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特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 3章 動き出しているプロテオミクス研究
7. Biacoreを用いた特異的結合蛋白の解析
著者: 松崎英樹1 浦野健2 谷口寿章13
所属機関: 1理化学研究所播磨研究所メンブレンダイナミクス研究グループ 2名古屋大学大学院医学系研究科神経疾患・腫瘍分子医学研究センター機能分子制御学分野 3徳島大学分子酵素研究センター酵素分子生理学部門
ページ範囲:P.1421 - P.1427
文献購入ページに移動ヒトを含め様々な生物種の全ゲノム配列が解読され,ポストゲノムシークエンス時代に入った今日,新たな研究課題の1つとして蛋白質間の相互作用解析が挙げられる1,2).蛋白質は個別に機能を果たすだけでなく,細胞中では様々な他の蛋白質と相互作用することで複雑なネットワークを形成している.またゲノム解読の結果,ある生物種においては約半数の遺伝子は機能未知蛋白質をコードしており,これらの機能を相互作用より明らかにしようとすることも重要である.
相互作用解析の方法として,まず思い浮かぶのは酵母ツーハイブリッド法があるが,複合体あるいはリン酸化などの蛋白質の翻訳後修飾が伴う相互作用の検出には困難な点がある3,4).ほかには抗体を使用しての免疫沈降法やアフィニティビーズを利用したプルダウン法などが挙げられるが,いずれの方法も結合を指標としての解析方法といえる5).しかしながら生体分子間の相互作用を解析するためには,実は速度論的な解析が極めて重要である.実際の生体内での分子間相互作用は,試験管の中で結果としての結合をみるのとは異なり,時・空間的にも一時的な相互作用である場合がほとんどである.結合して平衡状態に達したものだけをみていたのでは,結果としての結合をみることができるだけであり,どのように結合・解離をするのか,そのカイネティクスを追うことはできない.解離定数から結合が強いという結果を得たとして,それだけではそれが速い結合に由来するものか,または遅い解離に由来するものかを判断することはできない.機能未知蛋白質を含め,個々の蛋白質の機能を解明するうえで,速度論的解釈を踏まえた解析が生物学的な意味での相互作用の理解の助けになるものと考えられる.
本稿では,表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance;SPR)を利用したバイオセンサーの1つであるBiacoreを用いた生体分子間の相互作用の速度論的解析例を示すとともに6),さらに質量分析と組み合わせた結合蛋白質の同定手法について紹介する7,8).
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