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特集 動脈硬化-その成り立ちと臨床検査 2章 主要冠疾患危険因子の診断基準と臨床検査値
5. 肥満症―診断基準と臨床検査
著者: 流谷裕幸1 船橋徹1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科生体制御医学専攻分子制御内科学
ページ範囲:P.1241 - P.1248
文献購入ページに移動肥満症は,糖尿病,高血圧,高脂血症,冠動脈疾患,虚血性脳疾患といった成人に合併する疾病の多数を占めるいわゆる生活習慣病全般に大きな影響を及ぼす病態であり,近年,わが国においてもライフスタイルの変化によりその頻度が増加してきている.さらに,これらの疾患の発症には単なる脂肪の蓄積ではなく,蓄積部位の違いが重要であるとされている.つまり,腹腔内に脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満が種々の危険因子の基盤となり,動脈硬化性疾患の発症に深くかかわっていることが明らかとなった.これらのことを踏まえて日本肥満学会は疾病と関連する病態として肥満症の診断基準を作成した.また,脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵臓器ではなく,様々な生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌し,代謝的に活発であることが明らかとなり,動脈硬化性疾患などの肥満合併症との直接的な関連も解明されつつある.本稿では動脈硬化性疾患危険因子の関連として,肥満症の診断と内臓脂肪蓄積の測定法を中心に解説する.また,内臓脂肪型肥満でしばしばみられるように,危険因子が重積した病態をメタボリックシンドロームとして捉える考え方が最近一般的になってきている.メタボリックシンドロームの診断基準およびメタボリックシンドロームの成因として注目される脂肪細胞の機能異常についても概説する.
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