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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻11号

2003年10月発行

文献概要

特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査 4章 プロテオミクスの展望―この先どこへ行きつくのか

2. プロテオームファクトリー構想

著者: 平野久12

所属機関: 1横浜市立大学木原生物学研究所 2横浜市立大学大学院総合理学研究科

ページ範囲:P.1443 - P.1446

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大規模なプロテオーム解析

 ゲノム解析の進展により微生物,高等動植物,ヒトなど多種類の生物でゲノムシークエンス情報の全貌が明らかになった.そして,ゲノムシークエンスから,例えば,酵母では6千,線虫では2万,シロイヌナズナで2万5千,イネで3万,ヒトでは3万ほどの遺伝子がゲノム中に存在することが判明した.しかし,既存のデータベースを検索すると,どの生物でもほとんど共通してこれらの遺伝子がコードする蛋白質のうち50%程度はその機能が明らかにされていないことがわかる.そのため,これからは蛋白質自体を分析して蛋白質と遺伝子を対応させ,ゲノム情報を利用しながらすべての蛋白質の機能を解明する研究,すなわちプロテオーム解析を進める必要があると考えられるようになった.特に,疾患関連蛋白質を検出し,その機能を解明する疾患プロテオーム解析の重要性がクローズアップされるようになった.

 疾患プロテオーム解析では,まず二次元電気泳動などで疾患に関連する蛋白質が検出される.そして,検出された蛋白質はペプチドに断片化され,質量分析装置を用いてペプチドの構成パターン(ペプチドマスフィンガープリント)が調べられる.あるいは,質量分析装置を用いてアミノ酸配列が分析される.ついで,ペプチドマスフィンガープリントやアミノ酸配列に基づいて,検出された蛋白質とデータベース中の蛋白質との対応関係が調べられる.この段階で,すでに機能が明らかにされている蛋白質であるかどうかが明らかになる.しかし,前述のように全体の半分位の蛋白質は,これまで機能の解明が行われていないので,データベース検索を行っても機能を推定することができない.こうした蛋白質については,機能を明らかにするため,蛋白質の動態,翻訳後修飾,立体構造などの分析が行われる.また,蛋白質間相互作用を解析し,機能ネットワークの解明を目指す研究が行われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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