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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査47巻10号

2003年10月発行

雑誌目次

今月の主題 聴覚障害とその診断

巻頭言

聴覚障害と最新の聴覚検査

小川 郁

pp.1069-1071

1.はじめに

 今日の日本は世界でも類をみない高齢化社会を迎えようとしており,加齢による難聴者をはじめとして補聴器装用など何らかの対応を必要とする難聴者の数も急激に増加している.一方,近年の様々な情報手段のIT化によって,社会的に必要とされる情報の入手や発信などのコミュニケーションには視覚や聴覚が不可欠になっている.例えばインターネットの普及により迅速かつ正確に情報を得ようとすれば視覚が必要であり,携帯電話などによる簡便なコミュニケーションには聴覚が不可欠である.今後,このような情報手段はさらに急速に進歩することが予想されるが,視覚や聴覚にハンディキャップを有する高齢者などのIT弱者が,最新のコミュニケーションを等しく享受できる方策を講じる必要があることはいうまでもない.

 このような,高齢化に伴い増加している聴覚障害の多くは感覚器である内耳蝸牛の障害による感音難聴であり,一部の急性感音難聴を除いて根本的な治療法は確立されていない.したがって,このような感音難聴では補聴器による聴覚リハビリテーションが治療の中心となるが,現在用いられている補聴器の多くは聴覚障害者が期待するクオリティには達していない.このような問題点の克服には,デジタル補聴器や埋め込み型補聴器をはじめとして今後の研究,開発を待たなければならないが,現時点で行うべきことは感音難聴の早期診断とその予防法を講ずることである.21世紀は予防医学の時代とも言われるように,聴覚障害に関しても早期診断が重要であることは明らかであり,そのための臨床検査としての聴覚検査の重要性が指摘されている.

 今月の主題である「聴覚障害とその診断」では,様々な聴覚障害に対する最新の聴覚検査について各分野のエキスパートに執筆をお願いした.それぞれの詳細は各稿をお読みいただきたいが,本稿では聴覚障害に対する最新の聴覚検査について概説する.

総論

聴覚情報伝達と聴覚検査

川瀬 哲明

pp.1072-1078

〔SUMMARY〕 聴覚検査を行う場合は,聴覚系の構成と検査の原理を十分理解することが重要である.本稿では,聴覚系を音の情報伝達系という側面から概説した.検査には聴覚系の複数の要素がかかわることが多い.検査結果から,聴覚系全体を総合的に判断し,病変部位やその障害の程度を探っていくことが肝要である.

聴覚心理検査

泰地 秀信

pp.1079-1083

〔SUMMARY〕 聴覚心理検査は,心理音響学手法に基づいた自覚的応答による検査であり,刺激の物理特性と音感覚の性質との関連をみる.近年は聴性脳幹反応・耳音響放射などの他覚的聴力検査の役割が高まっているが,聴覚心理検査は聴覚の特性や聴力障害についての本質をとらえるもので,最も基本となる聴力検査法である.本検査では閾値よりも強い音がどのように聞こえるかを測定しており,補充現象や一過性閾値上昇の検査,またマスクする音があるときの信号音の検出閾値の検査などがある.

他覚的聴力検査

青柳 優

pp.1085-1095

〔SUMMARY〕 他覚的聴力検査は,新生児,乳幼児,精神発達遅滞,機能性難聴,詐聴など純音聴力検査が施行できない症例において聴力レベルを推定するための検査法であり,聴性誘発反応,耳音響放射,アブミ骨筋反射などがあるが,最も一般的な検査法は聴性脳幹反応である.最もよい反応が得られるクリック音を用いた場合,聴性脳幹反応では周波数ごとの聴力は推定できないが,正弦波的振幅変調音による聴性定常反応を用いれば,周波数ごとの聴力レベルを正確に推定することができる.最近,これを用いて両耳でおのおの4周波数を一度に検査できる検査装置が開発された.

乳幼児聴覚検査

廣田 栄子

pp.1096-1103

〔SUMMARY〕 幼児聴力検査は乳幼児を対象として,視覚的強化子を用いて最小反応閾値(MRL)を測定する臨床検査法である.近年,新生児聴覚スクリーニング検査の実施に伴い,聴性脳幹反応聴力検査と併用して精密検査に用いられ実用性が示された.幼児聴力検査は検査手法の選択,幼児の反応行動,幼児への報酬(強化子)など小児固有の特性に配慮し,個別の発達に応じた選択が必要である.その結果,臨床検査としての再現性・有効性が実証されている.

各論

伝音難聴と聴覚検査

飯野 ゆき子

pp.1105-1110

〔SUMMARY〕 伝音難聴は外耳道や中耳の障害によって引き起こされる難聴である.中耳は音エネルギーを空気中から内耳に効率よく伝播させるインピーダンス整合機構を有する.外耳・中耳疾患で鼓膜や耳小骨などに病的変化で,種々の程度の気骨導差が生じる.伝音難聴は手術や治療によってその難聴が改善する可能性が高い.その診断に際しては鼓膜所見,画像所見に加え,純音聴力検査,語音聴力検査,インピーダンスオージオメトリー,聴性脳幹反応などの聴覚検査が非常に重要な役割を担っている.

内耳性難聴と聴覚検査

芳川 洋

pp.1112-1115

〔SUMMARY〕 内耳性難聴の概念および分類を提示し,その診断に必要な検査法について概説した.診断の出発点は標準純音聴力検査であり,この検査を正確に行うことが基本である.また,すべての内耳性難聴例で補充現象が確認されるわけではないので,補充現象陰性例の診断方針と検査の種類についての概略を理解することが重要である.

後迷路性難聴と聴覚検査

井上 泰宏

pp.1117-1123

〔SUMMARY〕 後迷路性難聴を診断するための各種聴覚検査と,その特徴について検討した.施設によって,施行できる検査が限られている場合もあるが,これらのうちの施行可能ないくつかをうまく組み合わせることで,後迷路性疾患を診断することも可能である.Auditory neuropathyのように,聴覚検査所見が診断の決め手になる新しい疾患が問題になっていることから,今後もこれらの検査について十分理解しておく必要がある.

補聴器適合検査

細井 裕司 , 西村 忠己 , 小泉 敏三 , 岡本 雅典 , 山下 哲範

pp.1124-1128

〔SUMMARY〕 補聴器適合検査は,難聴者の聴覚特性を知るための種々の聴覚検査と,聴覚特性に合わせて補聴器をフィッティングするために必要な補聴器の電気音響的特性測定から成っている.本稿では,補聴器のフィッティングの流れのなかの各場面でどのような検査が必要かについて述べ,それぞれの検査について解説する.

人工内耳のための聴覚検査

原田 竜彦

pp.1129-1135

〔SUMMARY〕 人工内耳に関連した聴覚検査について,適応判断のために行う検査と,埋め込み後に人工内耳の条件設定や効果判定のために行うための検査に分けて概説した.前者では適応基準に照らし純音聴力検査と補聴器装用効果の評価が基本であるが,乳幼児ではABRと幼児聴力検査,聴性行動の観察が重要となる.埋め込み後はマッピングが効果を決めるうえで鍵となるが,最近では小児のマッピングに神経反応テレメトリーが有効に使用されている.

耳鳴検査

越智 健太郎

pp.1136-1142

〔SUMMARY〕 耳鳴は原因が明らかでないことが多いが,聴覚伝導路の障害あるいは聴覚伝導路の障害に引き続いて起こると考えられており,近年患者数は増加している.本稿では標準耳鳴検査法19931)に基づき耳鳴検査の手技について解説し,われわれの施設における実際の検査法を適時提示し,検査結果の臨床的な評価について補足する.

耳管機能検査

髙橋 晴雄

pp.1143-1150

〔SUMMARY〕 最初に耳管による中耳換気・調圧の意義とそれを調べるための耳管機能検査の意義を解説し,次いで現在市販されている耳管機能検査機器と,それらで行える各耳管機能検査,すなわち加圧減圧耳管機能検査,音響耳管機能検査,TTAG法の利点と欠点,対象症例,原理,検査手順,結果とその解釈などを紹介した.各検査法に周知し,これらを症例の状況に応じて使い分けることが重要である.

聴覚検査と平衡機能検査の接点

萩原 晃 , 鈴木 衞

pp.1151-1156

〔SUMMARY〕 聴覚障害(難聴)と平衡機能障害(めまい)は,解剖的理由から同時に生じることが多く,疾患の鑑別診断のために両者に対する検査を行い,病態を評価することが重要である.まず十分な問診から始め,病変の部位,性質を推定し,行うべき検査を取捨選択する.ベッドサイドで行える検査のみである程度診断できることもある.また電気生理学検査を組み合わせることで,より詳細な障害の程度をみることも可能である.

話題

言語聴覚士と聴覚検査

佐野 肇 , 岡本 牧人

pp.1157-1160

1.はじめに

 言語聴覚士とは,言語機能および聴覚機能の異常によるコミュニケーション障害に対して,その機能を回復させるためのリハビリテーション,あるいは小児においては機能の発達を促すハビリテーションを担う職種であり,1998年に施行された言語聴覚士法により国家資格として誕生した.もちろんそれ以前からそうした職種は必要とされていたわけで,言語治療士と呼ばれていた専門職がすでに活躍しており,彼らのほとんどが新たに国家試験を受け言語聴覚士に移行した.また,国家資格として認められてからは言語聴覚士を養成する大学の専攻コース,専門学校などが新たに誕生し,そこで教育を受けた人たちも続々と資格を取得しつつある.しかしながら2002年現在で言語聴覚士の数は6,740人であり,言語聴覚療法の対象となる患者数約105万人に対して,その数はまだまだ不足しているといわれている1)

 コミュニケーション障害に対する訓練,指導を行うためには,まず言語および聴覚機能の検査,評価を行う必要があり,聴力検査はその一部に含まれる.しかし言語聴覚士法が施行される以前では,言語治療士は主として小児の主観的聴力検査(遊戯聴力検査,行動観察による聴力検査など)を行うにとどまり,成人に対しての一般的な聴覚機能検査を行うことは少なかったと思われる.ところが,“言語聴覚士”と,その名称の中に“聴覚”の用語が入ったことからもうかがわれるように,今後は言語聴覚士の主要業務の1つとして聴覚機能検査全体が含まれてくる可能性がある.

 本稿では,言語聴覚士が法制上どのような職種で,どのような業務を行うのか,その養成のための教育,国家試験の内容はどんなものなのか,について簡単に紹介し,最後に北里大学医療衛生学部の臨床検査技師コースと言語聴覚士コースとのカリキュラムの違いを述べて,おのおのの特徴を比較することにする.

耳音響放射の理論と実際

和田 仁

pp.1161-1163

1.はじめに

 耳から音が出てくるという興味ある現象が,1978年英国ロンドン大学のKempにより初めて報告され1),その後,耳音響放射(otoacoustic emissions;OAEs)と名付けられた.OAEsの一種に,トーンバースト音やクリック音などの発振時間の短い刺激音によって誘発される誘発耳音響放射(transiently evoked OAEs;TEOAEs)がある.図1は,音圧60dB SPL,周波数1kHzのトーンバースト音を入力したときの,外耳道内圧の時間変化の波形である.刺激音入力後,約11msec,16msecに,刺激音とは異なる波形が現れ,それぞれfast component,slow componentと名付けられている2)

 現在,TEOAEsの各componentが生じる一因として,基底板の形状・材質が,各部位で不連続に変化しているためという考え方が有力視されている3).基底板の不連続性は,コルチ器上の外有毛細胞(outer hair cell;OHC)の配列の不規則性が1つの原因であると考えられている(図2)4).また,基底板は,蝸牛入口から蝸牛孔への長さ方向よりも幅方向の線維が支配的であるため,幅方向の線維の配列状態により,基底板の形状・材質が長さ方向に不連続になっていることも考えられる(図3).しかし,TEOAEsの各componentの発生機序はいまだ明確になっていない.そこで本報告では,基底板の形状・材質が長さ方向に不連続であると仮定し,蝸牛の数理モデルによりTEOAEsの数値シミュレーションを行い5),TEOAEsの各componentの発生機序を理論的に説明してみた6).

新生児聴覚スクリーニングの現状

川城 信子

pp.1164-1165

1.はじめに

 聴力障害は目に見えない障害であるために出生直後には気づかれにくい.成長して言葉が出てこないことで初めて聞こえないのではないかと気づかれる.言葉の発達のためには,早く診断して療育することが重要である.先天難聴は約1,000人に1人の頻度で起こる.先天疾患のなかでも発生率が高い.新生児集中治療室(NICU)では難聴の発生率は5%と高率になる.周産期の疾患,未熟児,仮死,低酸素状態,髄膜炎,アミノグリコシドの使用,利尿剤の使用など種々の因子が関係するからである.これまでは2歳前後で言葉が発達してこないことで難聴に気づかれた.しかし最近は,出生して間もない新生児期に聴覚についてスクリーニングを施行して早期に発見するようになった.これを可能にしたのは,各種の他覚的聴力検査を基礎にした機器の開発がなされたことである.米国では州で法律化され,全出生児を対象にUniversal Newborn Hearing Screening(UNHS:全新生児聴力スクリーニング)が行われている.

 日本では新生児聴覚スクリーニングについては法律的なきまりはないが,各自治体が主体で小児科医,耳鼻科医,療育関係者が中心になって新生児を対象に聴覚スクリーニングを行う試みがなされている.わが国では厚生科学研究として三科班が組織され,報告書が出された1)

最新の人工内耳

氷見 徹夫 , 新谷 朋子

pp.1166-1168

1.はじめに

 人工内耳は聾もしくは高度難聴の治療法として確立された感覚代用臓器であり,すでに世界で約6万5千人,日本では約3千人近い装用者がいる.1978年にコクレア社製多チャンネル人工内耳を臨床応用して以来,現在はオーストラリアのコクレア社ヌクレウス22/24システム,米国アドバンスバイオニック社のクラリオン16,メドエル社(オーストリア)のコンビ40/40+が広く使用されている.コクレア社製が最も広く普及しているが,クラリオン16は世界で約12,000例(わが国約180例)に,コンビ40/40+も約5,600例(わが国ではまだ承認されていない)の装用例がある.現在使用されている機種によってその臨床成績は大差なく,いずれも良好とされている.

 わが国ではヌクレウス22システムが1985年より使用されてきた.2000年にヌクレウス24システムが認可され,クラリオン16が同年に認可され,機種選択の幅が広がった.

聴性脳幹インプラントの現在と将来

熊川 孝三 , 関 要次郎

pp.1170-1172

1.はじめに

 内耳よりさらに中枢の聴神経が障害された高度感音難聴については,人工内耳を埋め込んでも効果が得られない.しかし現在,このような聴神経性難聴の外科的治療法もすでに可能になっている.

 その方法は,聴神経よりも脳の聴覚中枢に近い蝸牛神経核(延髄での聴覚ニューロンの中継核)の表面に電極を置いて固定し,神経核を直接に電気刺激して聴覚を取り戻すというもので,われわれは聴性脳幹インプラント(auditory brainstem implant,以下ABIと略す)と呼んでいる.

 これはアメリカの脳外科医であるHitselbergerによって考案され,1979年に両側の聴神経腫瘍を有する神経線維腫症第2型の患者に第1例目の埋め込み手術が行われた1).その後,人工内耳の改良とともにABIについても多チャンネル化が図られた.現在,Cochlea社製Nuclues 24ABI(24チャンネル)とMED-EL社製Combi 40+ABI(12チャンネル)の2種類がある.わが国ではわれわれが行った2例のみで,まだ保険適用はなされていない.

埋込み型補聴器の現状

小川 郁

pp.1173-1176

1.はじめに

 日本は世界にも類をみない高齢化社会を迎えようとしているが,加齢による難聴を含めて補聴器装用が必要な難聴者の数も急激に増加している.しかし,米国での大規模な調査でも補聴器装用の必要な難聴者の一部しか日常的に補聴器を装用していない実態が明らかとなったように1),現在用いられている補聴器の多くは難聴者の期待するクオリティには達していない.このような補聴器の問題点として,補聴器そのものの補聴効果にかかわる問題と,装用感や美容など補聴効果以外の問題が指摘されている.補聴器の電子工学的特性に関しては,近年の電子工学技術の進歩による補聴器の小型化やデジタル化によって解決されてきた問題も少なくないが,補聴器が音響信号を電気的に増幅して再び空気の振動として出力して鼓膜を振動させるものであり,いかに信号をデジタル処理しても最終的には再度空気の振動として出力することになり,この際に回避できない様々な音響歪みが発生するという限界がある.このような補聴器の音響信号変換様式を根本的に変えて,さらに体内に埋込むことによって装用感や美容上の問題をも解決しようとした補聴器が埋込み型補聴器(implantable hearing aid)または人工中耳(middle ear implant)である. 以下,これら埋込み型補聴器の現状について概説する.

今月の表紙 電気泳動の解析シリーズ・10

フルクトサミン測定に影響を及ぼすIgA型M蛋白

藤田 清貴

pp.1066

糖化蛋白であるフルクトサミンは,糖尿病の診断およびコントロールパラメータとして日常検査に広く普及している.一般にフルクトサミンは,その約60~70%以上はアルブミンであることが知られている.しかし,最近フルクトサミン測定における免疫グロブリンの影響が注目されている.

 図1に60歳,男性のアガロースゲル電気泳動パターンを示す.症例1)は腰痛を主訴として来院し,多発性骨髄腫と診断された患者である.入院時の検査では,血清蛋白分画でβ位にM蛋白を認め,免疫電気泳動法によりIgA-κ型と同定された.しかし,抗アルブミン抗血清を用いた場合,図2に示すごとく,アルブミンの沈降線のほかにα2~β位に異常沈降線が形成された.総蛋白(10.7g/dl),IgA(6,390mg/dl)は著増していた.HbA1(7.4%)およびHbA1c(5.4%)は基準範囲内であったが,非糖尿病にもかかわらず血清フルクトサミンは1,020μmol/l(参考基準値:253~316μmol/l)と異常高値を示した.

コーヒーブレイク

男と杉の木

屋形 稔

pp.1150

 「男の子と杉の木は育たない」という風説が新潟には昔から存在する.有名なのは明治の文豪尾崎紅葉の「煙霞療養」にこの言が紹介されたことである.彼はその中に「してみれば,女の子はよく育つかして,(略)今目前に魚屋,八百屋,手間取,職工に至るまで女の稼ぐのを見る」と誌している.

 私も永い間新潟に暮らしてこの言はほんとうらしいと思うようになった.ただこれは新潟といっても県全般を指しているのでなく,新潟市に限定していっているらしい.県全体を見渡せば有名な田中角栄氏を例にとるまでもなく,医界ではケンカ太郎と異名をとった武見太郎日医会長,太平洋戦争の立役者・山本五十六元帥など男の中の男のような人間も多い.しかしこれらは長岡附近の出で,維新の長岡藩家老・河井継之助など会津藩と共に薩長に抗して最後まで戦っている.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 免疫機能検査・34

自己免疫性溶血性貧血の免疫学的検査

亀崎 豊実 , 梶井 英治

pp.1177-1185

はじめに

 自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia;AIHA)は,赤血球に対する自己抗体の産生とそれに伴う赤血球の破壊(溶血)により生じる貧血の総称である1~3).その診断は赤血球に結合した抗赤血球自己抗体や補体の証明によりなされ,凝集反応に基づいた血清学的手法である直接抗グロブリン試験(direct anti-globulin test;DAT;直接クームス試験)が広く用いられている.AIHAにおける臨床症状はすべて溶血に起因しているが,実際には貧血,黄疸,発熱,胆石,ヘモグロビン尿,肝脾腫などがみられる.検査所見としては,赤血球の崩壊亢進に基づく所見と,赤血球の代償性産生増加に基づく所見の双方を伴っている.前者の検査所見としては,貧血,血清間接ビリルビンの増加,血清ハプトグロビンの減少,糞・尿中ウロビリン体の増加,赤血球寿命の短縮,脾腫,胆石などがあり,一方,後者には網赤血球の増加,骨髄赤芽球系の過形成などが含まれる4)

シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・10

神経分化のシグナル伝達

落合 和 , 田賀 哲也

pp.1187-1193

はじめに

 神経幹細胞の分化には多くの因子が関与していると考えられるが,なかでもサイトカイン群やbHLH型転写因子群が重要な機能を果たしていることがわかってきた.また,異種サイトカインシグナル間の核内でのクロストーク,あるいはサイトカインシグナルとbHLH型転写因子群の核内クロストークによる分化制御機構も明らかになりつつある.生体内に多様な因子が同時に混在することを考慮すると,神経幹細胞分化制御機構にはこのような種々の因子間のシグナルクロストークが重要な役割を果たしていると考えられる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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