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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻1号

2003年01月発行

文献概要

コーヒーブレイク

風立ちぬ

著者: 屋形稔1

所属機関: 1新潟大学

ページ範囲:P.22 - P.22

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 「風立ちぬ いざ生きめやも」というフレーズは,詩人ポールバレリイ(仏)の詩集海辺の墓地を堀辰雄が訳したもので,彼はこの風立ちぬを題名とした私小説を1938年に発表した.当時からこの言葉は私の琴線に触れるものがあり,今に至るまで時々唇にのぼる.

 誰が風を見たでせう 私もあなたも見やしないという歌の通り風は元来目に見えるものでないが,常に私達の周囲で確かな存在を示している.この小説は死の近づいた重症の婚約者につき添って山岳地帯の療養所へ行き,そこでの閉ざされた生活のなかの短い一生の間をお互いにどれだけ幸福にさせ合えるかを書いたものである.この女主人公の死を迎えてから1年後に書いた彼女への鎮魂歌を合わせて完成し,むしろ閉塞された環境のなかで幸せを求める道筋を語っている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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