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今月の主題 アルコールと臨床検査 総説
アルコールと生活習慣病
著者: 堀江義則1 石井裕正1
所属機関: 1慶應義塾大学医学部消化器内科
ページ範囲:P.589 - P.597
文献購入ページに移動〔SUMMARY〕 近年わが国においては,飲酒者数の増加のみならず,成人1人当たりのアルコール消費量も増加している.慢性的な多量の飲酒は肝機能障害はもとより,膵臓,脳,心臓をはじめとする全身の臓器障害を惹起し,栄養障害,代謝障害,免疫能低下を引き起こすが,このような飲酒に伴う臓器障害,代謝障害などは,現代日本の飲酒状況をみると生活習慣病と呼ぶにふさわしく,そのなかの重要な位置を占めている.いずれの障害においても,唯一確実な治療法は断酒であり,その他の治療法はあくまで補助療法にすぎない.また,アルコール依存症においては,早期からの精神科とのかかわりが断酒の継続に有効である.しかし,高尿酸血症などの一部の疾患を除いて少量の飲酒が疾患を誘発,増悪させるとの報告はなく,むしろ健康にプラスに働くことが疫学的研究からも広く認められてきている.生活習慣という見地からすると,ストレスの減少といった精神的な有効性だけではなく,直接的な身体的有効性の面からも適正飲酒が推奨される
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