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カスパーゼ
著者: 内山安男1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科情報伝達医学専攻機能形態学講座
ページ範囲:P.541 - P.543
文献購入ページに移動1.アポトーシスとカスパーゼ
細胞は,それ自体が持ち合わせる機構によって積極的に死に行く場合がある.この細胞死は,積極的な細胞死(active cell death)と呼ばれ,環境の変化によって死に至るネクローシスと異なる.active cell deathの主たるものは,形態的に定義されたアポトーシスと呼ばれる死であり,今日ではこの死にかかわる機構とその実行因子について分子生物的な解析が進んだ結果,大きな進歩を遂げている.アポトーシスは胎生期の形態形成に伴う細胞死,成熟した組織の細胞更新に伴う細胞死などの生理的な細胞死に加え,癌化した細胞や神経変性疾患などの病的な細胞死にみられる現象である.アポトーシスの過程に入ると細胞は縮小化して,核クロマチンが凝縮し,ついには細胞が小片に断裂して周辺の食細胞に貪食される.この一連の形態変化を引き起こすのが細胞質に存在するプロテアーゼで,通常は前駆体として存在し,さまざまな細胞死のシグナルが入ると活性化される.アポトーシスを実行するプロテアーゼが最初に見い出されたのは線虫で,その発生過程でみられる細胞死の責任遺伝子として同定されたCED-3である1).哺乳類におけるCED-3のホモログとしてインターロイキン1β変換酵素(ICE)が見い出され2,3),その後さまざまな名称を付けられた遺伝子が報告されるに至った.
細胞は,それ自体が持ち合わせる機構によって積極的に死に行く場合がある.この細胞死は,積極的な細胞死(active cell death)と呼ばれ,環境の変化によって死に至るネクローシスと異なる.active cell deathの主たるものは,形態的に定義されたアポトーシスと呼ばれる死であり,今日ではこの死にかかわる機構とその実行因子について分子生物的な解析が進んだ結果,大きな進歩を遂げている.アポトーシスは胎生期の形態形成に伴う細胞死,成熟した組織の細胞更新に伴う細胞死などの生理的な細胞死に加え,癌化した細胞や神経変性疾患などの病的な細胞死にみられる現象である.アポトーシスの過程に入ると細胞は縮小化して,核クロマチンが凝縮し,ついには細胞が小片に断裂して周辺の食細胞に貪食される.この一連の形態変化を引き起こすのが細胞質に存在するプロテアーゼで,通常は前駆体として存在し,さまざまな細胞死のシグナルが入ると活性化される.アポトーシスを実行するプロテアーゼが最初に見い出されたのは線虫で,その発生過程でみられる細胞死の責任遺伝子として同定されたCED-3である1).哺乳類におけるCED-3のホモログとしてインターロイキン1β変換酵素(ICE)が見い出され2,3),その後さまざまな名称を付けられた遺伝子が報告されるに至った.
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