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特集 動脈硬化-その成り立ちと臨床検査 1章 動脈硬化の発症メカニズム
1. 動脈硬化性疾患とは
著者: 齋藤康1
所属機関: 1千葉大学大学院医学研究院細胞治療学
ページ範囲:P.1186 - P.1188
文献購入ページに移動はじめに
動脈硬化とは本来病理学の言葉であると思われる.病理学の世界ではこれを厳密に定義しているし,また成り立ちについてもいくつかの説が提唱されている.しかし動脈硬化によってもたらされる臨床症状や臓器機能の障害によってそれは,脳動脈硬化という表現でその症状から脳の動脈に起こる変化を基盤にして起こったものとして使われていた歴史があるように,臨床診断名としても使われていた.臨床症状から動脈硬化とはなにかを考えるとき,それは極めて多彩な症状であり,もしその症状からその臓器に起こる変化についてほかの病気を含めた鑑別診断を求められるとしたら必ずといっていいほど,動脈硬化という診断はその中に入るであろう.日常にしばしば遭遇する,頭痛,めまい,耳鳴り,息切れ,胸痛,高血圧,腰痛,歩行時の足の痛み,麻痺冷感など挙げればきりがない.動脈硬化とはそもそも動脈の閉塞に伴って血流の低下そしてそれより末梢の虚血の状態がつくられ,これが何らかの臓器障害をもたらして症状を呈するのである.そしてその症状が全身にみられるのは,動脈が全身に分布しているからであり,その分布する形態によって起こりやすさ,起こりにくさという点で,また分布する臓器の機能の特徴によって,症状は異なるのである.
臨床的には心筋梗塞にみられるように,急激に起こる胸痛や心機能の低下などは,動脈硬化を基盤とした動脈の完全閉塞であり,心筋の局所的な虚血から,心筋の壊死などを起こしている症状である.しかしこのような症状を呈するまで,動脈硬化巣はどのようになっているかというと,動脈硬化が起こりはじめて,すこしずつ動脈壁が内腔に向かって肥厚が起こるが,その程度が,内腔の3分の2以上閉塞が起こらないと症状は呈さないといわれる.それは血管は拡張し,収縮するという機能をもっているので,多少閉塞が起こっても血液を供給するという機能は保持できると考えられているからである.すなわち,臨床的に動脈硬化という症状からの診断がなされるときには病理学的に多くの場合かなり進展しているということもできるのである.このようなことも多彩な症状を示す要因の1つであろう.
動脈硬化とは本来病理学の言葉であると思われる.病理学の世界ではこれを厳密に定義しているし,また成り立ちについてもいくつかの説が提唱されている.しかし動脈硬化によってもたらされる臨床症状や臓器機能の障害によってそれは,脳動脈硬化という表現でその症状から脳の動脈に起こる変化を基盤にして起こったものとして使われていた歴史があるように,臨床診断名としても使われていた.臨床症状から動脈硬化とはなにかを考えるとき,それは極めて多彩な症状であり,もしその症状からその臓器に起こる変化についてほかの病気を含めた鑑別診断を求められるとしたら必ずといっていいほど,動脈硬化という診断はその中に入るであろう.日常にしばしば遭遇する,頭痛,めまい,耳鳴り,息切れ,胸痛,高血圧,腰痛,歩行時の足の痛み,麻痺冷感など挙げればきりがない.動脈硬化とはそもそも動脈の閉塞に伴って血流の低下そしてそれより末梢の虚血の状態がつくられ,これが何らかの臓器障害をもたらして症状を呈するのである.そしてその症状が全身にみられるのは,動脈が全身に分布しているからであり,その分布する形態によって起こりやすさ,起こりにくさという点で,また分布する臓器の機能の特徴によって,症状は異なるのである.
臨床的には心筋梗塞にみられるように,急激に起こる胸痛や心機能の低下などは,動脈硬化を基盤とした動脈の完全閉塞であり,心筋の局所的な虚血から,心筋の壊死などを起こしている症状である.しかしこのような症状を呈するまで,動脈硬化巣はどのようになっているかというと,動脈硬化が起こりはじめて,すこしずつ動脈壁が内腔に向かって肥厚が起こるが,その程度が,内腔の3分の2以上閉塞が起こらないと症状は呈さないといわれる.それは血管は拡張し,収縮するという機能をもっているので,多少閉塞が起こっても血液を供給するという機能は保持できると考えられているからである.すなわち,臨床的に動脈硬化という症状からの診断がなされるときには病理学的に多くの場合かなり進展しているということもできるのである.このようなことも多彩な症状を示す要因の1つであろう.
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