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シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・9
データーの整理・報告書など分析終了後のポイント
著者: 宮城博幸1 牧野博1 吉澤美枝1 司茂幸英1 江上照夫1 梶原正弘2 大西宏明3 渡邊卓3
所属機関: 1杏林大学病院中央検査部 2杏林大学医学部法医学教室 3杏林大学医学部臨床検査医学教室
ページ範囲:P.1247 - P.1255
文献購入ページに移動薬毒物検査の分析レベルは大きく分類して3つ存在する.搬送時にトライエージや各種キットを用いて簡易的に施行するスクリーニング検査,次にこのスクリーニング検査の結果を受けて薬物を特定する定性検査(例えばトライエージでBAR陽性を示した検体について,どのバルビタール酸なのかを特定する場合),最後にその薬物の濃度を明らかにする定量検査(前述の検体でフェノバルビタールと同定後,この薬物の血中濃度が25μg/mlであるというような数字データーまで求められる場合)である.例えば,当院3次救急外来に急性薬物中毒(誤用,乱用を含む)疑いで搬送されてくる症例を例にとって示す(表1).3次救急患者全体の約10%,年間200件前後の症例が薬物中毒疑いである.その症例のほとんどに対して当院薬毒物分析室(以下分析室)では何らかの分析を行い,結果報告を行っている.図1に過去3年間のREMEDi-HSによる分析結果を示す.このグラフからわかるように,当院における中毒起因薬物のほとんどが抗うつ薬や抗精神病薬などの精神神経作用薬であり,中毒の原因も精神疾患や自殺を目的とした症例が多数を占めている.このような症例の多くは,初期治療として胃洗浄・腸洗浄・活性炭投与などを行い,意識レベルの低下を認めなければ,多くの場合翌日には救命センターから退出あるいは退院することになる.また,服薬情報も本人(あるいは家族)から聴取されることが多いため,薬毒物分析としてはスクリーニング検査のみで済むケースが多く,特に起因薬物の同定検査を必要としない症例が全体の70%を占めている.一方,原因不明の意識障害や説明のつかない代謝異常,酸塩基平衡障害などの症例では迅速な中毒起因薬物の同定が必要になる.また,血中濃度により,治療方針が変わるアセトアミノフェンなどの場合は可能な限り定量検査まで施行する必要がある.
今回は,この3つの分析レベルの解釈のポイントと,結果を報告する際の注意点,データー整理のポイントなどについて,述べてみたいと思う.
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