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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻1号

2003年01月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 免疫機能検査・25

X連鎖重症複合免疫不全症(X -SCID)の病因追求

著者: 久間木悟1

所属機関: 1東北大学加齢医学研究所発達病態研究分野

ページ範囲:P.81 - P.88

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はじめに

 重症複合免疫不全症(SCID)という病名は,本症患児が細胞性免疫および液性免疫に“複合”的に機能異常を呈し,総じて幼児期に死亡する“重症”な疾患であることから,約25年前にイギリス人小児科医John Soothillによって名付けられ,以降広く用いられるようになった.本疾患の最初の報告は1950年にスイスの小児科医GlanzmannとRinikerによってなされた1).そのきわだった特徴は,末梢血中のリンパ球がほとんど存在しないことであった.患児の臨床症状は成長障害,口腔咽頭の真菌症,重症の肺炎,持続性の下痢といったものであり,重症感染症のため,患児は2歳の誕生日を待たずして死亡する.1958年にスイスのHitzigらは患児に無ガンマグロブリン血症も存在することを示した2).このような歴史的背景から,SCIDはSwiss型無ガンマグロブリン血症と呼ばれていた.その後,1966年にRosenらが調べたSCIDの3家系では患者がすべて男性であった3).特にそのなかの1家系では,3世代にわたり保因者である女性を介して9人の男性患者が発症していた.このことからSwiss型無ガンマグロブリン血症のなかに典型的なX連鎖の遺伝形式をとる疾患が含まれることが示され,これがX連鎖重症複合免疫不全症(X -SCID)の疾患概念の確立につながった.X -SCIDはSCIDの約半数を占め,発症頻度は約10~15万人に1人といわれている.X -SCIDの責任遺伝子座については,リンケージ解析の結果からXq13.1 -q21.1に存在することが知られていたが,1993年にインターロイキン(IL) -2受容体サブユニットの遺伝子,γc鎖遺伝子がこの遺伝子座に連鎖することが判明した4,5)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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