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今月の主題 抗原認識と抗体産生 話題
癌における免疫抑制とTCR複合体異常
著者: 椙山秀昭12 齋藤隆2
所属機関: 1山梨医科大学皮膚科学教室 2千葉大学大学院医学研究科遺伝子制御学
ページ範囲:P.411 - P.416
文献購入ページに移動遺伝子異常によって発生した腫瘍細胞(癌細胞)は,発生後のごく問もない段階では好中球やマクロファージなどを主体とした,言わば生体の原始的な防御機構により排除され得るが,この機構を回避して増殖する腫瘍細胞に対しては,T細胞を主軸とした免疫系が機能する.すなわちT細胞は,腫瘍抗原ペプチドの認識,細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化,間接的なマクロファージ或いはNK細胞の活性化など系統的かつ多彩な機能を発揮して腫瘍細胞拒絶における中心的役割を果たすものと考えられている.
しかし,臨床的に診断される癌はこのような免疫防御機構をもさらに回避しつつ増殖,増大し,やがて担癌期の進行に伴ってむしろ逆に宿主の免疫抑制状態を誘導することが知られている.この機序としては,むろん腫瘍細胞からT細胞への直接あるいは間接的な作用の関与があるが,一方で,T細胞の側にその活性化に伴う負の制御機構の関与があることも明かとなりつつある.このT細胞を中心とした免疫系の抑制機構についてはさまざまな研究が行われ報告も多いが,われわれは腫瘍に誘導されて生じた酸化ストレスがT細胞の機能抑制に強く関与するという知見を得るに至り,この点もふまえつつ本稿では個体の担癌状態における免疫抑制とT細胞受容体(TCR)-CD 3複合体異常について解説する.
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