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特集 動脈硬化-その成り立ちと臨床検査 3章 より繊細な診療を求めて―これからの冠疾患危険因子
8. アディポネクチン
著者: 熊田全裕1 下村伊一郎1
所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科
ページ範囲:P.1307 - P.1311
文献購入ページに移動最近の分子生物学の発達により,脂肪細胞が単にエネルギーを蓄積しているだけでなく,様々な生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌していることが明らかになってきた.アディポサイトカインの血中濃度が測定可能になり,その分泌異常が容易に把握できるようになったことから,アディポサイトカイン分泌異常とインスリン抵抗性や動脈硬化発症進展との関連性を示した臨床データが数多く報告されるようになった1).またそれらのメカニズムについても解明されつつある.このような医学の進歩に伴い,冠動脈疾患危険因子が,従来から唱えられている糖尿病,高脂血症,高血圧,喫煙といった古典的なリスクファクターだけにとどまらず,アディポサイトカイン分泌異常そのものが冠動脈疾患危険因子の1つであることが明らかとなってきた.
本項ではアディポサイトカインのなかでも脂肪組織特異的に高発現しているアディポネクチンの作用について解説するとともに,低アディポネクチン血症が新しい冠疾患危険因子の1つであるという観点から,血中アディポネクチン濃度の測定意義について述べることとする.
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