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文献詳細

雑誌文献

臨床検査45巻5号

2001年05月発行

文献概要

トピックス

類β細胞化

著者: 綿田裕孝1 梶本佳孝1 山﨑義光1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科(A8)情報病態内科学

ページ範囲:P.554 - P.556

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1.はじめに
 膵β細胞は血糖降下ホルモンであるインスリンを産生し分泌するために特異的に分化した細胞である.その分泌は,血糖により厳密に調節されており,その結果,正常人の血糖は一定に保たれる.一方,糖尿病はインスリンの絶対的あるいは相対的な分泌不全に起因する高血糖状態がその病態の本質であり,遷延する高血糖は血管病変を主とする数々の合併症を引き起こす.現在,臨床の場では,その低下したインスリン分泌,および作用を補うことによって,血糖を正常化することを目標とした治療が行われているが,血糖の完全な正常化を達成するのは難しい.特にインスリン分泌の完全に欠如したI型糖尿病の場合,通常,1日4回のインスリン注射と頻回の自己血糖測定を余儀なくされるが,このような多くの負担にもかかわらず血糖の正常化は容易ではない.これは現在の治療が主に,インスリンの補充により行われているためである.
 理想の糖尿病治療とはインスリンの補充ではなく,血糖応答性のインスリン分泌作用を持つ類β細胞の補充である.現在行われている膵β細胞の補充療法は膵,および膵島移植のみであるが,糖尿病の罹患率を考えるとドナーの数が極端に少なく,一般的な治療となるとは考えにくい.そうしたなかで,遺伝子導入を用いて非β細胞を類β細胞化し,膵β細胞の補充に使おうとする試みがなされつつある.本稿では,類β細胞化の現在までの知見と将来の展望を述べたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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