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特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 3章 動き出しているプロテオミクス研究
1. 肝細胞癌の病態プロテオミクス
著者: 藏滿保宏1 中村和行1
所属機関: 1山口大学医学部生化学分子感知医科学
ページ範囲:P.1367 - P.1372
文献購入ページに移動ヒトゲノム計画が完了し,人体を構成するすべての蛋白質の設計図である遺伝子が明らかになった.今後は,設計図であるすべての遺伝子からつくられる蛋白質群(プロテオーム)が「いつ,どこで,どうやって,どれくらい」機能するかを明らかにする必要がある.プロテオミクスとは網羅的に蛋白質を分離同定して疾患,環境,薬物などに対し特異的に変動する蛋白質を特定し,それらの機能を解析,データベース化して医療に応用しようとするものである.これまでプロテオミクス的なアプローチで肝細胞癌(HCC)の組織や細胞内に存在する特異的な蛋白質を同定した報告がいくつかあるが,いずれもB型肝炎ウイルス(HBV)単独か,いくつかの種類のウイルスによって発癌した例である1~3).
わが国には約200万人のC型肝炎ウイルス(HCV)キャリアが存在すると推定されており,年間のHCCによる死亡者数は3万2千人を超している.HCCによる死亡者の約8割がHCV感染に由来していると考えられ,わが国でHCC対策を考える際にはHCV感染との関係が重要となる4~8).
われわれは,HCV感染者からのHCC組織と非癌部組織から蛋白質を抽出してプロテオーム解析を行い,非癌部と比較して癌部にその発現が増強,あるいは減弱する蛋白質を同定してデータベースを構築し,αフェトプロテインやPIVKA IIのような早期発見9)ならびに治療のターゲットとなりうる因子を明らかにすることを目的とした.
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