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文献詳細

雑誌文献

臨床検査49巻13号

2005年12月発行

文献概要

シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・10

情報収集とネットワーク

著者: 福本真理子1

所属機関: 1北里大学薬学部臨床薬学研究センター中毒部門

ページ範囲:P.1723 - P.1729

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はじめに

 臨床検体の薬毒物分析をする際,重要な情報は何かを考えると,中毒患者から得られる臨床情報と,対象となる起因物質に関する中毒情報の2つに分けることができる.検体採取の際収集される患者情報とは,中毒発生日時と状況,その後の症状,処置,搬入時の状況,検体採取時刻と薬毒物摂取後推定経過時間,中毒起因と推定される物質の情報,蘇生室でのスクリーニング検査の実施の有無と結果などであり,直接検査部での分析結果を左右するわけではないが,分析結果を評価し,次の段階の分析の方向性を決断するうえで重要な情報である.しかし,蘇生室の主治医やスタッフが知り得たそれらの情報が,必ずしも,検体とともに情報として検査部まで届くとは限らず,緊急処置の中,診療録にも記録が残らない場合も多々見られる.せっかくの分析結果を診断や治療に活かすために,各施設では中毒患者検体用の依頼書や中毒カルテ(本シリーズ1を参照)を決め,情報の記録保管に努めたり,定期的に救急スタッフと分析担当者とのカンファレンスを行ったりする工夫がなされている.中毒医療の診断,治療にかかわるすべてのスタッフにとって重要な患者情報と分析結果の記録と活用は,施設全体のシステムの課題であり,薬毒物分析担当者としてその必要性を強く提言していく努力が必要である1)

 本シリーズでは,特に「1.検体採取から保存まで」2)の項に患者情報の取り扱いについて具体例が詳細に紹介されていることから,本稿では,起因物質に関する中毒情報について限定して解説する.薬毒物分析の担当者として,専門性を磨くために備えておくとよい中毒情報や,分析業務に有用な化学物質に関する情報源やツールを紹介し,さらに分析業務の向上のために活用できる講習会や学会,ネットワーク作りについて解説したい.

参考文献

1) 福本真理子:薬物分析と薬剤師.月刊薬事 43:2641-2653, 2001
2) 真名子順一,秀島理沙,長谷一憲,他:臨床現場における薬毒物検査の実際・1検体採取から保存まで.臨床検査 49:333-341, 2005
3) 福本真理子:毒物事件と代表的な毒物の知識.月刊薬事 43:2211-2224, 2001
4) 「中毒発生時におけるインターネットを活用した中毒原因物質同定のための情報提供体制の構築に関する研究」平成11年度厚生科学研究費補助金(医療技術評価総合研究事業)研究報告書,2000
5) 日本法医学会法医中毒学ワーキンググループ編纂:薬毒物検査マニュアル.1999年
6) 鈴木修,屋敷幹雄編:薬毒物分析実践ハンドブック―クロマトグラフィーを中心として,じほう,2002
7) 広島大学医学部法医学教室編:薬毒物の簡易検査法―呈色反応を中心として,じほう,東京,2001
8) 山戸和貴,福本真理子,小鴨晃:中毒分析に必要な標準物質の入手に関する情報の収集と提供 第19回日本中毒学会東日本地方会(新潟)2004.1.24.中毒研究 17:209, 2004
9) Musshoff F, Padoshc S, Steinborn S, et al:Fatal blood and tissue concentrations of more than 200 drugs. Forens Sci Internal 142:161-210, 2004
10) Uges DRA:Therapeutic and toxic drug concentrations. In Bulletin of TIAFT 26, No.1, Supplement, 1996
11) Opheim KE, Raisys VA:Therapeutic drug monitoring in pediatric acute drug intoxications. Therapeutic Drug Monitoring 7:148-158, 1985
12) Baselt RC, Cravey RH:A compendium of therapeutic and toxic concentrations of toxicologically significant drugs in human biofluids. J Anal Toxicol 1:81-103, 1977
13) McBay AJ:Toxicological findings in fatal poisonings. Clin Chem 19:361-365, 1973
14) Niyogi SK:Drug levels in cases of poisoning. Forens Sci 2:67-98, 1973

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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