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文献詳細

雑誌文献

臨床検査45巻7号

2001年07月発行

文献概要

トピックス

冬眠の分子指標―HP(冬眠特異的蛋白質)

著者: 近藤宣昭1

所属機関: 1三菱化学生命科学研究所・冬眠制御研究室

ページ範囲:P.773 - P.775

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1.はじめに
 臨床医学の分野では,心臓の外科的治療の目的で40年以上も前から低体温の利用が試みられてきた.体温を低下させることにより細胞の代謝を抑制し,手術に必要な心臓の収縮と血流の停止から体細胞を保護するためである.この低体温により短時間の心停止状態が可能となったが,一方では,低温による細胞傷害が経時的に進行し致命的な結果をもたらすこともわかってきた.これは,哺乳類の細胞では低温に対する耐性が低いためであった.この低い低温耐性を克服するために注目されるようになったのが,哺乳類の冬眠現象である.
 哺乳類の冬眠に見られる最も特徴的な変化は,0℃近くまで低下する体温である.冬眠していない状態では,通常の恒温動物と同様に37℃の体温を維持しており,環境温度を低下させても体温が下がることはない.しかし,冬眠可能な時期には,体温は数℃にまで低下するにもかかわらず各器官は正常な機能を維持し生存できるようになる.この仕組みの理解が低体温に対する耐性の強化に利用できるとの考えから,低体温の臨床応用への期待が冬眠研究の大きな原動力になってきた.1980年代以後には,さらに,冬眠中の動物で細菌や放射線,発癌性化学物質などの有害因子に強い耐性が見られることや,低酸素状態でも脳に傷害が起きにくいことが観察されるとともに,心臓では冬眠により細胞機能が調節されることが見いだされた1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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