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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査47巻7号

2003年07月発行

雑誌目次

今月の主題 補完・代替医療

巻頭言

補完・代替医療に期待する

菅野 剛史

pp.705-706

 補完・代替医療とは,臨床検査に携わる人達にはなじみの少ない言葉であるように思われる.さらに,この定義についても,多くの議論がなされているのが現状のようだ.しかし,日本補完代替医療学会という学会ができて,2002年には第5回の大会がもたれたのである.この必要性が叫ばれつつあるようだ.通常の医学部・医科大学では講義もされていない.まして,病院でも代替医療の外来が設けられたり,実践はされていない.そして,補完代替医療学会では「現代西洋医学領域では科学的に未検証,および西洋医学の立場で未応用の医学・医療体系の総称」と定義している.

 総称と定義されるだけあり,代替医療の領域は非常に広いものと考えられている.世界には,多くの人種・民族が住んでいるが,そのなかでは伝統医学と呼ばれるもの,民間療法と呼ばれるものが沢山利用されている.WHOでは,世界での健康管理業務の65~80%の業務が伝統的医療と考えられるものであり,代替医療の範疇に入るものと理解できる.そして,そのような観点で代替医療を考えている.人口比率からみると意外に西洋医学の恩恵を受けている人が少ないのである.

総説

相補・代替医療の現状と将来

渥美 和彦

pp.707-714

〔SUMMARY〕 従来,先進国においては医療としては通常,西洋医学が使用されているが,それ以外の伝統医療,鍼灸,指圧,マッサージ,ハーブ,音楽療法などを相補・代替医療(CAM)と呼んでいる.最近,この両者を統合して患者中心に行う医療である統合医療が注目を浴びている.欧米の先進国のみならず,中国,インド,タイなどのアジア諸国,さらにWHOなども統合医療の方向に進んでおり,わが国のみが鎖国状態にある.西洋医学は科学に基盤をおいているが,統計学的であり,CAMは経験的であるが個人的なものであり,適切なEBMが必要である.この世界的流れは,わが国の医療制度および医学教育の改革を迫ることになる.〔臨床検査 47:707-714,2003〕

国際的視点からの代替医療―特に鍼医療に関連して

後藤 修司

pp.715-718

〔SUMMARY〕 欧米における代替医療・補完医療(CAM),統合医療への国民の期待は,今の医療のあり方を考えさせられる問題提起が多く含まれている.また,統合医療への模索は,これからのあるべき医療の姿を探っていく変革の波でもあると思う.医療は常に,時代のニーズをしっかりとらえ変化していかなければならない.今,大きな時代の変化が起こっていることを,海外におけるCAMの大きなうねりのなかから感じとり,日本の今と今後を考えることが大切ではないだろうか.〔臨床検査 47:715-718,2003〕

各論

鍼灸治療

川嶋 朗 , 山下 仁

pp.719-724

〔SUMMARY〕 世界的な潮流として鍼灸は再び注目を浴びつつある.その適応も疼痛緩和,薬物療法の副作用軽減,リハビリテーション,内科や産婦人科的疾患など幅広いものである.また安全性も高い.RCTなどによる科学的評価も集積しつつあり,今後もさらに期待がもてる補完・代替医療の1つである〔臨床検査 47:719-724,2003〕

推拿療法の効果と中国における現状

孫 維良

pp.725-732

〔SUMMARY〕 鍼灸,漢方薬とならぶ中国三大伝統医学の1つである手技療法の「推拿」には,

・人体の調節機能

・免疫力の増強

・血液循環の促進

・組織の修復強化

などの作用がある.

 近年では,解剖学や生物力学などの西洋医学に基づいた研究も盛んに行われるようになってきた.〔臨床検査 47:725-732,2003〕

サプリメント―特定保健用食品

斎藤 衛郎

pp.733-743

〔SUMMARY〕 日本人でその有効性についての科学的検証がなされて許可される特定保健用食品は,健康増進,生活習慣病の一次予防,初期治療に必要な食習慣の改善を積極的に進めることのできる補完・代替医療の1つのカテゴリーとして多大な貢献をする可能性を秘めている.しかし,安全性は高いものの,食品の機能性成分(保健機能成分)で得られる効果は緩徐で,長期間を要するものであり,薬とは質的に異なる.本稿では,生活習慣病のリスク因子となるコレステロール,中性脂肪,体脂肪,血圧,血糖の低下効果を持つ食品成分を幾つか取り上げ,効果の事例を示す.〔臨床検査 47:733-743,2003〕

補助代替コミュニケーション

小島 哲也

pp.744-753

〔SUMMARY〕 様々な原因によってスピーチの獲得や使用に著しい困難を示す人々の言語治療に,各種の非音声系伝達手段をスピーチの補助または代替として積極的に利用するアプローチを補助代替コミュニケーション(AAC)という.最近,AACは言語治療アプローチとして浸透してきただけでなく,医療,福祉,教育にかかわる包括的サービスを提供するための学際的・複合領域的な臨床・研究分野として確立されつつある.本稿では,AACの発展の背景,基本要素について解説し,ある脳性まひ児の指導事例を紹介した.〔臨床検査 47:744-753,2003〕

ペインクリニックでの電気刺激療法

高橋 秀則 , 森田 茂穂

pp.755-761

〔SUMMARY〕 電気刺激が本格的に臨床の場で用いられるようになったのは,MelzackとWallによってゲートコントロール理論が提唱されてからである.以来電気刺激療法は疼痛治療の1つとして変遷を遂げてきた.現在主に用いられているのは経皮的電気刺激法,脊髄硬膜外刺激法,大脳皮質運動野刺激法である.経皮的電気刺激法は種々の表在的な軽~中等度の痛みに,脊髄硬膜外刺激法は神経因性疼痛や血管性疼痛に,大脳皮質運動野刺激法は中枢性疼痛に適応がある.〔臨床検査 47:755-761,2003〕

話題

音楽療法

松本 晴子 , 吉田 聡

pp.763-767

1. はじめに

 近年の空前の医療ブームにおいて,多くの補完・代替療法,芸術療法のなかでも音楽療法の関心が高いのはなぜだろうか.「音楽」の特性や,医療としての音楽療法の特徴を考察しながら,音楽療法の現状と今後の展望について具体的に解説していく.

芸術療法―絵画療法を中心に

高江洲 義英

pp.769-772

1.芸術療法の広がり

 絵画療法をはじめとして,芸術療法の今日の広がりは表現をめぐる諸領域に及んでいる.絵画のほかにも,音楽,文芸,陶芸,心理劇,箱庭,東洋芸道などの各技法がそれぞれの施設で工夫され,実践されている.これら各種の表現技法は,わが国の精神医療のなかで,かなり以前から,現場における工夫として熱心な臨床家によって試行されていた.絵画や音楽から,園芸にまで及ぶ広範な技法および作業活動の領域が精神科臨床の場に導入され,時に生活療法と呼ばれたりした.その後,この領域は作業療法(入院)やデイケア(外来)の主要活動種目として展開されて,今日の隆盛をみるようになった.

 フロイトSに始まる精神分析,精神療法の流れは,個人の内部に潜む精神力動を解明し,人間のもつ癒しの構造を明るみに導き出してきたが,無意識の発見に伴う自我の構造への考察は,自由連想法や夢分析などの技法を開示していった.さらに,ユング CGの分析心理学は,集合的無意識,象徴,太母,マンダラなどの心的コンプレックスを概念として提示し,魂への理解を深めて表現技法への理論的基盤を築いた.他方で,アリエッティ Sは大著「創造力」を著して,創造のもつ癒しの力を解明し,三次過程としての創造過程の意義を重視し,力動的精神医学の見地から芸術療法のもつ治療的意義を深めていった.

経穴(ツボ)の認識と国際化

山下 仁 , 津嘉山 洋

pp.773-777

1.経穴の定義

 「経穴(acupoint)」(ツボの正式な呼称)とは,経験的に治療効果が認められ,鍼灸の施術点として用いられてきた体表の一定部位のことである1).また,治療点だけでなく,疾病の反応点であり診断点でもあるとされている2).古代中国では,気血がめぐる通路として「経絡(meridian)」が全身にくまなく分布しているという概念が生まれ,時代ごとの思想と臨床経験の影響を受けながら発達した.経絡を大まかに分けると,気血交通の幹線であり臓腑にまといながら体表を縦に走る「経脈」,および経脈から枝分かれして気血を横に連絡させる「絡脈」がある.厳密には経脈上にあるツボを経穴と呼び,それ以外の部位にあるツボを奇穴,阿是穴,新穴などと分類しているが,日常的にはこれらをすべて含め総称として経穴と呼ぶことも多い.取穴(経穴の場所を決めること)は,それぞれの経穴について骨・筋・関節などを指標とした位置が教科書で決められているが,日本では教科書的な位置およびその周辺を触圧して緊張,圧痛,心地よさ,響き(独特な感覚が放散すること)などの反応を確認しながら決定することが多い.(図1)

代替医療と保険診療

雨森 正洋

pp.779-783

1. はじめに

 代替医療と補完医療をあわせてCAM(complementary and alternative medicine)といういい方もある.ともに,西洋医学的な通常医療(conventional medicine)の枠外の医療のことである.通常医療の枠の定義は種々あるが,保険診療と代替医療という関係を論じるうえでは,病院・診療所で供給される一般的な治療を通常医療の枠とすることにした.というのも,鍼,按摩,マッサージ,バイオフィードバック療法,催眠療法,胎盤療法などは,大多数の医師や読者にとって代替医療という範疇になるものと思われるからである.しかし,これらは療養費の給付が保険診療で許可されているのである.本稿では,前半部分で,このような通常医療の枠外医療について紹介する.さらに後半部分では今後の保険診療の動向について解説する.

今月の表紙 電気泳動の解析シリーズ・7

small dense LDLの解析

塚本 秀子 , 武井 泉

pp.700-703

1.はじめに

 最近,動脈硬化性疾患,または虚血性心疾患の危険因子として小粒子・高密度低比重リポ蛋白(small dense low density lipoprotein;sdLDL)が分析される.その分析法,臨床的意義を解説する.

 sdLDLはLDLのサブフラクションの1つである.LDLの密度(比重)は広義には1.006~1.063g/dlに,サイズは23.0~28.0nm間に分布している.sdLDLは名前の由来のごとく,LDLのなかでは粒子サイズが小さく,高密度のLDLである.これは蛋白含量に対して脂質含量(特にコレステロール含量)が少ないことを意味しLDLの比重が高いことによる.

 近年このsdLDLが動脈硬化性疾患の新しい危険因子としての可能性が注目されつつある.それは冠動脈疾患が高率に認められるアメリカで,Snidermanら1)などにより既にその概念は提唱されていたが,Krauss2)とAustinら3)はこのsdLDLと心筋梗塞との関連を,健常者を対象として報告したことから端を発する.彼らの報告によると濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲル(PAG)電気泳動像の表現型より,LDLにはパターンAとパターンBがあり,パターンAはLDLの主ピークの分子サイズが25.5nm以上に,パターンBは主ピークが25.5以下にあるものと定義した.このうちパターンB(sdLDLに相当)を多く有する例が心筋梗塞を発症する相対危険率が3倍も多いことを報告した.また同時にパターンBは高トリグリセライド血症(高TG血症),ならびに低HDL血症を伴い,必ずしも総コレステロール値が高くないこと,年齢,肥満度,性差とは独立した危険因子であることを報告した.

 この報告以降,LDLのサブフラクションのなかでもsdLDLの存在が動脈硬化性疾患(特に冠動脈疾患)との関連が強いことが明らかにされていった.

コーヒーブレイク

スポーツ快感

屋形 稔

pp.768

 昨年はサッカーW杯で日本中が涌いたが,わが家もスポーツ誌を購読して人並みに茶の間の話題にした.しかしスポーツ新聞なるものはあまり面白いものでないのに段々気がついた.やはりスポーツは自ら体験してこそ快感があるもので,近頃体が自在に動かなくなってくると逆に昔味わった快感のみが蘇ってくるようになる.若い人は応援したり通になるのもいいが,今のうちに存分にスポーツ快感を味わうべきであろう.

 小学生の頃は今はあまり目にしないドッチボールなる球技にのめりこんだ.バスケットボール大の球を相手に捕捉されない速さと強さで投げつけ,捕球に失敗した人が一人ずつ枠内を去り残った方が勝ちとなる.団体戦であるが個人の投球の強さ速さ,捕球の巧みさが大切で,野球よりもっと快感が残った.

高齢化社会の光と影

寺田 秀夫

pp.796

 最近ある高齢者レジデンスを訪れる機会があった.このレジデンスの平均寿命はほぼ75歳で,約200名の老夫婦あるいは連れ合いを亡くした独身者で経済的に富裕な人達が生活している瀟洒な建物である.

 その人達の健康管理やケアに当っているクリニックの壁に架けてある立派な額のなかに下記の文章が書かれてあった.

     長寿の心得

    人生は60歳から

1.70歳でお迎えの来た時は只今留守と云え

2.80歳でお迎えの来た時はまだ早いと云え

3.90歳でお迎えの来た時はそう急がずともよいと云え

4.100歳でお迎えの来た時は頃をみてこちらからボツボツと行くと云え.

 気がながく,心はまるく,腹たてず,

 口つつしめば命ながらえる 合掌

この額を読んで何ともいえぬほのぼのとした思いを覚えた自分であった.

特別寄稿

いま話題の感染症 SARS―その現状と対策

佐々木 信一

pp.785-795

1.はじめに

 本稿では,現在,テレビ,新聞などメディアで騒がれている,重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome;SARS)を紹介する.先日の台湾人医師の訪日騒動で,当症候群は決して対岸の火事ではなく日本も直面した問題であることを再認識させられた.いつ何時日本上陸してもおかしくない状況にある当症候群がいかなる病気なのか,いかに防げばよいのか.いまだ未知のベールに包まれた感のある当症候群ではあるが,現在までにわかっていることを中心に解説してみる.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 免疫機能検査・33

アトピー性脊髄炎

小副川 学 , 吉良 潤一

pp.797-803

はじめに

 アトピーとは,ダニやスギ花粉などの環境中に普遍的に存在する抗原に対して高immunoglobulin E(IgE)応答を呈する状態をいう.これら種々のアレルゲンに対するアトピーを基盤として,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患を生じる.これまでアトピーに伴って脊髄炎が起こることを指摘した報告はなかったが,われわれは成人のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis;AD)患者で頚髄炎がみられることを明らかにした1).また脊髄炎において血清全IgEおよびアレルゲン特異的IgEが健常対照より有意に高値であることを見いだした.そこでわれわれはアトピーを基盤として脊髄に炎症を生じる病態があるのではないかと考え,アトピー性脊髄炎(atopic myelitis)との病名を提唱している1~3).本稿ではアトピー性疾患に伴い,発症する脊髄炎について概説する.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ シグナル伝達・7

細胞骨格・細胞接着の制御シグナル

渡辺 崇 , 貝淵 弘三

pp.805-812

はじめに

 癌はわが国の死因の第一位を占めている.癌の転移とは癌細胞が原発巣を離れて,近接組織あるいは遠隔臓器で増殖することをいう.癌細胞は原発巣からの遊離にはじまり,組織内での浸潤,リンパ管や血管内への侵入,さらに管壁から組織への浸潤といった過程を経て新しい環境で再増殖する.この過程には細胞の移動が不可欠であり接着能,運動能の異常が癌の転移に深く関与している.細胞接着や細胞運動は細胞内の細胞骨格により調節されている.細胞骨格にはアクチンなどからなるマイクロフィラメント,チューブリンなどからなる微小管,ビメンチン,ケラチンなどからなる中間径フィラメントがある.これらは互いに密接に関係しながら,細胞接着,細胞運動,細胞質分裂,細胞形態,細胞の極性形成などの高次機能を担っている.低分子量GTP結合蛋白質のサブファミリーの1つであるRhoファミリーは,Rho,Rac,Cdc42などのメンバーから構成されており,細胞増殖因子などの細胞外シグナルの下流で細胞骨格を制御していると考えられている.近年,Rhoファミリーのそれぞれのメンバーに特異的な標的蛋白質が次々と同定され,Rhoファミリーの作用機構が明らかになりつつある.本稿ではRhoファミリーによる細胞骨格,細胞接着の制御機構について,われわれの研究をまじえて概説する.

追悼 故 堀尾武一先生

堀尾武一先生を偲んで

宮井 潔

pp.813-814

 堀尾先生の訃報に接し,心の中に大きな空洞ができたように感じられたのは私一人ではなかったと思います.決して奇を衒うことなくむしろ地味にふるまわれた先生でしたが,今更ながらその偉大さに気付かれた方も多かったのではないでしょうか.

 堀尾先生は私にとっては大阪大学の先輩ではありましたが,理学部を卒業され蛋白質研究所で酵素化学,特に癌や光合成のほか,酵素の分離分析分野での権威として活躍しておられ,医学部に属していた私共は孤高を守る基礎学者というイメージを抱いておりました.

堀尾武一先生とphysphonglycerate mutase(PGAM)

林 泰三

pp.814-815

 堀尾先生は臨床化学の分野において,あまりにも高名な方であり,一般的なことは他にゆずり,先生との交流について,憶い出すままに語ることにします.

 医学の世界は,特に臨床医の間のことではありますが,「犬と猿,医者と医者」といわれた故事にもあるように,学閥が風を切って歩き,多士済々がひしめく,人間関係のむつかしいところです.しかし先生は理学部出身の卓越した洞察力と,かざらない人柄でもって,大阪大学蛋白質研究所の所長はもとより,多くの学会の重鎮として活躍されました.

堀尾武一先生に研究の基本を教えていただいた

小川 善資

pp.815

 初めて堀尾武一教授にお目にかかったのは検査技師として大阪大学医学部付属病院に非常勤職員として勤務して2年目のことでした.GOT(AST)の標準化を行うため,単位の基準をモル吸光係数に求め,活性測定値は,Karmen法をベースに改良を行うことと決めていました.これを実現させるため,上司である林 長蔵助教授は「装置定数は基礎工学部南教授」に,「GOTのことは医学部和田教授」に,「共役酵素反応に関することは堀尾教授」に勉強に行きなさいと命令されました.

 同じ大学に勤務するといっても,天と地ほど身分に開きのある方に,面会に行ったわけですから,いかほど緊張していたか想像していただけると思います.その私に対して,堀尾教授はいきなり,「聞いてるで,ちょうど,同じような仕事をしてんねん,いい機会や,一緒にやろうや」とべたべたの関西弁で優しく声をかけていただきました.この言葉を聞いただけで今日訪問した仕事は終了した.とほっとしたとたんに「何から,どないして,やっていくつもりやねん」と,すぐさま実質論に.「わかった,試案を作ってみよ」と簡単に引き受けていただき,GOT活性測定法のいわゆる,堀尾試案が誕生したわけです.その後も,困った問題が生じると,堀尾先生を訪ねて相談すると「わかった,やってみよ」とすぐに引き受け,解決して下さいました.

研究

O型赤血球を利用したABO不適合同種骨髄移植後のレシピエント血清中ABH血液型物質の解析

岸野 光司 , 室井 一男 , 中木 陽子 , 永嶋 貴博 , 山本 千鶴 , 岩本 禎彦 , 小澤 敬也

pp.817-821

〔SUMMARY〕 ABO血液型不適合同種骨髄移植(BMT)を受け長期間(97~569日)経過した4例で,血清中ABH血液型物質の解析を行った.BMT後レシピエントの末梢血単核球のABO遺伝子型は,完全にドナー型に変換されることをpolymerase chain reaction with sequence specific primers(PCR-SSP)を用いて確認した.健常人のO型赤血球に,レシピエント血清中のABH血液型物質を吸着させた後,高感度の抗体吸着解離試験を用い血清中のAおよびB型物質の存在を測定した.BMT後,どの観察時点においてもレシピエント由来の血液型物質の存在が示唆された.BMT後においても,非血液細胞より分泌されるレシピエント由来のAまたはB型物質が血清中に存在し,これらの型物質がドナー由来の成熟赤血球表面に吸着する可能性が考えられた.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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