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特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 1章 プロテオミクスの基礎
8. 疾患モディフィコミクス
著者: 谷口寿章12
所属機関: 1徳島大学分子酵素学研究センター酵素分子生理学部門 2理化学研究所播磨研究所メンブレンダイナミクス研究グループ
ページ範囲:P.1259 - P.1266
文献購入ページに移動「疾患モディフィコミクス」というタイトルは編者からいただいたものであるが,一般的に使われている用語ではない.筆者自身もこのような呼び方を普通はしないが,最近の「オミクス」の流行を示すのに良い例と思われるので,そのまま採用させていただいた.本特集のタイトルにも「プロテオミクス」が登場するが,プロテオミクスは現在の「オミクス」の流行のもとになった言葉であり,現実の学問分野として,その名前とともに研究領域そのものもすでに認知されている存在といってよいだろう.繰り返すまでもなく,蛋白質(プロテイン)に,遺伝子の集合を現すゲノムのオームを付け,細胞に作られているすべての蛋白質をプロテオームと呼ぶことが提唱されたのは1995年である.その後数年して,ゲノム,プロテオームと並んでメッセンジャーRNA(転写産物=トランスクリプト)の集合がトランスクリプトームと呼ばれるようになった頃から,「オーム学」=「オミクス」の流行が始まった1).ゲノミクス,トランスクリプトミクス,プロテオミクスの3大「オミクス」と並んで,糖やアミノ酸など低分子の代謝物の集合をメタボローム,その解析をする学問分野をメタボロミクスと呼ぶことは,すでに認知されているといってよい.現在は,細胞(セル)の集合をセロームと呼んだり,蛋白質間相互作用の集合をインタラクトームと呼んだり,様々なオームと,それぞれに対応するオミクスが輩出している.「オミクス」とは,それぞれの「オーム」の大規模解析,網羅的解析による研究であると考えてよいだろう.ここでいう「モディフィコミクス」とは,修飾(モディフィケーション)の網羅的解析である.修飾とは蛋白質の翻訳後修飾,疾患モディフィコミクスとは,翻訳後修飾の大規模解析を通じた「疾患」研究と考えればよいだろう.
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