯溜として発症し,腹腔窄刺やダグラス窩穿刺でゼリー状の内容が採取されれば診断可能である.治療としては手術的にできるだけ粘液物質を除去するが,完全に取り除くことは難しく,再発は必至で粘液貯溜による腸閉塞,栄養障害,低蛋白血症,腹膜機能不全などで死亡する.しかし,遠隔臓器への転移はまれで術後管理がよければ10年以上の生存例もある.組織学的には良性に見える症例も経過は悪性腫瘍に類似しており,卵巣腫瘍では低悪性度腫瘍に分類される.細胞診的に,ライトグリーンまたはオレンジGに淡染する粘液が豊富で,粘液内の細胞成分は通常極めて少ない.上皮細胞が得られても異型度が低いことが多く,悪性と判定できる症例は少ない.上皮細胞は散在性,シート状ないし小集塊状に出現する(図1).他に組織球,線維芽細胞,中皮細胞なども少数出現する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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