文献詳細
文献概要
今月の主題 イムノアッセイ 話題
マイクロアレイ
著者: 長岡智紀12 米川裕之3 佐藤卓朋1
所属機関: 1オリンパス株式会社ゲノム医療事業推進室 2浜松医科大学医学部臨床検査医学講座 3 4
ページ範囲:P.1681 - P.1686
文献購入ページに移動ゲノムプロジェクトによって約30億塩基対のヒト遺伝子の配列が明らかになり,次に,その情報を利用した大規模なSNP(single nucleotide polymorphism)解析が開始されている.こうした大規模スクリーニングの結果,疾患に関連した遺伝子の変異や多型,さらには,遺伝子発現ネットワークの全貌が明らかにされようとしている.将来は,こうした遺伝子情報を利用して,分子レベルでの各個人の体質や病状に合わせた医療,すなわち,テーラーメイド医療が展開されるであろう.こうしたテーラーメイド医療を実現するためには,臨床検査の現場で使用可能な,迅速性,再現性,簡便性に優れた遺伝子解析ツールが必須となる.
マイクロアレイ技術は最近注目を集めている遺伝子解析ツールの1つであり,シリコン基板やスライドガラスの上に数千から,時には1万個以上の遺伝子を合成,もしくはスポットし,一度に数多くの遺伝子の発現量や変異を解析することを可能にした革新的な技術である.マイクロアレイの登場によって,従来の測定技術では“点”でしか得ることができなかった複数の遺伝子変化の関係を“多面的に”解析することが可能になった.このマイクロアレイ技術の元をたどれば,1991年のAffymetrix社(当時はその前身であるAffymax社)の発表にその端を発している1).Affymetrix社は半導体製造装置と光化学反応を組み合わせてシリコン基板上の微小領域にアミノ酸を重合させ,多種類のペプチドを高密度に合成する技術を完成させた.さらにその後でシリコン基板上に核酸を合成する技術を追加し,現在のマイクロアレイ技術の基礎を作り上げた.したがって,現在のマイクロアレイ技術の先祖はペプチドチップであったといえる.
今日のマイクロアレイ技術は,遺伝子の発現解析のみならず,遺伝子の点突然変異やSNP解析,イムノアッセイにも用いられている.ここでは,将来的な臨床応用をめざして開発されたPAMマイクロアレイシステムを中心に取り上げ,マイクロアレイ技術の様々な応用範囲とその可能性について言及したい.
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