icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査48巻12号

2004年11月発行

雑誌目次

今月の主題 自己健康管理のための検査

巻頭言

自己健康管理のための検査

片山 善章

pp.1495-1496

 昭和36(1961)年に国民皆保険制度が実施されてから以降の国民医療費(以後は医療費と略する)は経年的に上昇の一途をたどっている.昭和60(1985)年を起点に平成11(1999)年まで約5%の上昇率であり,この医療費の高騰は老人医療費の上昇が大きな要因になっているところから,政府は昭和57(1982)年に経済が低成長に入ったため,医療費抑制への対策として老人保健法を創設し対応した.しかし平成6(1994)年に先進国では類をみない速さで高齢社会(高齢化率14%)に入り,2025(平成37)年には高齢化のピークを迎えるとされる.このような本格的高齢社会に向けて,高齢者医療への対策は急務とされている.また,医療費抑制政策の煽りを受けて介護保険法が平成12(2000)年4月に施行された.その効果は平成11(1999)年の医療費30兆337億円から平成12(2000)年は30兆3,583億円となり5,754億円が抑制されたことになったが,平成13(2001)年は再び31兆3,234億円となり3.2%増になっている.平成14(2002)年には31兆1,240億円と前年に比較して0.6%節減になっているが,とりわけ,医療保険の財政赤字は深刻である.

 この膨大な医療費に対する抑制政策として厚生労働省は病気にならないようにして医療費を抑制するために,平成12(2000)年3月に21世紀における国民の健康づくりのため「健康日本21」を打ち出した.その内容は健康寿命の延伸などを実現するために,平成22(2010)年を目途とした具体的な目標などを提示することなどにより,健康に関連するすべての関係機関・団体等を始めとして,国民が一体となった健康づくり運動を総合的かつ効果的に推進し,国民各層の自由な意思決定に基づく健康づくりに関する意識の向上および取組を促そうということである.

総説

郵便・郵送検診について―法的環境と個人の健康管理の将来像

佐守 友博

pp.1497-1502

〔SUMMARY〕 個人が健康を自己管理するためには,自分が受けたいときに正確な検査ができるシステムの構築が将来的に必要である.検査データを自己管理する方法には色々あり,これからの厚生行政の改革も必要となる.現在,自分が受けたいときに実施できる自己チェックシステムとして郵便・郵送検診が利用されている.郵便・郵送検診に関する法的背景や,正確な検査を行うための注意点などについて総論的に述べた.

血液検査チップの開発と応用

田中 義行

pp.1503-1510

〔SUMMARY〕 郵送健診において一般的な健康状態を把握するには生化学検査が必須であるが,血球分離時の溶血や成分劣化の問題があるため,この問題を克服すべく血球分離時の溶血を抑え,多くの血清成分について常温で最低7日間保存可能な血液検査チップの開発を試みた.

 今回われわれが開発した血液検査チップは血球分離時の溶血を抑え,多くの血清成分について常温で7日間安定した状態で保存できるため,郵送による生化学検査を可能とする血液検査チップへの適用が期待された.

OTC検査薬の現状と問題点―諸外国の状況を踏まえて

窪田 規一

pp.1511-1517

〔SUMMARY〕 医療用医薬品がOTC化され確たる市場を形成しつつあるのに比べ,OTC検査薬はさして普及しているとは言い難い.諸外国,特に米国の現状と比較するとその差は歴然である.なぜ,わが国ではOTC検査薬の普及が遅い(市場規模が小さい)のだろうか? OTC検査薬の現状と諸外国での状況を比較しながら検証する.

 なお,わが国において正式な意味でOTC検査薬と呼べるものは厚生労働省でOTC検査薬としての承認・認可がおりた「尿糖and/or尿蛋白測定検査薬」「尿中hCG測定検査薬(妊娠検査薬)」の2分野だけである.しかしながら承認・認可品だけでは,あまりにも品目が少なく話題性に欠くうえ,諸外国との比較は困難であるため,OTC的な使われ方の検査薬(諸外国ではOTC検査薬として承認・認可されているケースが多い)を含めて述べたいと思う.

各論

郵送検診における検体保存条件が測定値へ及ぼす影響

宇藤 俊明 , 成瀬 雅之 , 青木 哲雄 , 桑田 悟 , 田村 卓男

pp.1519-1525

〔SUMMARY〕 濾紙血における郵送検診の検体安定性について,PSA,ペプシノーゲンI・II,HbA1cを対象に行った検討成績を報告した.4℃,室温(25℃)に置いた場合に3日後までなら許容できる誤差範囲内にあったが,42℃の高温では7日後以降で濃度低下がみられた.さらに,PSAにおいては濾紙血の乾燥が不完全な状態での保存では一層顕著な低下傾向にあった.PSAでは液状血清でも低下はみられるが,乾燥をしっかり行った濾紙血では,これと同等かそれ以上に安定であった.このように項目によって濾紙血での安定性は異なるので,自ら精度保証の確認ができたものについてのみ,郵送検診の対象項目にすべきと考える.

健診被験者サイドに立って開発した生活習慣病測定キット―中指頭先端セルフサンプリングで可能とするデバイス検査の実際

前畑 英介 , 堀田 正敏 , 柴 輝男 , 山門 実 , 矢野 正生 , 下村 弘治 , 井上 穣 , 岩澤 肇 , 古賀 修

pp.1527-1532

〔SUMMARY〕 われわれは被験者自らが行う毛細血管-デバイス(血漿)検査(デメカルキット)を開発した.本キットはHbA1cを含めた生活習慣病項目(13項目)がわずか50μl血液で検査可能である.測定法は日本電子分析機(2250型)を用い,DF理論を組み入れたG3P希釈剤による希釈法である.再現性(CV)は5~6%以下,静脈血法とほぼ一致する.われわれはさらに癌マーカー,感染症マーカーもキット化しており費用対効果は期待できる.したがって,健康度を手軽に知ることのできるデバイス検査の有用性は高い.

話題

薬局,ドラッグストアで扱う郵送健診

浦田 武義

pp.1533-1539

1.はじめに

 過日,フランスのロワール地方を訪れた際,地平線の彼方まで一面に広がるぶどう畑の,一定間隔に1本ずつ植えられたバラに興味をもち,その理由を聞くと,「甘いぶどうには虫が付く.が,その前にまずバラに虫が寄る.よって,毎日このバラだけを監視していれば,ぶどうの虫害を予防,早期に発見できるのです」と…何世紀にもわたって獲得した農民の深い防疫の知恵を垣間見た思いであった.

 このような話は以前にも聞いてはいたが,目の当たりにその効用を聞かされたとき,なにごとであれ「われわれは,早く知り,対処したいのだ」という願望の強さこそが文明,文化の発展の律速なのか,との感慨を禁じえなかった.

 事足りた今,「健康と長寿」が国民の最大の関心事であり,セルフメディケーション,すなわち,自分の体は「自己責任」で健康管理をする,とはいわれつつも,勤務状況から病院に行く時間のない人々が多いのが現状であり,また,前立腺癌・婦人科・性病関連の疾病で病院に行くにはその敷居が高いことも事実である.

 加えて,国民皆保険とはいえ,保険診療の自己負担比率は今後も向上していくとみられ,いつまでも保険診療のほうが経済性に優れるとはいえない時代が到来しつつある.

 このようないわゆる「社会現象」の変遷のなかに浮上してきたのが,「いつでも,どこでも,より早く」自己の健康状態または疾病の有無を「数値」と「医療機関のコメント」付きで知り,対処することができ,しかも,異常値を得たときは提携先の専門病院への受診勧告と紹介状を得られる「郵送健診」といえよう.

 なお,この郵送健診は,歴史的には植田らが1986年に開始した「大腸がん郵便検診(R)システム」にそのルーツを求めることができる1)

尿検査トイレの開発

永田 英樹 , 兼国 伸彦 , 山﨑 洋式 , 吉積 宏治

pp.1540-1548

 1.はじめに

 わが国では急速な高齢化社会の到来とともに,食事の欧米化,また交通機関の発達による徒歩の機会の僅少化がすすみ,過食や運動不足などの生活環境の変化が一因となって,生活習慣病が急激に拡大してきたことは周知の事実である.厚生労働省の統計1)によれば,生活習慣病の代表格である高血圧症の入通院患者は699万人,糖尿病は228万人といわれている.また,2002年の厚生労働省による糖尿病実態調査2)によれば,糖尿病が強く疑われる人は740万人,糖尿病の可能性を否定できない人は880万人にのぼり,生活習慣病全体を考えると,中高年以上では2割以上の人が生活習慣病の患者またはその予備軍と考えられる.

 生活習慣病が国民病といわれるような状況にあって,旧厚生省は2001年に21世紀の国民健康づくり運動「健康日本21」をスタートさせ,国民の生活習慣病に対する予防意識の向上を呼びかけている.この「健康日本21」の効果もあってか,今年の8月に社団法人日本病院会が発表した全国886施設を対象に行った人間ドック受診者数調査の結果3)では,高血圧症,高脂血症,肥満などの生活習慣病に関連する異常所見者数が,この十年間で初めて減少に転じた.国民の生活習慣病に対する予防意識が向上している証であれば,大変喜ばしいことである.

 TOTOでは,糖尿病が国民に広がっている状況に鑑み,「健康日本21」を支援する製品として,トイレの便器に後付けし,尿糖値が簡単に自己測定できる在宅用尿糖検査機を開発し,1999年9月に発売した.この製品は,主として糖尿病境界型(予備軍)の患者を対象にし,在宅または職場での活用を意図した糖尿病予防支援機器である.さらにTOTOでは,高血圧症またはその予備軍の患者が,在宅での食事療法に活用できる尿塩分検査機の開発を進めている.この装置は,尿への塩分排泄量をトイレで簡単に測定可能とするもので,日本人にありがちである過剰な食塩摂取量を低減させることに貢献できると考えている.本稿では,これらTOTOで開発した,または開発中であるトイレ設置の尿検査機について紹介したい.

 一方,TOTOが保有するトイレ周りの技術を集結し,医療施設の入院または通院患者の尿流率をトイレで簡単に測定できる技術や,蓄尿を改善するトイレも開発中であり,話題提供として,これについても簡単に触れたい.

保健所におけるHIV抗体即日検査

一色 ミユキ , 塚田 三夫 , 潮見 重毅

pp.1549-1551

 1.はじめに

 近年,全国のHIV感染者の報告数は増加しているが,保健所のHIV血中抗体検査(以下「HIV検査」)の受検者は,無料匿名検査であるにもかかわらず,減少してきている.一方,厚生労働省「HIV検査体制の構築に関する研究班」(以下「研究班」)と民間クリニックとの共同によるHIV即日検査(検査当日に検査結果を通知する試み,以下「即日検査」)の試験的な実施結果によると,多数の受検者がみられているとのことである.

 これらのことから,HIV検査の受検数減少は,検査方法が,PA法+WB法(以下「従来法」)であって,採血から検査結果通知まで一週間程度を要していたことに一因があるのではないかと考えることができる.HIV感染の予防のためには,HIV検査に即日検査を導入することを検討すべき状況といえる.

 栃木県の保健所においては,1992(平成4)年から週1回従来法によって実施し,2000(平成12)年からは同時に受けられる検査として梅毒とクラミジアの抗体検査を追加したが,受検数は減少傾向にあった.そこで,2003(平成15)年1月から,研究班との共同研究事業として,全国初の保健所における即日検査を県南保健所(県南健康福祉センター)において実施したので,従来法との相違などについて述べる.

今月の表紙 臨床生理検査・画像検査・11

頸動脈

小野 倫子

pp.1492-1494

 頸動脈超音波検査は主に動脈硬化判定の目的で行われる.頸動脈を血管の窓として全身の動脈硬化度を推定したり,虚血性脳血管障害の原因病変を同定することが可能である.

 なお,検査の体位や画像の表示方法は施設により異なっているが,当施設では,体位は仰臥位を,画像表示は横断面では被験者の左側が,縦断面では尾側が画像の右となる表示方法を採用している.

コーヒーブレイク

私と看護婦(師)さん

屋形 稔

pp.1526

 最近母校の病院に検査入院というのを勧められて2泊3日を新装成った病院で生活した.機械化された設備にも驚いたが,従来私達のみてきた看護婦諸嬢は看護師と称して名前ばかりでなく中身も進化した印象を受けた.挨拶にきた看護師長なる女性はオバさんのように馴染んだ婦長さん風でなく,颯爽としたインテリ代表のごとき女性であった.

 検査技師諸君は当初から名前は変らないが,私の接していた頃とはイメージや中身も進展しているに違いないと確信した.時代が人を変えるのか人が時を動かし変えるのかは判然としない.約半世紀前頃はじめて米国の病院に留学した頃,日本と様変りで医師と対等に働くコメディカルスタッフの姿に感銘を受けたが,日本も自然とそのような姿に変ってきたものに違いない.

鉄欠乏性貧血の隠れたピットホール

寺田 秀夫

pp.1572

 日常最も多い貧血は周知のごとく女性に主としてみられる鉄欠乏性貧血です.

 成長発育期にある幼少児から中学生,あるいは妊婦や授乳をしている女性は,成人男子が1日に必要とする鉄分量(1mg)の2~3倍も必要なのに,それが食物から十分補充されないからです.若い女性などで太らないための節食(朝食抜きなど)やポテトチップスなどのスナック菓子を食べ過ぎて,食事のバランスがくずれるために起こります.また月経過多,子宮筋腫,慢性の痔出血なで鉄分が体外によけいに排出されても鉄欠乏性貧血がみられます.特に女性の生理は毎月30~60mlの血液を失い,これは鉄量にすると1日約1mgに当たります.一般に月経量が80mlを超すと貧血になるといわれています.

シリーズ最新医学講座・Ⅰ 転写因子・11

転写因子と糖尿病

小田 夏奈江 , 北野 宏明 , 村松 正明

pp.1553-1564

はじめに

 近年,食生活の欧米化と社会環境の変化に伴い,わが国においても糖尿病が年々増加の一途をたどっている.厚生労働省の糖尿病実態調査(2002年11月実施)によると,「糖尿病が強く疑われる人(糖尿病治療中またはHbA1c 6.1%以上)」が約740万人,「糖尿病の可能性を否定できない人(HbA1c5.6%以上6.1%未満)」が約880万人にものぼり,合計で約1,620万人,まさに国民の8人に1人は糖尿病または糖尿病予備軍ということになる.

 また,久山町Study,舟形町Studyなどの大規模な疫学調査の結果,わが国における死亡原因の第1位を占める心血管疾患の大きな危険因子として,糖尿病が挙げられている.

 このような状況のなか,最近の遺伝学的手法や発生工学的手法の進歩により,次々と疾患に関連する遺伝子が同定されてきており,糖尿病においても例外ではない.本稿では,糖尿病関連遺伝子のなかでも特に転写因子に焦点を当て概説する.

シリーズ最新医学講座・Ⅱ 病理診断に役立つ分子病理学・11

細胞診標本を用いた癌の遺伝子診断

津田 均

pp.1565-1571

はじめに

 癌の細胞診断は各種の臓器でその診断体系が確立しているが,一部の臓器や検体ではいまだに診断が難しいものがある.一方,病理診断がそうであるように,細胞診断においても良悪性診断や病変の存在診断のみならず,種々の治療適応の決定や治療効果予測などの診断が求められることも予想される.

 近年,癌細胞における数々の遺伝子や染色体変化が明らかにされた.個々の腫瘍はクローナルな細胞の集団であり,その構成細胞間では基本的な遺伝子・染色体変化のパターンは原則的に同一である.これらの情報を個々の癌の指紋として利用し,細胞診標本に応用すれば,従来以上の豊富な情報が得られ診療上有用であろう.特に,形態学的に細胞診断のみでは不十分とみられる領域の検体に対して,遺伝子・染色体検索で異常細胞の有無やその由来を定量的かつ客観的に診断できれば,細胞診との補完で正確なスクリーニングや診断が可能となる.本稿では固形癌のなかから,乳腺,子宮内膜,喀痰,尿,糞便,体腔液,子宮腟部,膵液・胆汁に関し,諸家の研究成果を示し,今後の診療適用について展望と問題点について考えてみたい.

トピックス

白癬菌Trichophyton tonsuransの急速な感染拡大

望月 隆 , 長谷井 麻希 , 田邊 洋

pp.1573-1576

 1. はじめに

 Trichophyton tonsuransは1990年代から北アメリカ,スウェーデン,韓国,ドイツにおいてレスリング,柔道競技者の白癬の集団発生の原因菌として知られていた.しかしわが国での確認は遅く,2002年以降,高等学校レスリング部員や柔道部員の間に本菌による白癬の集団発生が生じていることが報告された1~3).その後,高等学校や大学の強豪チームに限られているかにみえた感染が,社会人,中学生や中堅チームに拡大していること,その分布もすでにほぼ全国に拡がっていることが明らかになった.さらに最近では家族に2次感染を起こした例も報告されている.この状況では流行の制圧は皮膚科医の能力のみでは困難で,臨床検査施設,真菌研究者,各種競技団体,行政や学校が協力して対策をたてる必要があるといえる.本稿ではT. tonsurans感染症の典型的臨床像を提示するとともに,本症の診断に必須である真菌同定法について解説する.

caspase-9とALS

井上 治久 , 高橋 良輔

pp.1577-1580

 1. はじめに

 近年,アポトーシスが,種々の神経変性疾患に深くかかわっていることが明らかになってきている.なかでも脊髄運動ニューロンが障害される筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis;ALS)1)の研究においては,1993年家族性ALSの遺伝子が同定され2),翌年モデルマウスが作製3)されて以降,飛躍的にアポトーシスとの関連を支持する知見が累積しつつある.また,最近ではALSにおける異常蛋白質とミトコンドリアの関連が注目されている.

 本稿では,ALS研究の最近のトピックを,アポトーシス実行分子であるcaspaseと呼ばれる蛋白質分解酵素のうち,ミトコンドリア依存性アポトーシスのカスケードの最上流に位置するcaspase-9に焦点を当てて述べる.

研究

ベーチェット病におけるリンパ球サブセットの測定

山田 利津子 , 山中 功一 , 橋本 康一 , 藤江 一 , 上野 聰樹 , 山田 誠一

pp.1581-1585

〔SUMMARY〕 ベーチェット病(BD)およびサルコイドーシス患者において血中CD4,CD8陽性T細胞数ならびにCD4/CD8比について検討した.CD4,CD8陽性T細胞数はフローサイトメトリー全血法で行った.

 BDおよびサルコイドーシスでは血中CD4,CD8陽性T細胞数とCD4/CD8比の減少が観察された.CD4陽性T細胞数500/μl未満の患者は,BD40.6%・サルコイドーシス50.0%,CD4/CD8比0.9未満は,BD34.4%・サルコイドーシス15.7%であった.BD患者では,血中CD4陽性T細胞数とCD4/CD8比がともに減少する場合は有意に(p<0.05)眼病変の活動性があることが示された.

学会だより

第45回日本臨床細胞学会総会 真夏の熱き学会

海野 みちる

pp.1586

 日本臨床細胞学会の全国レベルの学術集会は春と秋に行われる.春期大会(総会)は今回で第45回目で,NPO法人としての最初の学術集会であった.会期は2004年7月8日から11日までの4日間で,東京の京王プラザホテルおよびファーストウエストビルで開催された.例年は5月から6月初旬にかけて行われるが,4月に国際細胞学会(チリ・サンチャゴ)が開催されたためこの時期になった.今回のテーマは“ポストゲノム時代―癌診断に向けての細胞形態学新戦略”であった.うだるような暑さとスコールのような雷雨が連日続いたが,会場内は別世界で知識や技術を高める者,また国内・海外への交流を深める者たちであふれていた.

 要望講演のベッドサイドでの細胞診は,入り口から人があふれんばかりの盛況ぶりであった.ベッドサイドや超音波ガイド下でリアルタイムに迅速細胞診断を行い,検体の採取状況の良悪や悪性の疑いを示唆するようにしているとの発表であった.細胞検査士が臨床と接することは,患者情報を目や耳で確かめることのできる唯一の機会となる.しかし,病理細胞診検査室の事情により臨床科がすべての処理を行い,ほかの検査同様検体のみが提出される施設が多くなっているのが現状である.今回の発表はこれに逆行し,病理細胞診検査室も能動的に変わるべきであることの大切さを示唆した.待つ検査から出向して迅速に結果を出す出張診断への移行がうかがわれた.術中迅速診断においても,この体制が可能であれば,無用な手術の可否の早期決定ができ,時間の短縮と患者への負担軽減にもつながると思われた.

資料

尿中電解質のコンパクトイオンメータでの測定

山末 耕太郎 , 杤久保 修

pp.1587-1590

〔SUMMARY〕 高血圧予防,治療のために重要な食塩(Na)とカリウム(K)摂取量の管理のため,尿中排泄量を簡単に精度よく,安価に測定できる装置を検討してきた.工業分野で使用されている堀場製作所製カードタイプのコンパクト塩分計C-121とカリウムイオンメータC-131は原尿で使用すると値が低めにでるが,比較対照法による測定値との相関係数は高いので,回帰式で補正すれば尿のNaとK測定にも使用可能と思われる.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

64巻12号(2020年12月発行)

今月の特集1 血栓止血学のトピックス—求められる検査の原点と進化
今月の特集2 臨床検査とIoT

64巻11号(2020年11月発行)

今月の特集1 基準範囲と臨床判断値を考える
今月の特集2 パニック値報告 私はこう考える

64巻10号(2020年10月発行)

増刊号 がんゲノム医療用語事典

64巻9号(2020年9月発行)

今月の特集1 やっぱり大事なCRP
今月の特集2 どうする?精度管理

64巻8号(2020年8月発行)

今月の特集1 AI医療の現状と課題
今月の特集2 IgG4関連疾患の理解と検査からのアプローチ

64巻7号(2020年7月発行)

今月の特集1 骨髄不全症の病態と検査
今月の特集2 薬剤耐性カンジダを考える

64巻6号(2020年6月発行)

今月の特集 超音波検査報告書の書き方—良い例,悪い例

64巻5号(2020年5月発行)

今月の特集1 中性脂肪の何が問題なのか
今月の特集2 EBLM(evidence based laboratory medicine)の新展開

64巻4号(2020年4月発行)

増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見

64巻3号(2020年3月発行)

今月の特集1 Clostridioides difficile感染症—近年の話題
今月の特集2 質量分析を利用した臨床検査

64巻2号(2020年2月発行)

今月の特集1 検査でわかる二次性高血圧
今月の特集2 標準採血法アップデート

64巻1号(2020年1月発行)

今月の特集1 免疫チェックポイント阻害薬—押さえるべき特徴と注意点
今月の特集2 生理検査—この所見を見逃すな!

63巻12号(2019年12月発行)

今月の特集1 糖尿病関連検査の動向
今月の特集2 高血圧の臨床—生理検査を中心に

63巻11号(2019年11月発行)

今月の特集1 腎臓を測る
今月の特集2 大規模自然災害後の感染症対策

63巻10号(2019年10月発行)

増刊号 維持・継続まで見据えた—ISO15189取得サポートブック

63巻9号(2019年9月発行)

今月の特集1 健診・人間ドックで指摘される悩ましい検査異常
今月の特集2 現代の非結核性抗酸菌症

63巻8号(2019年8月発行)

今月の特集 知っておきたい がんゲノム医療用語集

63巻7号(2019年7月発行)

今月の特集1 造血器腫瘍の遺伝子異常
今月の特集2 COPDを知る

63巻6号(2019年6月発行)

今月の特集1 生理検査における医療安全
今月の特集2 薬剤耐性菌のアウトブレイク対応—アナタが変える危機管理

63巻5号(2019年5月発行)

今月の特集1 現在のHIV感染症と臨床検査
今月の特集2 症例から学ぶフローサイトメトリー検査の読み方

63巻4号(2019年4月発行)

増刊号 検査項目と異常値からみた—緊急・重要疾患レッドページ

63巻3号(2019年3月発行)

今月の特集 血管エコー検査 まれな症例は一度みると忘れない

63巻2号(2019年2月発行)

今月の特集1 てんかんup to date
今月の特集2 災害現場で活かす臨床検査—大規模災害時の経験から

63巻1号(2019年1月発行)

今月の特集1 発症を予測する臨床検査—先制医療で5疾病に立ち向かう!
今月の特集2 薬の効果・副作用と検査値

62巻12号(2018年12月発行)

今月の特集1 海外帰りでも慌てない旅行者感染症
今月の特集2 最近の輸血・細胞移植をめぐって

62巻11号(2018年11月発行)

今月の特集1 循環癌細胞(CTC)とリキッドバイオプシー
今月の特集2 ACSを見逃さない!

62巻10号(2018年10月発行)

増刊号 感染症関連国際ガイドライン—近年のまとめ

62巻9号(2018年9月発行)

今月の特集1 DIC診断基準
今月の特集2 知っておきたい遺伝性不整脈

62巻8号(2018年8月発行)

今月の特集 女性のライフステージと臨床検査

62巻7号(2018年7月発行)

今月の特集1 尿検査の新たな潮流
今月の特集2 現場を変える!効果的な感染症検査報告

62巻6号(2018年6月発行)

今月の特集1 The Bone—骨疾患の病態と臨床検査
今月の特集2 筋疾患に迫る

62巻5号(2018年5月発行)

今月の特集1 肝線維化をcatch
今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら