icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査49巻12号

2005年11月発行

文献概要

特集 臨床検査のための情報処理技術の進歩 6章 画像情報・波形情報の解析法

7. 細胞診の自動化のアルゴリズム

著者: 山内一弘1

所属機関: 1PCLジャパン病理・細胞診センター細胞診断部

ページ範囲:P.1577 - P.1583

文献購入ページに移動
はじめに

 Papanicolaou GNによって,細胞による診断方法の可能性が報告されてから70年が経過し,また,vaginal smearの染色法が発表されてから今日まで60年近い歳月が流れた.この間,固定・染色された細胞を人が顕微鏡を用いて検査(検鏡)し判定するという原則には変化がなかったが,細胞採取法や細胞収集法の開発,染色,封入の機械化から,最新の知見に基づく細胞形態の認識に至るまで,それぞれの分野で細胞診の基本的,技術的な進歩がもたらされてきた.しかしながら近年,細胞診自動化の装置の開発が進み,それが実用化の域に達すると,ついには細胞診の根本原則にも変更が加えられるようになり,いよいよ細胞診の世界にも新しい潮流が起こり,その流れは勢いを増して新しい世紀へ突入している.

 細胞診自動化の究極の目的は機械的に最終判定を行うことにあろうが,そのような完遂型の装置開発にはこれまで著しい困難を伴ってきた.そこで画像解析に優れて連続作業が可能な装置と,判断能力に優れている人間とのそれぞれの長所を有効に生かして,実務的な細胞診断装置を開発するという方向に近年基本姿勢の転換が行われた.そこでは,悪性および異型細胞を拾い出すという過去の設計方針から,異常でない細胞を分別・除外するという方針に改められ,異常の可能性のある場合には,その検鏡を人に委ねられることになった.

 1955年の米国CYTOANALYZERをはじめとして,いろいろな機器が開発発表されてきた.日本においても1960~1980年代細胞診断自動化研究班が活発に研究されていたが,実用化されたのは田中昇グループのCYBESTのみであった(表1).

 このような細胞診自動化装置は,これまでの細胞診精度への疑問を背景に,米国で受け入れられ,既に1985に年Food&Drug Administration(FDA)の承認を得て,現在実用化の時代を迎えている.わが国においても,既に1980年代より導入され,現在一部の施設において実用化され使用されている.

参考文献

1) Wied GL:Cytopathology of the uterine cervix.子宮頸部細胞病理学(高浜素秀,杉下匡 訳).医歯薬出版,1995
2) 田中昇:細胞診断自動化のための基礎的データ収集・解析と自動化装置の試作.臨床病理 21:757-768, 1973
3) 田中昇:臨床検査部門中央化システム立ち上げの初期の頃から.臨床病理 49:303-312, 2005
4) International Academy of Cytology:Specification for automated cytodiagnostic systems proposed by IAC. Acta Cytol 28:352, 1984
5) Proposed Guidelines for Primary Screening Instruments for Gynecologic Cytology:Developed by the Intersociety Working Group for Cytology Technologies. Acta Cytol 41:924-943, 1997
6) Automated Cytology. Acta Cytol 43:13-88, 1999
7) 山内一弘:細胞診の新しい展開.産婦人科の実際 49:425-431, 2000

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?