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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査49巻5号

2005年05月発行

雑誌目次

今月の主題 マイクロアレイ技術の進歩

巻頭言

マイクロアレイ技術の進歩

前川 真人

pp.471-472

ヒトゲノムプロジェクトがほぼ終了し,ゲノム,トランスクリプトーム,プロテオーム,グライコーム,メタボロームなど,多くのオームという単語がいろいろな特集のテーマとして組まれることが多くなった.これらは探索される対象である.一方,マイクロアレイは探索する技術として広く用いられるようになってきている.DNAやRNAのような核酸だけでなく,抗体アレイ,プロテインアレイなど,対象とされる種類も増えてきている.

 DNAマイクロアレイは昨今では網羅的な研究には欠かせない技術として使用されている.体外診断薬のチップとしても,昨年,ロシュ社のcytochrome P450のDNAチップが開発され,欧米で認可を得ている(詳細は話題,三好の稿参照).この3月には,米国食品医薬品局(FDA)がファーマコゲノミクス・ガイダンスの最終版を発表した(http://www.fda.gov/cder/genomics/default.htm).これには,製薬企業が新薬の臨床試験で患者の遺伝型を解析するデータを任意に提出する手順が掲載されている.さらに,既に表現型との関係の評価が確定している遺伝型については,臨床試験で遺伝型を判別すべきと規定されている.このような状況の中,薬剤感受性の遺伝子情報をマイクロアレイで一括して検査することにより,薬剤の種類や量の決定に役立てるという,いわゆるテーラーメイド医療(オーダーメイド医療,個別化医療)の実用化が加速していくことが期待される.

総論

DNAマイクロアレイ技術の現状と展望

郡司 渉 , 村上 康文

pp.473-481

〔SUMMARY〕 近年,数多くの遺伝子発現解析に使用されているDNAマイクロアレイであるが,数年前までは再現性や感度,精度が低いことが大きな課題であった.これらの問題点を解決すべく,実験工程の最適化やオリゴヌクレオチドプローブの採用によりDNAマイクロアレイの高性能化が進められ,高感度で高精度な遺伝子発現解析が可能になった.また微量な細胞に由来するRNAの遺伝子発現プロファイルを解析する手法も確立されつつある.今後は,DNAマイクロアレイの解析対象が極めて微量な胚内組織,組織検体,受精卵などに大きく拡がり,臨床や医薬など様々な分野へ一層大きな貢献をするものと考えられる.〔臨床検査 49:473-481,2005〕

マイクロアレイ技術に必要な基礎知識

佐々木 博己

pp.483-489

〔SUMMARY〕 マイクロアレイは,約10年ほど前に開発され,20~100merのヌクレオチド,cDNA,数100kbのゲノムDNA(BACクローンDNA)が基盤上に高密度に並べられたチップである.検体DNAやRNAとのハイブリダイゼーションによって,塩基配列の決定,遺伝子変異・SNPの解析,遺伝子の発現量・コピー数の測定およびDNAのメチル化解析といったDNA,RNAの多様な質的および量的変化をゲノムワイドに調べることができる.最近,網羅的な細胞への遺伝子(cDNAやsiRNA)導入に使われたり,クロマチン免疫沈降との組み合わせによって,DNA複製複合体などあらゆる複合体の解析に威力を発揮できることがわかってきた.マイクロアレイの種類と用途や価格を含め,マイクロアレイの基礎を概括する.〔臨床検査 49:483-489,2005〕

各種アレイによる応用研究

ゲノム学的手法による新しい染色体研究の展開

加藤 由起 , 白髭 克彦

pp.491-496

〔SUMMARY〕 ポストシークエンス時代を迎え,個人研究のレベルでゲノム学的な手法を解析上の選択肢の1つとして考えることが可能になった.本稿では,DNAchipを用いた蛋白結合プロファイル解析を例に(ChIP-chip法),ChIP-chip法が染色体研究に与えたインパクトについて概説する.〔臨床検査 49:491-496,2005〕

CGHアレイとその応用―X染色体CGHアレイの作製と実用化

稲澤 譲治 , 水口 真希

pp.497-502

〔SUMMARY〕 ゲノムコピー数異常の検出法の1つとしてComparative genomic hybridization(CGH)アレイ法が開発された.本法は数10キロベース(kb)から数メガベース(Mb)のサイズで起きたゲノムコピー数異常を染色体ワイドに検出できる手法であり,従来法では困難であった癌や遺伝疾患の潜在的なゲノムコピー数異常の検出を可能にする.このCGHアレイ法によって新たな疾患特異的ゲノム異常の発見と,これを糸口にした疾患の原因遺伝子の同定が進むとともに,ゲノム病の診断法としても遺伝医療に貢献するものと予想する.〔臨床検査 49:497-502,2005〕

DNAマイクロアレイを用いたメチル化異常遺伝子の探索

福嶋 敬宜

pp.503-507

〔SUMMARY〕 最近,様々な疾患においてエピジェネティックな異常(主に遺伝子の異常メチル化)が注目されるようになった.本稿では,DNAマイクロアレイを遺伝子メチル化異常の探索に応用する方法の1つを紹介する.遺伝子メチル化は可逆的であり,メチル化阻害剤によって脱メチル化を起こすことができる.培養細胞において,この脱メチル化処理の前後で変動する遺伝子発現をマイクロアレイによって網羅的にとらえれば,その細胞におけるメチル化異常遺伝子リストを作成することが可能となる.ここでリスト化された遺伝子は,その疾患の発生機序や腫瘍の発育進展過程の解明,さらには診断,治療への応用に繋がる可能性を秘めている.〔臨床検査 49:503-507,2005〕

マイクロアレイを用いた疾患感受性遺伝子の同定

山田 和男 , 岩山 佳美 , 吉川 武男

pp.509-515

〔SUMMARY〕 疾患感受性遺伝子の同定においては,連鎖解析から高密度マーカーを用いた関連解析,または機能的候補遺伝子解析へと進むストラテジーがとられてきた.しかし複雑遺伝疾患の解析では,この方法には限界があり,全染色体領域について網羅的に関連解析(whole-genome association study;WGA)を行う必要性が論じられてきた.そして,それが近年のジェノタイピング技術の進歩とともに可能なものとなりつつある.本稿では,いくつかの大規模ジェノタイピング法,中でもマイクロアレイの出現によって疾患感受性遺伝子同定の手法がどう変わっていくか,その可能性と問題点について紹介する.〔臨床検査 49:509-515,2005〕

グリベックに対する薬剤感受性診断

片桐 豊雅 , 中村 祐輔

pp.516-521

〔SUMMARY〕 数千から数万種類の遺伝子の発現変化を網羅的に解析できるcDNAマイクロアレイは,がんの発生,進展のメカニズムを明らかにするのみならず,新たな診断法や治療法の開発に極めて有用である.本稿では,われわれが開発した遺伝子発現情報に基づいた慢性骨髄性白血病(CML)における分子標的治療薬グリベックに対する感受性予測システムとその臨床応用への可能性について概説する.〔臨床検査 49:516-521,2005〕

DNAマイクロアレイによる消化器癌のテーラーメイド医療

嶋田 裕 , 辻本 豪三

pp.522-529

〔SUMMARY〕 消化器癌で考えられるテーラーメイド治療としては①鑑別診断,②予後再発予測,③化学療法または放射線療法感受性予測,④郭清範囲や治療計画の為のリンパ節転移予測が挙げられる.しかしながら,消化器癌ではマイクロアレイに基づくテーラーメイド治療が実践された報告はまだ認められない.今後テーラーメイド医療として成り立つには,マイクロアレイのデータにより患者を振り分けて治療または診断を行う検証が必要である.〔臨床検査 49:522-529,2005〕

DNAマイクロアレイによるHLAジェノタイピング法の開発

柏瀬 貢一

pp.530-538

〔SUMMARY〕 HLA(human leukocyte antigen)はT細胞への抗原提示を担う,免疫反応の中心的な存在である.HLA検査は,移植,HLA適合性血小板輸血で必要不可欠であるとともに,疾患の診断,法医学などにも利用される.HLA遺伝子は多型性が非常に高いのが特徴で,通常のSNPsタイピングと比べタイピングが困難な遺伝子である.近年,多数検体処理能と高分解能を兼ね備えた蛍光ビーズを担体としたHLAジェノタイピング法が開発されたので,その実際を紹介したい.〔臨床検査 49:530-538,2005〕

マイクロアレイを用いた結核菌の検査

林 浩志 , 竹村 一男 , 兒崎 隆純 , 引地 一昌

pp.539-545

〔SUMMARY〕 核酸検査は迅速診断が可能であるため,結核菌などの遅育菌の検出において非常に有用な手段である.特に,マイクロアレイは一度のアッセイで多くの情報が得られるため,発現解析だけでなく,病原性微生物の検出同定・変異検出を行うツールとして有用であると考えられる.われわれは,マイクロアレイ技術を用いて,結核菌をはじめとする抗酸菌群の検出同定・薬剤耐性検出系の開発を行ってきた.診断に応用可能なマイクロアレイ技術の1つとしてご紹介する.〔臨床検査 49:539-545,2005〕

話題

欧州で体外診断薬として承認されたDNAマイクロアレイ

三好 康弘

pp.547-550

1. はじめに

 2004年9月ヨーロッパにて,「AmpliChip CYP450 Test(図1)」が体外診断薬としての認可を得た.これは世界で初めて認可された体外診断用DNAチップである.

 すでに遺伝子検査という枠組みの中で,感染ウイルスの同定や定量,疾患特異的な遺伝子の同定などに,PCR法といった核酸増幅による検査が取り入れられているが,この手法は,基本的には1つの(ないしは数種類の)特徴的な遺伝子を検出することにより判定するものである.これに対しDNAチップとは,数千,数万単位という遺伝子を対象として網羅的な解析を行うことができる手法で,遺伝子の相互作用や,複数の遺伝子から決定される事象に対する判定に効果的である.このDNAチップが,従来までの研究分野での利用から,ついに臨床応用として認められることとなり,今後は多くの遺伝子の情報が必要となる検査・診断を簡便に行うことが可能となると予想される.今回,DNAチップ技術を用いたAmpliChip CYP450 Testについて,その特徴と概略を述べたい.

ナノインベーダー法の開発と応用

野村 幸男 , 江頭 徹

pp.551-556

1. はじめに

 特定遺伝子配列の同定が臨床検査の領域において必須の技術となって久しい.それは年々重要性を増すがその領域も感染症分野のみならず,腫瘍分野におけるゲノムの組換え配列の検出や遺伝子変異の検出に広がっているほか,一塩基多型(SNP)のタイピングのような多型解析に関して薬物反応性遺伝子や生活習慣病等の遺伝子診断が,いわゆる将来の“個の医療”に向けた診断として期待されている.一方,臨床検査現場においては遺伝子検査の簡便性,迅速性,正確性などの技術的な改善は重要なテーマである.ビー・エム・エル(BML)では,以前より臨床検査向きの遺伝子検査としてインベーダーアッセイを米国Third Wave Technologies社(TWT社)から導入しアッセイ項目の拡充に取り組んでいる.本法はPCRなどの遺伝子増幅操作を行わずとも短時間に特定遺伝子配列の存否を検出できる方法であり,特にSNPの正確な解析に特徴があるため,受託遺伝子検査のような精度の要求されるアッセイには非常に有効な方法である.ただし,PCRに比べてDNA量を多く必要とするため,貴重な臨床材料からより多くの解析を行う研究検査などにおいて,その感度増強が要望されていた.感度増強の開発を手がけ始めた当初,インベーダーアッセイの反応系の改良はTWT社の技術陣によって行われていたため,別の切り口から攻めてみることにした.その際に重視したのは遺伝子増幅操作を行わずインベーダーアッセイの簡便性を損なわずに実質的な感度増加をもたらすことであった.

 本来,貴重なDNAサンプルの節約を主な目的として開始した開発であったが,進行に伴い副次的な効果が出てきた.インベーダー法がホモジニアスな手法であることを利用して反応系の微少化を突き詰め,その微量反応液をDNAマイクロアレイに使用される蛍光マイクロアレイスキャナーを用いて検出することにした.その結果,試験管からエッペンドルフチューブ,マイクロタイタープレートへと進化してきた検査の微少化の流れをいっそう加速させることと,Brownらによって開発され広く普及したDNAマイクロアレイ技術1)との融合的なアッセイ手法が可能となった.これにより通常のDNAマイクロアレイに比べて遥かに迅速・簡便に結果をもたらすことが可能となった.以下にナノインベーダー法の開発と概要を説明する.なおナノインベーダー法とは,ナノタイタースライド(R)*を使用したDNAチップによる,ナノリットル単位でのインベーダー法を意味しており,一般にいわれるナノテクノロジーとは意を異にするのでご留意いただきたい.

3Dマイクロアレイ

長岡 智紀 , 坂本 宙子 , 佐藤 卓朋

pp.557-561

I. はじめに

 1980年代後半に,Southernにより,ガラス基板等の不透過性基板上に多数のオリゴヌクレオチドを固相するアレイが考案されてから15年以上が経過した1).1990年代初頭には,アフィメトリックス社によって,フォトリソグラフィー法を用いて製造された高密度DNAチップが登場し,スタンフォードタイプの高密度DNAマイクロアレイとともに,現在,様々な研究分野で用いられている2,3).ガラス基板を用いたマイクロアレイは,年々,品質が高められ,登場初期に比べて安定した結果が得られている.一方,実際の臨床検査の場面では,再現性や特異性,定量性のほかに,迅速性,簡便性に優れた性能が求められるであろう.

 われわれは,フロースルー型多孔質フィルターを基板に採用することで,オリゴDNAプローブを3次元的に固相化することが可能な3D(3-dimensional)マイクロアレイ(PamChip(R) Microarray,以後PamChipと略す)と,これを用いる専用のハイブリダイゼーション反応部と検出部を一体化したマイクロアレイシステム(FD10)を開発し,迅速性,簡便性を備えた,将来的な臨床検査への応用を目指したプラットフォーム技術として,本誌47巻13号にて紹介した4).今回は,このマイクロアレイシステムの再現性や特異性,定量性を示す具体的な事例や,シグナル検出感度や測定レンジを飛躍的に高めるための応用技術について紹介し,臨床の現場において,今後さらに求められるであろう微量サンプルへの適用の可能性について言及したい.

マイクロアレイとデータマイニング

笠井 康弘 , 守屋 康充 , 伊豫田 明 , 関 直彦 , 藤澤 武彦

pp.562-566

1. はじめに

 マイクロアレイを利用したデータマイニングの代表的な手法は,大きく2つに分類される(図1).1つは,解析に用いるサンプルが属するグループが未知である「教師無し学習」,グループが既知である「教師付き学習」である.いずれの場合も,その基本は『サンプルもしくは,遺伝子の有する各遺伝子の発現比率を,似ているもの同士で整理,分類することによって新しい知見を得る作業』である.

 本稿では,各遺伝子の発現比率の整理・分類の観点から,マイクロアレイのデータマイニングではどのようなデータマイニング作業が行われているか,主な2つの手法を紹介する.1つは,「教師無し学習」の代表として「クラスター解析」,もう1つは「教師付き学習」の代表として「判別分析」である.いずれも,遺伝子の発現パターンの整理,分類が不可欠な手法である.

今月の表紙 臨床生理検査・画像検査・17

囊胞を形成する甲状腺乳頭癌の超音波像

中山 雄司

pp.468-469

 超音波検査は甲状腺疾患の診断に欠かせないmodalityである.いままで触診では診断できなかった小結節性病変も7.5MHz以上の高周波超音波検査を用いることにより検出が可能となっている.結節の多くは良性であるが,ときに甲状腺癌が見つかることがあり注意が必要である.甲状腺癌の中でも,80~90%を占める乳頭癌は不整形で辺縁粗雑な低エコー腫瘤として描出され,内部に微細石灰化が見られる(図1).また腫瘍の性質上,囊胞を形成することも知られている(ここでは囊胞形成性乳頭癌と呼ぶ).今回は症例を提示しながら,囊胞形成性乳頭癌について超音波検査で注意すべき点を挙げてみる.

 自治医科大学臨床検査部超音波室において,2003年と2004年の2年間に穿刺吸引細胞診で診断した甲状腺乳頭癌症例77例のうち,8例(10.3%)で囊胞形成が見られた.8症例中3例において腫瘍の辺縁部に囊胞性変化が認められた(図2).残りの5例では囊胞内部に突出する充実性部分を認めた(図3).充実部は乳頭状に突出し,その表面は不整であり内部に微細石灰化を見ることが多かった(図4).さらに外側から充実性腫瘍が囊胞性病変内部へと連続しているような場合の多くは悪性と考えたほうが良いと思われた.なおカラードプラ法で充実部を観察すると,内部に血流シグナルを認めた(図5).

コーヒーブレイク

本の軌跡

屋形 稔

pp.508

 本誌にコーヒーブレイクを初めて書かせていただいたのが1992(平成4)年1月号からであるから,数えてみると14年目に入ったことになる.エッセイの性格上仕方がないが随分と読者には気ままな散文的人生を開陳してきたものとあきれている.

 ついでにいつ頃からエッセイなど書いていたのだろうかとふり返ってみたら,この春発刊した冊子で10巻目になっていた.内容は1948(昭和23)年に医科大学を卒業してからの人生が主体であるが,もちろん幼少時代からの周辺の描写も多い.1977(昭和52)年に第1冊「医と心の断章」を発刊して今までの28年間の軌跡であるから,多種多様の文芸が入りまじっている.

シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・3

迅速検査法(アジ化物,界面活性剤)―中毒学会提言15項目以外の薬毒物検査

福田 篤久 , 石田 浩美 , 久保田 芽里 , 小島 義忠

pp.568-577

はじめに

 ここでは,前回説明のあった1999年に日本中毒学会分析のあり方検討委員会が,各医療機関に分析を推進した15項目1)以外の分析項目を解説する.現在,当検査室では分析のあり方検討委員会の提言15項目を含む29項目の薬毒物分析が可能であるが2)(表1),ここでは,表1―右列の中より界面活性剤とアジ化ナトリウムの分析方法を可能な限りわかりやすく述べることにする.

学会だより 第16回日本臨床微生物学会

早朝から熱気あふれるセミナー会場

川上 小夜子

pp.578

第16回日本臨床微生物学会は,2005年2月4日午後から6日まで3日間にわたり京都国際会議場において開催されました.本学会は一山智会長(京都大学大学院医学研究科臨床病態検査学),立脇健一副会長(滋賀医科大学医学部附属病院検査部),田中美智男事務局長(京都大学医学部附属病院中央検査部)を中心に,関西地区の感染症関連医と微生物検査技師が中心となって企画運営されたものです.期間中には小雪の舞うシーンも見られましたが,5日は早朝8時にスタートするモーニングセミナーから熱気にあふれ,参加者数は過去最高の1,500名に達しました.

 会長は「高度先進医療-それを支える微生物検査」というテーマで,無駄な検査を減らし,有意義な検査を増やすことの必要性を講演されました.特別講演では,京都大学移植チームのリーダーとして活躍されている田中紘一先生(京都大学移植外科教授,京都大学病院院長)が「肝移植と感染制御」と題して,免疫抑制療法とともに感染症に対する総合的戦略が臓器移植の成績向上に重要であることを強調されました.京都大学病院は,肝臓移植が行われるわが国では数少ない病院の1つです.肝臓移植は,手術術式の開発や周術期管理の工夫により著しく成績が向上し,現在死亡や合併症に最も影響するのは感染症となっているそうです.そのため,免疫抑制に伴う感染制御に多大なエネルギーが注がれ,高度なチーム医療が実施されている様子が示されました.また,西村周三先生(京都大学大学院経済学研究科教授)は「感染症検査と医療経済」として,診療報酬における感染症対策の対応や現行の診療報酬制度が抱えている矛盾点を解析されました.現在特定機能病院を中心に導入されているDPC制度は,2006年からは一般の病院においても導入されます.西村先生は病院経営において「急激な変化はなく,緩やかなペースでDPCが進む」と解析されていましたが,すでに旧国立病院を始めとする病院検査の外注化は加速しており,対策が必要な局面を迎えているような気がしました.

学会だより 第39回緑膿菌感染症研究会

新たな局面を迎えた緑膿菌感染症の研究

三鴨 廣繁

pp.579-580

第39回緑膿菌感染症研究会は,2005年2月4日(金)~5日(土)の2日間,兵庫県神戸市のホテルオークラ神戸において,神戸大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学分野教授の守殿貞夫先生を会長として開催されました.本研究会が,神戸で開催されたのは初めてのことでした.1995年の阪神淡路大震災から10年が経過し,震災の中心地であった神戸では,震災からすっかり復興したかのように思われていますが,ご存知のように,いまだに復興宣言も出されておらず,残された課題も多いのが現実であるようです.

 さて,今回の研究会は,一般演題18題,教育講演1題,特別講演1題,ワークショップ(演者4名),シンポジウム(演者5名),教育セミナー1題で構成されていました.今年度は,2005年2月4日(金)~6日(日)に,国立京都国際会館で開催された第16回臨床微生物学会総会と日程が一部重複したにもかかわらず,また,2つの学会発表の掛け持ちであった先生も多数おみえになったにもかかわらず,学会参加者は,120名余を数え,熱心な意見交換がなされました.

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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64巻12号(2020年12月発行)

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59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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