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特集 動脈硬化-その成り立ちと臨床検査 5章 動脈硬化性疾患の画像検査
2. マルチスライスCT,RI
著者: 佐藤裕一1
所属機関: 1日本大学医学部内科学講座循環器内科学
ページ範囲:P.1397 - P.1402
文献購入ページに移動マルチスライスCTによる冠動脈疾患診断の意義
近年の報告では,急性心筋梗塞症,不安定狭心症など急性冠症候群(ACS)の約70%では急性期における冠動脈造影検査上,冠動脈狭窄率が50%以下の軽度狭窄であることが指摘されている1).したがって,ACS患者の多くは発症まで無症状であることが多く,このため適切な予防を行うことが困難であるのが現状である.ACSの発症機序として,冠動脈プラークの破綻と,それに引き続く血栓形成が挙げられる.破綻をきたしやすい冠動脈プラークの形態学的特徴として,脂質コアが大であること,線維性被膜の菲薄化,病変部冠動脈のリモデリング現象の存在が知られている2~4).したがって,これらの形態学的異常を検出することがACSの予防戦略としては最も合理的であろう.従来,血管内超音波(IVUS)や血管内視鏡が冠動脈プラークの性状評価には欠かせない検査法とされてきたが,いずれもカテーテルを用いた観血的検査法であり,スクリーニング検査としての応用は現実的ではない.マルチスライスCT(MSCT)は優れた空間解像度(0.4~0.5mm)を有し,このため冠動脈病変を非観血的に描出することが可能となった.MSCTによる冠動脈有意狭窄の診断精度は感度94%,特異度97%と高く5),冠動脈造影検査に代替可能な検査法として認知されつつあるが,MSCTの有用性はむしろ冠動脈プラークの検出およびその質的評価が可能であるという点であろう.
近年の報告では,急性心筋梗塞症,不安定狭心症など急性冠症候群(ACS)の約70%では急性期における冠動脈造影検査上,冠動脈狭窄率が50%以下の軽度狭窄であることが指摘されている1).したがって,ACS患者の多くは発症まで無症状であることが多く,このため適切な予防を行うことが困難であるのが現状である.ACSの発症機序として,冠動脈プラークの破綻と,それに引き続く血栓形成が挙げられる.破綻をきたしやすい冠動脈プラークの形態学的特徴として,脂質コアが大であること,線維性被膜の菲薄化,病変部冠動脈のリモデリング現象の存在が知られている2~4).したがって,これらの形態学的異常を検出することがACSの予防戦略としては最も合理的であろう.従来,血管内超音波(IVUS)や血管内視鏡が冠動脈プラークの性状評価には欠かせない検査法とされてきたが,いずれもカテーテルを用いた観血的検査法であり,スクリーニング検査としての応用は現実的ではない.マルチスライスCT(MSCT)は優れた空間解像度(0.4~0.5mm)を有し,このため冠動脈病変を非観血的に描出することが可能となった.MSCTによる冠動脈有意狭窄の診断精度は感度94%,特異度97%と高く5),冠動脈造影検査に代替可能な検査法として認知されつつあるが,MSCTの有用性はむしろ冠動脈プラークの検出およびその質的評価が可能であるという点であろう.
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