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特集 臨床検査のための情報処理技術の進歩 5章 バイオインフォマティックス
3. 配列情報の解析法
著者: 荻島創一1 松前ひろみ1 田中博2
所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所生命情報学 2東京医科歯科大学大学院情報医科学センター
ページ範囲:P.1519 - P.1523
文献購入ページに移動2003年にヒトゲノムの解読が完了するなど,様々な生物種のゲノム情報,さらには,トランスクリプトーム,プロテオームなどのオミックス情報の蓄積が進む今日,配列情報の解析はこれらオミックス情報の解析の基礎をなすものとして非常に重要である.
配列情報の解析は,DNAの塩基配列の決定が進むに従い,1960年代後半からなされるようになり,木村資生の中立進化説1)に基づく分子進化学が生まれ,成功を収めた.1980年代に入ると,Sanger法などDNAの塩基配列の決定技術の進歩による配列情報の増大と,ムーアの法則注1)で呼び表される計算機の指数関数的な高性能化により,生命情報学(Bioinformatics)と呼ばれる新しい分野が生まれ,配列整列を基礎に,相同性検索や多重配列整列,遺伝子発見,細胞内局在予測,モチーフ検索・発見をはじめとした,様々な配列情報の解析法が研究されてきた2).
配列情報の解析法は,基本的に,相同性と規則性を手がかりにするものである.相同性とは,生物が共通祖先から進化してきたことから,配列が共通の祖先をもつことである.配列セット中に何らかの相同性を見いだすことができれば,共通の祖先をもつ配列は同じ機能をもつことが期待されるため,例えば,未知遺伝子の機能予測につながる可能性がある.一方,規則性は,配列がもつ特徴的なパターンであり,配列中に何らかの規則性を見いだすことができれば,例えば,真核生物におけるエキソンとイントロンの境界の配列に規則性を見いだすことができれば,真核生物のゲノムについてエキソン-イントロン構造の予測につながる可能性がある.
具体的には,相同性を手がかりとする解析には相同性検索や多重配列整列が,規則性を手がかりとする解析には遺伝子発見や細胞内局在予測などが挙げられる.また,その両方を手がかりとする解析にはモチーフの検索・発見などが挙げられる.本稿では,こうした配列情報の解析について,まず,配列整列,動的計画法,相同性検索,多重配列整列,分子進化系統樹の推定について解説する.
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