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文献詳細

雑誌文献

臨床検査47巻8号

2003年08月発行

文献概要

今月の主題 プロテアーゼ,プロテアーゼインヒビター 話題

アルツハイマー病

著者: 保戸田二香1 石浦章一1

所属機関: 1東京大学大学院総合文化研究科

ページ範囲:P.906 - P.910

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1. はじめに

 アルツハイマー病(Alzheimer's Disease;AD)は,記銘力の低下を初期症状とする進行性の痴呆であり,高齢社会における大きな社会・経済問題の1つとして,その発症機構の解明と医療方法の確立が重要な課題となっている.神経病理学的な特徴として,大脳皮質における神経細胞の脱落と,老人斑や神経原線維変化と呼ばれる繊維状構造物の蓄積が挙げられる.ADは,遺伝的背景がはっきりしている家族性(Familial AD;FAD)と,はっきりしない孤発性とに分けることができる.FADの原因遺伝子として,アミロイド前駆体蛋白質(APP)遺伝子,プレセニリン1,プレセニリン2が,また孤発性ADの危険因子として,アポリポ蛋白E(ApoE)のε4遺伝子型,α2マクログロブリン遺伝子などが明らかになっている.FADの原因遺伝子や変異の種類は複数であるが,老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ(Aβ)ペプチドのうち,凝集しやすいAβ42の産生が上昇することは共通である.Aβは,APPからβ-,γ-セクレターゼと称されるプロテアーゼによって切断,分泌されるが(図1),ヒトの脳では主に40アミノ酸から成る可溶性のAβ40が産生される(図2).それよりも2残基長いAβ42は,凝集体の核となってオリゴマーを形成し,神経細胞に対し何らかの毒性を示すことによって神経原線維変化,神経細胞の脱落へと導き,AD発症に至ると考えられている(アミロイド・カスケード説).本稿ではAD医療の可能性について,Aβを取り巻くプロテアーゼとプロテアーゼインヒビターを中心に述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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