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雑誌詳細

文献概要

今月の主題 アルブミン 話題

口腔健康指標としての血清アルブミン

著者: 葭原明弘1 宮﨑秀夫1

所属機関: 1新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座口腔保健推進学分野

ページ範囲:P.567 - P.570

 1. はじめに

 1) 歯科における2大疾患

 歯科における2大疾患はう蝕と歯周病である.う蝕は,生体で最も石灰化度の高い歯の硬組織が,限局性かつ進行性に破壊されて生じる疾患である.それは,歯のエナメル質表面が蓄積された有機酸により脱灰することから始まる.脱灰が進むと,二次的にエナメル質の有機性基質が破壊されう窩が生じる(図1).他方,歯周病は,その病変の主体は炎症であるが,萎縮も含まれる.歯周病は,大別して歯肉炎と歯周炎の2つに分けられる.歯肉炎は歯肉にのみ炎症病変が生じたものであり,歯周炎は歯肉に初発した炎症が歯根膜や歯槽骨など深部歯周組織におよび,歯の支持機能喪失につながる(図2).それぞれ,歯,歯周組織等に付着しているバイオフィルム(歯垢)中に生息する病原菌が原因で発症・進行する.

 2) 歯科疾患と血清アルブミン

 歯科学の分野では,今まで,アルブミンの歯質への影響を評価した基礎的な研究はあるものの1,2),血清アルブミン値を臨床指標として応用することはいまだ一般的ではない.しかし,昨今,歯科疾患と全身的な健康状態との関連を評価する調査のなかで,全身的な健康指標として血清アルブミンを採用し,歯科疾患との関連をみる試みが行われている.われわれは,う蝕や歯周病の発症には低栄養や慢性感染症の存在が影響すると考えており,血清アルブミン値が歯科疾患のリスクマーカであるとの仮説を設定している.

 本稿では,話題提供として,われわれが行った最近の調査について紹介したい3)

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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