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シリーズ最新医学講座―免疫機能検査・6
原爆被爆者の免疫機能―特に被爆者に発症する疾病との関連性について
著者: 今村展隆1 楠洋一郎2
所属機関: 1広島大学原爆放射能医学研究所臨床第一(血液内科)研究分野 2放射線影響研究所放射線生物学部免疫学研究室
ページ範囲:P.651 - P.659
文献購入ページに移動造血免疫系は放射線に対して最も感受性の高い組織の1つであり,放射線被曝による免疫細胞の障害は生体防御機能の急速な低下をもたらす.免疫系細胞の放射線感受性は最も高いと判明している1).個体が放射線に被曝した場合,末梢血中の白血球やリンパ球の数の変化や染色体異常,および体内で放射化された同位元素量などを測定することにより,被曝線量を推定し,生体防御機能の傷害の程度によって感染防止や造血系の再成を促がす処置が講じられる2).被曝後早期に低下した生体防御機能はその後完全に回復するのか,それとも長期間にわたってなんらかの障害が残存し健康に影響を及ぼしているのであるかが問題である.
広島,長崎の研究機関や医療施設において,永年にわたり原爆被爆者の健康についての長期的な調査が行われている.疫学的調査の結果は,白血病や癌のみならず,脳血管,心臓,消化器,呼吸器系の非悪性疾患による死亡においても被曝放射線量の増加に伴う増多が報告されている3~6).
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