文献詳細
文献概要
今月の主題 漢方医学と臨床検査 話題
血糖コントロールの指標である血清1,5アンヒドログルシトール(1,5-AG)に影響を及ぼすオンジ配合漢方剤―糖尿病患者における偽高値の出現
著者: 龍野一郎1
所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院細胞治療学(第二内科)
ページ範囲:P.406 - P.409
文献購入ページに移動 1. はじめに
糖尿病の治療の目的は臓器障害の予防・抑制,QOLの維持,生命予後の悪化を阻止することであり,それは糖尿病患者の血糖コントロールを正常者に限りなく近づけることによって達成されるわけである.その意味で直接的な血糖の測定(空腹時,食後,日内変動など)を頻回に行い治療に反映させることが理想的であるが,日常診療においては現実的でない.この目的で,長期的な血糖コントロールを判定するために,様々な間接的な指標が開発されてきた.例えば,ブドウ糖が蛋白を非酵素的に糖化することから,ヘモグロビンの糖化度をみるHbA1C(約1.5か月前から採血時までの血糖値の平均値を反映)やグリコアルブミン,フルクトサミン(過去2週間の血糖値の平均値を反映)が広く臨床応用されてきた.一方,1,5アンヒドログルシトール(1,5-AG)は,体内では高血糖に伴い排泄されたグルコースにより尿細管での再吸収が拮抗阻害を受け,尿中へ喪失されて直ちに血中濃度が低下することから,直近の血糖コントロール状況を鋭敏に反映する指標として,軽症糖尿病患者にHbA1Cなどと同様に臨床応用されている.しかし近年,多量の1,5-AGを含む漢方剤の服用により糖尿病のコントロールと無関係に,影響を受ける可能性が指摘されている1,2).
本稿では,まず1,5-AGの測定の原理および臨床検査上の注意点などを述べ,多量の1,5-AGを含むオンジ含有漢方剤の検査値に及ぼす実際を自験例を用いて示し,糖尿病の血糖コントロールの指標として臨床検査上の解釈における留意点を概説する.
糖尿病の治療の目的は臓器障害の予防・抑制,QOLの維持,生命予後の悪化を阻止することであり,それは糖尿病患者の血糖コントロールを正常者に限りなく近づけることによって達成されるわけである.その意味で直接的な血糖の測定(空腹時,食後,日内変動など)を頻回に行い治療に反映させることが理想的であるが,日常診療においては現実的でない.この目的で,長期的な血糖コントロールを判定するために,様々な間接的な指標が開発されてきた.例えば,ブドウ糖が蛋白を非酵素的に糖化することから,ヘモグロビンの糖化度をみるHbA1C(約1.5か月前から採血時までの血糖値の平均値を反映)やグリコアルブミン,フルクトサミン(過去2週間の血糖値の平均値を反映)が広く臨床応用されてきた.一方,1,5アンヒドログルシトール(1,5-AG)は,体内では高血糖に伴い排泄されたグルコースにより尿細管での再吸収が拮抗阻害を受け,尿中へ喪失されて直ちに血中濃度が低下することから,直近の血糖コントロール状況を鋭敏に反映する指標として,軽症糖尿病患者にHbA1Cなどと同様に臨床応用されている.しかし近年,多量の1,5-AGを含む漢方剤の服用により糖尿病のコントロールと無関係に,影響を受ける可能性が指摘されている1,2).
本稿では,まず1,5-AGの測定の原理および臨床検査上の注意点などを述べ,多量の1,5-AGを含むオンジ含有漢方剤の検査値に及ぼす実際を自験例を用いて示し,糖尿病の血糖コントロールの指標として臨床検査上の解釈における留意点を概説する.
掲載誌情報