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特集 臨床検査のための情報処理技術の進歩 6章 画像情報・波形情報の解析法
5. 超音波カラードプラ法とその画像解析アルゴリズム
著者: 近藤祐司1 谷口信行2
所属機関: 1アロカシステムエンジニアリング株式会社 2自治医科大学臨床検査医学
ページ範囲:P.1563 - P.1569
文献購入ページに移動ドプラ法による断層像という意味の“ドプラ断層”の研究は30年ほど前から行われている1,2).当初はMモードだけの表現であったが3),これをBモードで実現できたのは,デジタル化技術の進歩が大きく寄与していると言えよう.デジタル素子の開発は超音波機器にDSC (Digital Scan Converter)の導入を可能にし,また,DSCはカラーモニターを使用することによる色表現も可能にした.デジタル化に伴い高性能なAD変換器(Analog to Digital変換器)が登場し,高容量のメモリが競うように市場に投入された.これら周辺環境の発展によって,今日のようなマイコンやDSP(Digital Signal Processor)の登場を待たずしてもカラードプラ開発が可能になったと言うことができる.
カラードプラ法は1982年に技術発表され4,5),その翌年には製品が販売された.当時ドプラ法と言うと,いわゆるパルスドプラ法の解析方法がFFT化されスペクトラム表現がようやく可能になったところであった.しかしながら,このスペクトラムドプラ法は使用方法が難しいことや表示データの解釈が難解であるがゆえに,一部の専門家にしか使われていなかった.研究対象としては重要視されていながらも,広く普及させるには心臓の中の血流状態を一目で把握できるような,直感的に受け入れられるドプラ法が切望されていた.臨床家のこうした期待と技術の発展がちょうどよく歩調をそろえたことが,技術発表からわずか1年での製品化を導いたものと思われる.いわばM (Medical)とE (Engineering)の思惑が一致して開発が進められた好例であろう.そして,カラードプラ法が認知されるとともに,専門機器であったスペクトラムドプラ法も必須の機能として受け入れられ普及することになった.
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