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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻8号

2003年08月発行

文献概要

今月の主題 プロテアーゼ,プロテアーゼインヒビター 話題

HIVプロテアーゼインヒビター

著者: 田村文雄1 前田浩1

所属機関: 1熊本大学大学院医学薬学研究部・微生物学分野

ページ範囲:P.903 - P.905

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1. はじめに

 エイズ(aquired immunodeficiency syndrome;AIDS)は,T細胞(CD4+)に対するHIV(human immunodeficiency virus)の感染によって起きる後天的免疫不全の状態になる疾患である.1980年代初頭より同疾患が認識されはじめ,HIVの発見および病気の本質が解明され全体像がわかってきた反面,全世界規模で患者が広がっており治療法の確立が急務になった.1987年に本格的な抗HIV薬として,「核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤」であるAZT(アジドチミジン:ジドブジン)が登場した.これは,HIV-RNAが逆転写酵素によりDNAに翻訳される過程を阻害するチミジンの誘導体であったが,単剤では十分な効果が得られなかった.その後,1995年から新たな治療薬として,ウイルスの増殖に必要な蛋白分解酵素を阻害するいわゆる「HIVプロテアーゼインヒビター」と,1996年には「非核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤」が加わり,その頃よりエイズの治療は大きく変化していった1)

 核酸誘導体系2剤に,HIVプロテアーゼインヒビターまたは非核酸誘導体系逆転写酵素阻害剤を加えた3剤,4剤併用による治療が行われるようになった1996年より,米国におけるエイズ死亡者数が初めて減少に転じたのである.このような早期から強力な治療を行う高活性抗ウイルス療法(highly active antiretroviral therapy;HAART)の導入により,「エイズはもはや克服可能な感染症」とまでいわれた.このHAARTは,“Hit HIV early and hard”といわれ,多剤併用療法により早期から強力な治療を行うものであったが,この「克服可能な感染症」という幻想は,1~2年でもろくも砕け散ったのである.まず,PCRによる高感度の血中ウイルスゲノムの検出法によりHIVを完全に排除することが不可能であることがわかってきたことと,耐性ウイルスや副作用の問題が出現し,最近では治療の開始時期を遅らせるようになってきている.

 本稿では,逆転写酵素阻害剤と並び称せられている主なエイズ治療薬であるHIVプロテアーゼインヒビターについて概説し,その問題点と新規のHIVプロテアーゼインヒビターについて紹介する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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