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文献詳細

雑誌文献

臨床検査49巻12号

2005年11月発行

文献概要

特集 臨床検査のための情報処理技術の進歩

序文 臨床検査のための情報処理技術の進歩

著者: 市原清志1

所属機関: 1山口大学医学部保健学科病態検査学

ページ範囲:P.1279 - P.1280

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 近年の急速な技術革新により,臨床検査の世界は瞬く間に大きく様変わりした.すでに自動化が進んでいた基本的な化学検査に加え,凝固検査や免疫血清検査や超微量分析法であるイムノアッセイまでもが全自動化されるようになった.また単に自動化の範囲が拡がっただけではなく,測定装置や測定系の改良により高感度化・高精度化が進み,より低い濃度をより微量な検体量で,しかもより迅速に測定可能となった.さらには検体搬送システムの急速な普及で,自動分析装置間で検体がベルトに乗って流れるようになり,検査業務に必要な人員数は明瞭に減少した.この省力化は,検体前処理システムの導入により,血清の遠心分離や試料分注といった領域にも及ぶようになった.このような,めまぐるしい進歩が瞬く間に起こった背景に,情報技術(information technology;IT)の進歩があったことは言うまでもない.確かに,産業革命以来,技術革新は恒常的に起こっているとはいえ,ひと昔前の技術進化は5年や10年単位であったものが,いまや過去10年のそれが1年や2年単位にスピードアップしている.これはまさにコンピュータのハード・ソフト両面での革命的な進化の賜である.またインターネットを介して世界規模でリアルタイムに情報を共有できるようになったことも,予想外に速い技術革新や情報活用の気運を高めている.

 このような大きな時代の流れから,臨床検査室における検査技師の役割も大きく変遷しつつあり,今求められているのは,①検査だけではなく,臨床の現場をよく知りチーム医療の一員として活躍できる能力,②検査診断学に精通し,それをもって臨床支援できる能力,③高度にシステム化された検査室の情報を的確に制御し,その情報資源を有効に活用できる能力などである.このうち,③の能力は,臨床検査室の現場で強く求められながら,その人材は極めて乏しく,臨床検査分野における情報技術の現状と将来を見据えた対応策が必要と考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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