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今月の主題 薬物代謝酵素の遺伝的多型―特に個別化薬物治療を目ざして 話題
ヘリコバクターピロリ除菌とCYP2C19の遺伝子多型―現実に臨床応用されている例として
著者: 櫻井眞治1 石崎高志1
所属機関: 1熊本大学大学院医学薬学研究部薬物治療設計学講座薬物治療学分野
ページ範囲:P.194 - P.198
文献購入ページに移動ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori;H. pylori)感染者は我が国で約6千万人,全世界では20億人以上(人口の約50%)と推定されている.H. pyloriは胃・十二指腸潰瘍や胃癌などの上部消化管疾患に関連することが明らかになってきており,H. pyloriの除菌は上記疾患の治療における重要な戦略の1つである1,2).近年のH. pylori除菌法としては,プロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitors;PPIs)1剤に抗生物質2剤(アモキシシリン,クラリスロマイシン)を合わせた3剤療法が主流である.一方,医薬品の薬効,副作用には個体差が存在し,その大きな要因としてチトクロームP450(CYP)をはじめとする薬物代謝酵素の遺伝子多型に伴う薬物代謝能の個体差が重要である3,4).PPIsもその薬物動態がCYP2C19の遺伝子多型の影響を受けることで治療効果に個体差を生じる.H. pyloriは一度除菌が完了してしまえば再感染がほとんど起こらないこと,上記のごとく世界的に高い感染率を示すことから,本菌を効率的に除菌することは,長期の薬剤投与を防ぎ,世界的な医療費削減につながると考えられる.本稿ではCYP2C19遺伝子多型解析のH. pylori除菌療法における有用性および医療経済への効果について筆者らの私的見解を述べる.
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