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今月の主題 HBV・HCV検査法の新しい動向―標準化に向けて 話題
HCV抗原検査
著者: 藤原稔也1 木次克彦1 杉田悟1 矢萩則夫1
所属機関: 1オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス(株)開発室
ページ範囲:P.285 - P.290
文献購入ページに移動C型肝炎ウイルス(HCV)は,構造蛋白であるコア,E1,E2,非構造蛋白であるNS2,3,4,5蛋白を5'側から順にコードする一本鎖Positive RNAをゲノムとするRNAウイルスである.ウイルスの外殻はE1およびE2の2種の糖蛋白によって構成されるエンベロープに被覆され,その内側に1組のゲノムを包む形でヌクレオカプシドが存在する.
NS2以下は,酵素などウイルスの増殖に必要な蛋白をコードするが,HCV粒子中には存在しないことからHCV抗原検査のターゲット蛋白としてはエンベロープかコアのいずれかが想定される.しかしながらエンベロープ蛋白は超可変領域(HVR)に代表されるように免疫システムからのエスケープ機構にかかわることが知られており,アミノ酸配列の変異が著しいという特徴をもつ.さらにEl/E2の複合体を形成していること,エンベロープ領域の有効抗原が主として糖鎖抗原であることなどから,ターゲット蛋白としては取り扱いが困難であると予想される.一方,コア蛋白はアミノ酸配列の変異が少なくgenotype間においてもよく保存され,抗原性も高いことが知られている.したがって,現在開発されているHCVの蛋白検出系にはコア蛋白をターゲットとしたシステムが用いられている.
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