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文献詳細

雑誌文献

臨床検査44巻11号

2000年10月発行

文献概要

ミニレビュー

癌遺伝子,癌抑制遺伝子

著者: 元井紀子1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院分院検査部

ページ範囲:P.1465 - P.1465

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 癌遺伝子(oncogene)とは,その遺伝子の活性化により細胞の癌化を導く遺伝子のことである.最初に発見された癌遺伝子は,Hunterらによりニワトリに肉腫を作るラウス肉腫ウイルスから単離されたv-srcである.その後,癌ウイルスや癌細胞から多数の癌遺伝子が単離されたが,正常細胞にも対応する遺伝子が存在し,それらを癌原遺伝子(proto-oncogene)と呼ぶ.癌原遺伝子は,細胞の増殖,分化を制御する重要な機能を担う分子をコードしている.表1のように,細胞増殖因子,増殖因子の受容体,細胞内情報伝達,核内転写調節,細胞周期制御などに関与する遺伝子が含まれている.これらの癌遺伝子は,点突然変異(pointmutation),染色体相互転座(translocation),遺伝子再構成(rearrangement),遺伝子複製数の増幅(geneamplification)などが原因で活性化される.
 癌抑制遺伝子(tumor suppressor gene)とは,遺伝子の不活化により細胞の癌化を惹起する遺伝子であり,網膜芽細胞腫から単離されたRb遺伝子が最初の癌抑制遺伝子である.癌抑制遺伝子の異常は,1つの対立遺伝子の欠失と,他方の遺伝子の突然変異による不活化という二段階の機構が想定されている(Knud-sonのtwo-hit theory).p 53遺伝子は,癌抑制遺伝子の1つであり,肺癌など多くの癌で異常が報告されている.癌抑制遺伝子は,無秩序な細胞増殖を回避し,最終的な分化を促進する機能を持つ.代表的な癌抑制遺伝子を表2に挙げる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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