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特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 1章 プロテオミクスの基礎
7. 質量分析による蛋白質の配列分析
著者: 高尾敏文1
所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所附属プロテオミクス総合研究センター
ページ範囲:P.1253 - P.1257
文献購入ページに移動はじめに
質量分析による蛋白質の構造解析は,種々のイオン化法の出現,発展により可能になった.質量分析は化合物を効率よく気化し,そしてイオン化することで初めて行える分析法であり,蛋白質のような高分子で揮発しない化合物は測定の範疇にはなかった.フィールド・デソープションイオン化法1)の出現により,1970年頃から分子量1,000程度のペプチドの測定がようやく可能となり,1979年には,Shimonishiら2)により質量分析とエドマン分解法による蛋白質のアミノ酸配列解析法が提案された.この頃より,質量分析による蛋白質の一次構造解析が徐々に盛んになり,1987年には,Biemannら3)は質量分析(タンデム質量分析法:MS/MS)のみにより,バクテリア由来チオレドキシン(107残基)の全一次構造決定を報告した.ポストゲノム時代を迎えた現在,特に,蛋白質の同定における質量分析の役割は極めて重要となった.様々な生物種の配列データベースの充実により,多くの場合,全アミノ酸配列をde novoで決めていく必要はなく,質量分析データをもとに非常に短時間で目的蛋白質をデータベース検索により同定することが可能となっている.その際,質量分析データとしては,①蛋白質を適当な酵素で消化して得られる複数のペプチドの分子量に関連する数値のセット(ペプチド・マス・フィンガープリント),②MS/MSで得られる断片イオンの質量のセット,あるいは,それらをもとに構築した(部分)配列が主に利用されている.特に,②で得られる(部分)配列は蛋白質同定の決め手になるが,MS/MSのみならずエドマン分解やエキソペプチダーゼ消化によっても反応産物の質量分析から簡単に調べることが可能である.ここでは②の配列分析について筆者らのデータをもとに述べる.
質量分析による蛋白質の構造解析は,種々のイオン化法の出現,発展により可能になった.質量分析は化合物を効率よく気化し,そしてイオン化することで初めて行える分析法であり,蛋白質のような高分子で揮発しない化合物は測定の範疇にはなかった.フィールド・デソープションイオン化法1)の出現により,1970年頃から分子量1,000程度のペプチドの測定がようやく可能となり,1979年には,Shimonishiら2)により質量分析とエドマン分解法による蛋白質のアミノ酸配列解析法が提案された.この頃より,質量分析による蛋白質の一次構造解析が徐々に盛んになり,1987年には,Biemannら3)は質量分析(タンデム質量分析法:MS/MS)のみにより,バクテリア由来チオレドキシン(107残基)の全一次構造決定を報告した.ポストゲノム時代を迎えた現在,特に,蛋白質の同定における質量分析の役割は極めて重要となった.様々な生物種の配列データベースの充実により,多くの場合,全アミノ酸配列をde novoで決めていく必要はなく,質量分析データをもとに非常に短時間で目的蛋白質をデータベース検索により同定することが可能となっている.その際,質量分析データとしては,①蛋白質を適当な酵素で消化して得られる複数のペプチドの分子量に関連する数値のセット(ペプチド・マス・フィンガープリント),②MS/MSで得られる断片イオンの質量のセット,あるいは,それらをもとに構築した(部分)配列が主に利用されている.特に,②で得られる(部分)配列は蛋白質同定の決め手になるが,MS/MSのみならずエドマン分解やエキソペプチダーゼ消化によっても反応産物の質量分析から簡単に調べることが可能である.ここでは②の配列分析について筆者らのデータをもとに述べる.
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