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シリーズ最新医学講座・Ⅰ 転写因子・12
エピジェネティクス制御とその異常
著者: 古海弘康1 佐々木裕之12
所属機関: 1情報・システム研究機構国立遺伝学研究所 人類遺伝研究部門 2総合研究大学院大学 生命科学研究科遺伝学専攻
ページ範囲:P.1673 - P.1679
文献購入ページに移動エピジェネティクス(epigenetics)とは「DNA塩基配列の変化を伴わずに子孫や娘細胞に伝達される遺伝子機能の変化と,この現象を探求する学問」と定義され1),その語源から「後成遺伝学」と訳される場合もある.エピジェネティクスが近年注目を集めるようになったのは,ゲノムに記された遺伝情報の発現制御への重要な役割が認識されるようになったためである.エピジェネティクスは発生,老化,癌化など,様々な生命現象や病気と関連している2)(図1).
生命現象の基盤となる遺伝情報の発現は,DNA→RNA→蛋白質という直線的な図式に,いつどこで働くのかというダイナミックな視点を加えてこそ理解できる.エピジェネティクスはそのようなダイナミックな視点の1つであり,その研究の進展により複雑な生命現象の理解が深まることが期待される.臨床的にも新たな病因解明,診断につながる可能性を秘めた重要な分野である.本稿では,エピジェネティクス制御機構を概説し,その異常による疾患や解析法について述べる.
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