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特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 1章 プロテオミクスの基礎
5. 蛋白質相互作用の大規模解析
著者: 夏目徹1 高橋信弘2
所属機関: 1産業技術総合研究所生物情報解析研究センター機能ゲノムグループ・タンパク質ネットワーク解析チーム 2東京農工大学応用生物化学科分子生命化学講座
ページ範囲:P.1241 - P.1248
文献購入ページに移動これまで最も機能解析に貢献した研究手法が,相互作用解析であるということに対する異論は少ないと思われる.その理由を擬人化していうならば蛋白質は「一人では何もできない」ということか.すなわち複雑な生体システムである細胞・組織の中で蛋白質が単独で機能し目的を果たすことは極めて少ないということである.さらに卑近な例をとり演繹するなら,身の回りの「道具」と呼ばれるものに,例えばパソコン,携帯電話から,ボールペンのような単純なものまで,単一の素材,部品からなるものを見つけることが困難であることからも容易に理解できるのである.
遺伝子工学的な手法により,これまで盛んに行われたのは,破壊実験や過剰発現実験である.すなわち,ノックアウト,またその逆を行い,その結果生じる細胞の変化として観察される「表原型」から,遺伝子の機能を予測したわけである.これは喩えてみるなら,ある会社(細胞)の社長をノックアウトしたり,営業部長を10人にしたりするようなものであり,その結果,その会社にどのような変化が起きるのかをみることによって,その部長さんの役割を知ろうというわけである.しかし,総務課長が突然居なくなったとして,彼の役割が本当にわかるだろうか? 課長がいなくても案外課の仕事は滞りなく進んだりはしないか? 人は(遺伝子は)いなくなってみて(ノックアウトして)その偉大さがわかるときもあるが,そうでもないこともままある.
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