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今月の主題 感染症における危機管理 話題
重症急性呼吸器症候群(SARS)材料取扱いのためのWHOバイオセーフティーガイドライン
著者: 松山州徳1 多田有希2 岡部信彦2 田代眞人1 田口文広1
所属機関: 1国立感染症研究所ウイルス第3部 2国立感染症研究所感染症情報センター
ページ範囲:P.43 - P.50
文献購入ページに移動2002年11月に中国広東省に端を発した重症急性呼吸器症候群(SARS)は,2003年2月から瞬く間に世界に拡がり,その拡大の早さと高い死亡率から,発生国のみならず全世界を震撼させた.世界保健機関(WHO)は即座に全世界に向け注意喚起(Global Alert)を発し,発生状況の把握や病原体の解明などが世界規模で開始された.WHOの発表した症例定義に基づいて,各国から報告された症例数(SARS「可能性例」数)は8,098人,死亡者数は774人である(2003年9月26日時点).また世界の研究機関での共同研究によって,2003年4月16日,SARSの原因病原体はコロナウイルス科に分類される新しい型のウイルスであると決定され,「SARSコロナウイルス」と命名された.SARSコロナウイルスは従来のコロナウイルスとは異なり,ヒトに高い病原性を示し,ヒトからヒトへ咳などにより飛沫感染することから,その取扱いは原則としてBSL3実験室で行うよう推奨されている.本稿では,SARS材料取扱いのためのWHOバイオセーフティーガイドラインについて概説する.また,国立感染症研究所でWHOガイドラインに従って行われているSARS診断法やSARS診断用の検体採取に関する情報も合わせて紹介する.
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