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文献概要
今月の主題 抗原認識と抗体産生 話題
自己免疫疾患とFas/FasL異常
著者: 小林清一1 浄上智2
所属機関: 1北海道大学医療技術短期大学部衛生技術学科 2北海道大学医学部附属病院第二内科
ページ範囲:P.405 - P.410
文献購入ページに移動自己免疫疾患は,自己抗原に対する制御不能な免疫反応によって全身または特定臓器の障害が誘導される疾患である.その発症には遺伝的素因,環境要因,ウイルス感染,免疫異常などの関与が推測されているが詳細はいまだに不明である.しかし,免疫学的には自己抗原に対する不応答性すなわち自己寛容(セルフトレランス)が不可逆的に破綻した病態と考えられる.一般的に,自己寛容はリンパ球の分化・成熟過程から末梢における免疫応答に至るまで,多層的かつ複数の機序により成立しているが,その主体は自己反応性リンパ球の細胞死(アポトーシス,apoptosis)と不活化(アナジー,anergy)および抑制(サプレッション,suppression)である.このうち細胞死は,中枢レベルでは負の選択,また,末梢レベルでは活性化誘導型細胞死(activation-induced cell death;AICD)と呼ばれるアポトーシス機構によって遂行される.アポトーシスの機能不全は,種々の原因により不活化/抑制機構が解除された活性化自己反応性リンパ球の増加を意味し,その結果,自己免疫反応の持続・遷延化をきたして,遂には不可逆的な自己免疫疾患を発症すると考えられる.したがって,自己免疫疾患におけるアポトーシス機能の解析は,その病態を追求し新たな治療法を確立するうえで非常に重要な課題と言える.
本稿では,アポトーシス誘導系として最も主要なFas/Fasリガンド(FasL)系の分子機構について最新の知見を紹介するとともに,自己免疫疾患におけるFas/FasL異常について筆者らのデータも含めて概説してみたい.
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