文献詳細
文献概要
トピックス
ヒ素中毒
著者: 大野秀樹1 鈴木健二1 木崎節子1 堀田宣之2 廣中博見3
所属機関: 1杏林大学医学部衛生学公衆衛生学 2医療法人富尾会桜が丘病院 3福岡市保健環境研究所
ページ範囲:P.98 - P.101
文献購入ページに移動オゾン層の破壊をはじめ,酸性雨,温暖化,熱帯雨林の減少,砂漠化,海洋汚染など,環境汚染が地球規模で進行している.そのなかでも,10億人以上のヒトが安全な水を飲めないのは深刻な問題である.汚染された水によって年に200万人以上が命を落とす.半数は子どもである.例えば,水銀汚染は世界中に広がっている.筆者らはごく最近,アマゾン川流域(金採掘場下流)に軽症だが水俣病が発生していることを確認した1).水俣病はまだ終っていないのである.しかし,それ以上に重大な問題はヒ素中毒である.金鉱山での水銀の使用という人為的原因ではなく,地下水位低下による地下水のヒ素汚染という水文地質学的問題であるので,スケールがまったく異なる.西ベンガル(インド)では汚染人口が100万人以上,中毒者数が約20万人といわれ,すでに医学だけで対応できる段階を越えている.
ここでは,筆者らの1人が開発した現地調査で簡便にごく短時間にヒ素を測定できる分析キットを紹介し,それを応用して世界的規模のヒ素汚染の実情を述べたい.
掲載誌情報